思い出の作品達 第百十五回 「かまいたちの夜」

かまいたちの夜

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かまいたちの夜
チュンソフト 1994-11-25
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 wikiを読んでいて、『ゲームシステムとしてはゲームブックに近い』という批評があって、思わず頷かされた今日この頃。確かにサウンドノベルに限らず、選択肢形式のノベルゲームは『煩雑なページの行き来をコンピュータ処理させたゲームブック』という解釈は可能ではある。(前作「弟切草」におけるランダム分岐すら、ダイス判定を採用したゲームブックならば再現可能だし。)多分、サウンドノベルを開発するに当たって発想の原点にはあったんだろうな。元々チュンソフト自体、DQの開発に携わっていた訳で、RPGと関わりの深かった(そして、FCRPGの黎明期と平行して流行を魅せていた)ゲームブックに目をつけて至って可能性は無くも無いだろうし。
 その意味ではゲームブックの枠を大きく打ち破った第三作「街〜運命の交差点〜」の功績の方が俺としては大きいように思えるんだが、商業的にもフォロワーの発生数的にもノベルゲームの起爆剤となったのは本作になるんだよな。(この後、SFC後期〜PSにあたってオリジナル/版権モノを問わずノベルゲームが爆発的に増える。有名どころでは「夜光虫」や「学校であった怖い話」、「赤川次郎 魔女たちの眠り」など。他にも18禁ゲームの90年代末以降の作品の過半数はノベルゲームに属しているだろう。)しかし、「風来のシレン」でもそうだったが、この会社は二作目にその後の業界に影響を与えうる完成度の作品を出すよなぁ。
 
 作品としては前作と同じく半密室な舞台を主軸に、限られた登場人物たちが展開によって様々に設定や役割を変えて物語が進んでゆく形式をとっている。ただ、サイコホラー/パニックホラー寄りだった前作に比べて本作では推理に腰を据えた物語となっているため、前作の様なランダム分岐は一切廃された完全なチャート式の選択肢分岐方式がとられている。この辺りが「ゲームブックに近い」と言われる所以なのかもしれない。実際問題、ページ数が如何ほどになるのかは判らないが、丸々ゲームブックに移植する事が可能な作りだしな。
 まぁそれはともかく、多種多様な登場人物や魅力的な脚本や相変わらずいい仕事をする視覚的・聴覚的演出によって、商業的や影響力的にも前作を大きく上回る結果を残す事が出来た。調子に乗ったのか尻馬に乗られたのか、テレビドラマ版まであったのは黒歴史なんだろうが。(まぁ、これは2の販促の一環だったので、厳密に言えば本作とは係わり合いの無いことではあるのだが。)
 
 とまぁ、ノベルゲームの金字塔として名高い本作。
 今ならばWiiのVCにて格安でオリジナル版を手に入れることも出来るし、少々値は張るだろうが操作性や追加要素が満載のPSリメイク版やそのPSP移植版もお勧め出来る。人によっては評価が分かれるが、続編も中々に楽しめる部分があるので俺としてはお勧めしたい。まぁ、本当に評価が割れるんだけどな。続編。