思い出の作品達 第百二十四回 「天外魔境II 卍MARU」

天外魔境2 卍MARU 【PCエンジン】

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徳間書店 1994-11-18
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おすすめ平均 star
star我が道に敵なし!
star名作エンターテイメントRPG
starPCエンジンを代表するRPG

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 『母ちゃん、おかわり〜』『我が道に、敵無し!』、それに後もう一つ最重要ボイスのみ。
 何気にこれだけしか喋らない主人公。だが、それがいい。脳内補完とか、行間を読ませるシナリオだしな。
 
 という事で、俺が愛してやまない大作RPG屈指の名作が一つ。天外魔境IIを紹介してみる。
 あぁ、因みにNGC版とPS2版は無かった事にして良い。NDS版か、或いは原典たるPCE版が前提な。2Dグラフィックで表される箱庭的な世界と、当時としてはよく喋りよく動いたってのが魅力な訳で。下手に3D化して読み込み増やして、その代わりに減ったのは難易度とエンカウントと爽快感ってのは本作を陥れるために移植したとしか思えない今日この頃……そう言えば、俺は未プレイだがIIIの方も良い評判は余り聞かないな。
 
 さて、本作はPCエンジン SUPER CD-ROM² system最高傑作の一つであり、本作をプレイするそれだけの為に当時数万円した本体を購入したプレイヤーが少なからずいたと言われる程である。ゲームショップやNECのメディアショップ等で体験版(本作とドラゴンスレイヤー英雄伝説、それぞれ最初のボス戦まで収録されている。)が広く公開されており、それに触れた覚えのある人もいるだろう。CD-ROMという媒体を活かした高音質の楽曲や有名声優・俳優による吹き替え、また随所に挿入されたアニメーションなどが特徴的であり、曰く『30分に1度はイベントが起きる』が合言葉とされていた程である。
 前作にして初代から大きくパワーアップし、原作P.H.チャダ/原案広井王子による奇想天外な世界観、相変わらずの桝田省治テイストが光るシナリオ、スタジオジブリのアニメを始めとして業界で広く知られている久石譲の提供するBGM、(一人多役も多いが)主役級から脇役に至るまで事ある毎に喋りだす登場人物に当てられた豪華な配役。正直、現在のRPGに通じる『イベント主体でアニメーション/ボイス多様型、現在主流たる日本型RPG』の元祖にして金字塔たる作品であると同時に『UltimaDQと連なる初期日本型RPG』の集大成ともいえる作品。
 
 架空の随分と歪んだオリエンタル/エキゾチック/ファンタジックな日本の一部にて、『国』単位で一つ一つ区切られた特徴あるエリアを順次回っていき、毎回ガラリと印象変わる『舞台』において次々と登場する『頼もしい仲間』『特徴のある敵役』『飽きさせない仕掛けの数々』、そして毎回用意されたイベントに立ち向かい、出会いと別れを繰り返しながら物語を進めてゆく。何というか、週刊連載のストーリー漫画を読んでいる興奮が味わえる作品とでも言おうか。それも藤田和日郎とか皆川亮二っぽいの。敵役はちゃんと悪役をしているんだけど、何処かしら酷く『歪んで』いるしな。
 また、RPGの肝の一つである戦闘についても『エリア毎に歯応えのある戦闘を楽しめる様にどんどん強化される雑魚敵』『中盤以降頭を使って戦わないと全滅必至な難易度設定』が硬派な魅力を醸し出している。(逆に言えば頭を使って『穴を付く』事によって一気に難易度を激変させ得る場合があり、そういった事象に気付く達成感を味わって欲しい、という設計といえるかもしれない。例えば『城壁』からのコンボとか。)
 そして、同時に『LvUP時には全回復、状態異常は一定歩数で回復』『戦闘中に倒れても、勝利すれば経験値獲得』など、(楽になり過ぎない程度に)救済措置もちゃんと設けてある設計となっている。これにより、例えば『あと少しで倒せそうだから、回復/復活は無視して撃破を目指す』or『全滅回避の為に回復/復活を優先しなければ』という二択であったり、『ダンジョンの奥深くで体力/技が付きかけてきているけど、もう少しでLvUPしそうだからこもまま探索続行してみる』or『体力/技が尽きそうだから、一旦引き返して再度挑戦しよう』などといったプレイスタイルの多様性を生み出す/引き受ける事が可能になっている。
 
 現在の『大作RPG』と比してでも長いと言わざるを得ない超大作ではあるが、テンポ良い展開と飽きさせない作り込みは見事。
 手に入り易さからすればNDS版のプレイをお勧めするが、出来れば原典たるPCE版をお勧めしたい。
 ……繰り返すがNGC版とPS2版は無かったことにしておきたい。ついでに言えば、NGC版を発売日に購入した事も忘れたい。