思い出の作品達 第百三十九回 「ドラゴンクエスト」

ドラゴンクエスト

ドラゴンクエスト
ドラゴンクエスト
エニックス 1986-05-27
売り上げランキング : 4663

おすすめ平均 star
star「ジャンプ×RPG=ドラクエ
star日本RPG普及に貢献した代表の一本
star恐怖の演出が巧みな・RPGの金字塔「ドラゴンクエスト」第1弾

Amazonで詳しく見る
by G-Tools
 言わずと知れた日本製RPGの元祖。
 WizardryUltimaの禁じられた交配によって産み落とされた鬼子。
 賛否両論絶えないが、何だかんだで日本の風土に合った傑作RPGシリーズの初代作。
 
 本作が無ければ、日本のCRPG界はここまでの肥大と変質を遂げることは無かっただろう。
 良くも悪くも日本製CRPGの特徴を詰め込んだ作品。ぶっちゃけると前述の通りWizardryUltimaの合わせ技。
 判りやすいユーザーインターフェイスと把握し易い俯瞰型平面視点の操作画面。
 単純明快なストーリーを軸にキャラクター育成を重視した目的設定、想像し易い『剣と魔法の世界』と親しみ易いコミカルなキャラクターデザイン。
 それら全ての要素が、その後の日本製RPGに受け継がれ/或いは反面教師として用いられる事となる。正直、本作以後の日本製のRPGの名を冠するコンピュータゲーム作品において本作の影響を無しとするモノなど、果たして存在するかどうかすら疑わしく感じる……あぁ、とりあえず「頭脳戦艦ガル」があるか。アレをCRPGとして認めるかどうかは酷く哲学的な問題だが、そもそもジャンルの定義付けという曖昧なモノにおいて指標と成り得る存在である、即ちRPGの看板的作品となっている現状こそ、本シリーズこそ国内RPG屈指の存在であると断言出来る証左の一つだろう。
 
 キャラクターデザインに鳥山明氏、サウンドコンポーザーにすぎやまこういち氏、ゲームデザインとして堀井雄二氏、更にプログラマーとして中村光一氏。彼らの内、たった一人でも欠ければ本作は無かっただろう。クリエイターとしてもプロデューサーとしても稀有な取捨選択センスを持つ堀井氏、愛嬌がありつつも不気味さをも合わせ持つ造形を作り出した鳥山氏、たったの三和音にオーケストラを彷彿とさせる旋律を落とし込んだすぎやま氏、限られた中で上記の三人が求めたモノを形に仕上げた中村氏率いるチュンソフトのクリエイター陣。その全てが合わさって起こった必然の化学反応の結果が本作を生み出したと言えるだろう。
 
 だが、穿った物言いを許すのならば、本作の存在はその後の日本国内のRPGに一定の縛りを設け続けた。
 市場は本作を受け入れ、絶賛した。同時に、本作から外れるRPGを受け入れる余地を/その基準を非常に高い敷居へとしてしまったのだ。面白い作品を作って市場に供給する事が作り手に要求されるのは至極当然である、しかし、余りにも完成度の高い代物であったが故に、亜流を作り出す土壌には成り得ても完全に新しい発想を受け入れる余地を酷く限定的に狭めてしまった、つまり実験作が出にくい風潮が出来上がってしまったとも言える。いやまぁ、半ば俺の愚痴になってしまうんだが。それに、別段実験作が無いわけじゃないしな。
 本シリーズとFFシリーズはそういった早期に市場を形成してしまった点において、功罪併せ持つ比類無き傑作だったと言えるだろう。殊、FFシリーズに至っては己の作り出した虚像がどれ程己自身を縛ってしまったのかをその身を以て証明してしまった訳だしな。いやまぁ結局は『FF8はやりこめば面白い』とか言いたいだけなんだけどさ。
 ……言ってる事が無茶苦茶だなぁ、我ながら。別に日本のCRPGがこうなったのはDQ・FFだけの所為とは言い切れないし。完成度の高い作品に影響を受けまくるのは国内外に限らず今更に始まっていたことでも無い。その後もWizardryからの直系として女神転生シリーズ、D&Dからの派生でルナティックドーンなど、本作に縁らない作品だって生まれている……まぁ、それらが主流と成り得ていないのが残念なんだろうな、俺は。特にルナドン系が。
 
 さて、本作をプレイ出来る環境は山ほど存在するので、今更やった事が無いとか出来る環境が無いということは無いだろう。FC・MSXSFCGBC・携帯と移植とリメイクに事欠かないし。今となっては古臭く・単純過ぎる代物へと陳腐化してしまっているが、それでも尚凡百の作品には無い完成度と発展余地を見出せる罪深き傑作。未プレイならば是非とも体験していただきたいところである。