思い出の作品達 百一回 「タクティクスオウガ」

タクティクス オウガ

タクティクス オウガ

 
 
 恐らく、高低差の概念を取り入れた戦術SRPG作品において(システム的な面とその中でも特にユーザビリティ的な面の双方において)本作以上の完成度を持つ作品は未だに無いであろうとまでファンに言わしめている(と言うか、俺が勝手に言っている)名作SRPG
 
 凄まじく多数準備された各種ユニットや多岐に渡る分岐条件/隠し要素、或いは独特のシステムやシナリオにおいてSRPG界に新風を齎した前作「伝説のオウガバトル」と世界観や設定を同じくする『オウガバトルサーガ』(現SQUARE-ENIXの松野氏がQUEST時代に発案した世界設定集、有体に言えば『話のネタ本』)からの出展作品。前作がリアルタイムSRPGとして(当時の家庭用ゲーム機のSRPGとしては)異色の作品であり、万民には受け入れられ辛い作品だったのに対して、本作では独自的な要素(WT制や高低差の概念等)を各種盛り込みつつも既存のSRPG購買層(まぁ、「ファイアーエムブレム」とか「シャイニング・フォース」とかが好きな層だと思いねぇ)を取り込むべく、前作と比較してかなり取っ付き易いつくりとなっている。例えば、前作においてプレイヤーを苦しめた『多様すぎて嫌になる各種エンディング』だとか『調整して都市を解放しないとエラい事になるカオスフレーム』だとかが廃止されて、通常の二種のエンディングはシナリオ分岐のみで辿り着ける、だとか。(まぁ、一応隠しパラメータとして『民族カオスフレーム』が存在していて、隠しエンディングへの分岐の条件になっていたりするが。)
 この様に新規層を大きく取り込めるように間口が広く作られている本作ではあるが、では内容が薄いのかと問われれば否としか答え様が無い。架空の世界の架空の島を舞台に民族紛争や権力闘争或いは人間関係の複雑さや泥沼を、時に皮肉気にはたまた時に王道に描いたシナリオは今尚も賞賛に値する代物であるし、高低差や各種属性/相性等を取り入れた戦闘システムはやり込めばやり込むほどに奥深さを感じさせる完成度を誇っている。また、シナリオ進行度に応じて回想や各種情報が追加される『ウォーレン・レポート』は、主人公視点で進みがちな本作のシナリオにおいて側面の情報を補ったりサブシナリオを出現させたりと物語の幅と奥行きを広げる事に成功している。また、世界観をちゃんと構築済みであるからして『前作「伝説のオウガバトル」からの伏線を回収』『次作「オウガバトル64」へ伏線を張られていたり』等と言う離れ業をやってのけたりする辺りにシリーズを通してのファンへのサービスも満点だ。
 ただ、惜しむらくは高低差を重視し、リアリティを求めすぎたが故に弓が少々強すぎるきらいがある事だろうか。ぶっちゃけ、アロセールカノープスが使え過ぎる。ついでに言えば剣豪なのに魔法の方が得意な人とかもかなりのバランスブレイカーだし。(使わなければいいだけだけどさ、ペトロハボリム。)
 
 何はともあれ、90年代後半のSRPG界において一斉を風靡し、その後様々なフォロワーを作り出したという点において、ある意味「ファイアーエムブレム」と匹敵するだけの影響力を持った本作。未プレイならば是非とも一度お試しあれ。因みに個人的な評価としてはSFC版>SS版≧PS版なので、今後購入を考えている人の参考になれば幸いである。