思い出の作品達 五十三回 「夢幻の如く」

夢幻の如く

夢幻の如く

 
 
 本宮ひろ志の同名漫画を原作としたRPG、戦国時代を舞台にしたifとしては定番の『もし、織田信長が本能寺で殺されていなければ』を取り扱った破天荒な設定の下で繰り広げられる大スペクタクル浪漫。原作では日本統一後に世界制覇へ向けて大陸へ渡り、愛新覚羅ヌルハチと殴りあったりチンギス・ハーンの後継者になったり、イワン雷帝とぶつかったりと、トンデモ歴史を繰り広げるのだが、本作では残念ながら舞台を日本に限定されている。尤も、SFC版独自の設定が取り入れられており原作のトンデモさに負けない位にはぶっ飛んだ物語になっている……割を食うのが天海とカブラルなのは変わらないが。
 さて、原作がトンデモ歴史モノだと述べたが、本作では様々な独自設定により伝奇活劇の様相を呈した作品に仕上がっている……まぁ、中世〜近世を舞台にした作品をRPG化する際には有りがちな設定ではある。尤も、唯物主義な信長と超常現象が当たり前な伝奇活劇は相性が宜しくない様な気がしなくもないが、よく考えれば「孔雀王」なり「鬼武者」なりと、フィクションの世界では超常現象の権化の如き扱いを受けている人物(まぁ、突き詰めれば生前に第六天魔王を自称していた事や天守閣を天主閣と呼び習わしていたらしい事に由来するのだろうが、双方ともに信長のネタなんだろうがなぁ)だけに、以外に違和感が無い……と思え。疑ったら負けだ。
 まぁ、設定や物語はそれなりに楽しめる代物になっているのだが……システムとバランスが酷い。エンカウント率に懊悩し、突如として敵が激強化されるバランスの悪さに苦悩する。救済措置としてなのか、各章毎に寄り道的なシナリオ本筋に関係の無いダンジョンが用意されているのだが、そういった諸々の場所全てに立ち寄って限界まで鍛え上げる事を前提としてバランスを整えていると思いたくなるような難易度に仕上がっている。と言うか、ぶっちゃけ本筋だけを追いかけていれば絶対にボスで詰まるつくりになっている。殊、終盤のボスの強さは驚異的で、初回プレイ時はどうしてもラスボスが倒せず/尚且つセーブデータが後戻りの出来ないラストダンジョン突入後しか残っておらず、泣く泣く一からやり直したと言う悔しい思い出が残っている。
 
 原作ファンやあの時代に乱発されたRPGファン(いるのか?)にはおすすめの作品ではあるが、覚悟を持ってプレイしないと、絶対に投げるであろう作品。良作ではないが駄作にあらず、一度騙されたと思ってプレイしていただければ幸いである……そして地獄を見ろ。