思い出の作品達 九十七回 「バハムートラグーン」

バハムート ラグーン

バハムート ラグーン

 
 
 スクウェア三大悪女の異名をとるヒロインが一、『ヨヨ』の出演作。
 分岐無しにて必ず襲い掛かる余りにも期待を悪い意味で裏切る展開に、怒りを覚えたプレイヤーは数知れず。
 二周目以降のプレイでは思い出の場所を率先してぶち壊す事が暗黙の了解になりつつある?本作。
 
 さて、本作はSQUARE黄金期終盤/SFC時代末期を彩る作品であり、SFCの描画能力の限界に挑むかのような緻密に書き込まれたグラフィックと荘厳且つ流麗なサウンドが売りのSRPGとなっている……いや、本来ならばここに『リアルな人間関係を描いたシナリオ』だとか『予想を裏切る驚きの展開』だとかを加えてもいいとは思うのだが、流石に『メインヒロインはストックホルム症候群で敵の将軍に惚れてそいつを垂らし込んでフラグを立てていた主人公を振り、尚且つ主人公には何らシナリオ的な救済措置を加えず、ついでに言えばヒロインを寝取った将軍は最終的には殺される……結局誰も幸せをつかめず皆戦争の被害者でした。』なSad Endを肯定するのは微妙だと思うので。いやまぁ、そういうシナリオも有りといえば有りなのだろうが、分岐にてルートを分けて大団円なEndも別に準備しておくぐらいの用意は有っても良かったんじゃなかろうか。テーマ性は薄れるだろうが、エンターテイメントとしてはそういった準備も必要かと。ストレス溜めさせておいて終わり、では娯楽じゃねぇしさ。『これは鬱ゲーだ』という主張も有りかもしれんが、SFCの対象購買層と鬱ゲーと呼ばれる作品の対象購買層は少々ずれている気がするし……まぁ、余り分岐だフラグだと言っているとギャルゲになるけどな。
 まぁ、シナリオが微妙でサウンドとグラフィックが満点な本作であるがシステム・ゲームバランスはどうかと言うと……『SQUARE黄金期末期の作品である、悪い意味で。』の一言で大体理解していただけると思う。良い意味では爽快、悪い意味では大味。全てのステージは力押しで何とかなる、そんな作品。戦術を楽しむのではなく、敵を撃破し味方の強化を楽しむ作品だと思えば概ね正解だったりする……同時期の作品でも、高い評価が出来る作品はあるのに、何故にここまで大味なのか理解に苦しむところではあるが。後、二周目は更に意味が無い。凶悪なボスが居る訳でもなく、難易度が上がる訳でもないと言うか下がりっぱなしだし。本当に育成と収集のみがゲームの目的な感じ……ゲーム難易度下げるだけの『強くてニューゲーム』ならばせめてシナリオを大分岐させて複数回のプレイを促すようなつくりにして置けよと突っ込みたくなるなぁ。その点、「クロノトリガー」は正しく『強くてニューゲーム』を設置(多岐に渡る分岐Endを手早く楽に回収する為のお楽しみ要素として設置)していたのに。堀井の感覚は何だかんだ言って偉大、と言う事なのだろうか。
 
 随分と批判だらけになった気がするが、別に駄作という訳では無い。ただ、文句があるだけでそれなりに愛すべき作品だとは思っている。
 シナリオにも味はあるし、爽快感溢れる戦場もそれはそれで気持ちが良い。SRPGの雰囲気を『味わうだけ』ならば結構お薦めかもしれん。