思い出の作品達 第百四十八回 「ダブルキャスト」

ダブルキャスト / やるドラシリーズ ?ダブルキャスト PlayStation the Best

ダブルキャスト
ダブルキャスト
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 某有名アニメを手がけたスタッフ/スタジオを用い、豪華配役に彩られたフルアニメーションを全面に押し出し、現在進行形で進む『ドラマ』に介入出来るといった錯覚を売りとした……アレだ、例えるならばLDゲームとDVD-PGを繋ぐ架け橋のような作品。若しくは『Nice Boat.(誠氏ね)』の原型。言ってしまえばテキスト少なめアニメーション多目のサウンドノベル
 SCEJが98年の目玉として大々的に売り出したやるドラシリーズの第一作目であり、その作風や完成度の高さからシリーズ内屈指の評価を受けている名作である。また、冒頭導入部の印象とは裏腹に、驚愕の展開や凄惨なBad Endが数多く待ち受ける『トラウマゲー』として有名だろう。
 
 さて、本作は上記の通り『やるドラシリーズ』の第一作目としてリリースされたADVゲームである。それまでテキストが主体であり、脇役として立ち絵・背景・一枚絵などのCGが存在し、アニメーションはあくまで添え物だったADVにおいて、全編に渡って隈なくアニメーションによる演出を多用するという、当時ROMカートリッジ→CD-ROMへと爆発的に増加したメディア容量と活かした作りとなっており、止め絵の場面でも主人公以外の登場人物全てをフルボイスにするなど、徹底的にアニメを意識した作りになっている。
 所謂アニメを意識しながらも『ゲーム』としての部分もきっちりと作られており、テキストの表示切替やスキップ機能などの操作系からプレイを重ねるに従って展開が増えてゆく(サウンドノベルでは定番な)選択肢管理システム、或いは細かいところではエンディング後の小ネタに至るまで、しっかりと作りこまれているのが好印象だろう。
 また、冒頭導入部から序盤における如何にもな展開やミスリードを誘う伏線の数々など、シナリオの秀逸さにも定評がある。尤も、厳密に言えば「ダブルキャスト」のタイトルの由来となる『アレ』についての認識の甘さが目に付くんだけどな。DSM-4の扱いが手軽過ぎるし、医者は守秘義務を守ってないし。まぁ、娯楽作品なのでその辺りは軽く流しておけばいいんだろうけれども。
 
 時に、本作はマルチエンディング形式のADVであり、Goodが4/Normalが6/Badが17と合計27のエンディングが用意されている。それらは初プレイから至る事の出来るモノから複数周プレイして選択肢や開幕選択を出現させ、条件を満たさないと到達不可能なものまで多様に存在しているのだが……実のところ、本作のマルチっぷりはその程度に収まっていなかったりする。一見、選択肢に関わらず同じような展開の部分についても矛盾が生じない様に細かく差分が用意されており、それらが全て本作の最終目標である『達成率』に関わってくるという極悪仕様となっている。
 しかも、最善手でも44周プレイをしないと100%に至れないし、下手に適当にプレイしていると何処を回収し忘れたか判らなくなって、結果90%強で達成率が伸び悩んでしまうという……いやまぁ、達成率100%は単なる自己満足の領域だから、極悪って訳でもないんだろうが、そ〜ゆ〜数字に拘る人間にとっては結構重要。俺はというと……96%強までは何とか辿り着いたんだが、その辺りでいい加減諦めた。
 
 何はともあれ、システム・シナリオともにADVゲームとしても結構良作な部類に属し、アニメーションの作画や各声優の演技も高水準。
 ADVが好きならば一度触れてもらいたい作品ではあるが、PS版・PSP版共に若干手に入りづらく、場合によっては中古でも多少は値が張るかもしれない。
 まぁ、それだけ評価の高い作品だと思っていただければ幸いであろう。1000円を切るようならば買って損はない。