思い出の作品達 第百五十回 「ファイナルファンタジー2」 TAKE2

ファイナルファンタジーII

ファイナルファンタジーII
ファイナルファンタジーII
スクウェア 1988-12-17
売り上げランキング : 13274

おすすめ平均 star
star面白い!!!
starなにがおもしろいのかが不明
starいろんな意味で泣けました

Amazonで詳しく見る
by G-Tools
 何だかんだで国民的RPGシリーズの双璧が片翼。
 ……の割には、人によって評価が極端に割れるだろう作品。
 
  ・曰く、序盤から凄まじくパーティの強化を図れるゲームバランス崩壊作
  ・曰く、どれだけ強化しても敵が強過ぎる難関RPG
  ・曰く、意識してプレイすれば中盤以降攻撃を喰らう事が無くなる楽勝な難易度
  ・曰く、HPや盾以外の防具なんて殆ど飾りですよ、ゆとりにはそれが判らんのです
  ・曰く、究極の白魔法は究極に使えない白魔法
 
 確かにシリーズ内においても独特の、後の『Sa・Ga』シリーズに連なるゲームシステムが導入された作品であり、
 無駄な努力よりも効率的な強化が有効とされる癖の強いバランス調整度合いとなってはいる。
 しかしながら、『何だかんだで国民的RPGシリーズ』な作品であるにも関わらず、ここまで評価が割れるのは幾らなんでも極端過ぎるだろう。
 (いやまぁ、この時点ではミリオン到達もしていなかったりするので『国民的』とはまだ言えないのだが。)
 何故に、ここまで評価が分かれる事になったのだろうか。それを理解するには当時の風潮を理解する必要があるだろう。
 
 本作は「ファイナルファンタジー」によって起死回生の一打を放ち、
 TVゲーム業界において燦然と輝き始めたSQUARE-SOFTが満を持して送り出した看板タイトルの二作目となる作品である。
 時に1988年、世間においては「ドラゴンクエスト3 〜そして伝説へ……〜」が社会現象となるまでの影響を見せており、「スーパーマリオブラザーズ3」において配管工が桁外れの実力を見せ付けていた時代。そういった化け物タイトルが生まれた年の末に送り出されたのが本作となる。
 前作同様に、後に本シリーズを含む様々な看板タイトルを手掛け、SQUAREの躍進の原動力となる人材を結集して作り出された本作は、上記の二作品を始めとする様々な他社の看板作品に劣らぬ完成度と充実度を兼ね備えた名作というべき代物となっており、己の人生を賭けて前作を世に送り出し業界に居残った坂口氏の面目躍如といったところだったのだが、ここに一つ誤算があった。
 
 さて、本作はシステム的に言うとFFシリーズというよりもSa・Gaシリーズであると上記で述べた通り、
  ・『経験値/レベルによって能力値を一括で管理するレベル制』を廃し
   ・『プレイヤーが取った戦闘中の行動によって個々に能力値が成長/減衰する熟練度制』を採用
  ・『攻撃力・防御力の増減のみを管理する装備品制』に
   ・『重さ(魔法干渉値)・属性を加え、それらを上記の攻撃力・防御力以上に重要な要素化』する独自路線を特化させ
  ・『キーアイテムを用いたフラグ管理』によるシナリオ管理に加え
   ・『キーワードを【覚える】【尋ねる】事によって会話イベントを進行させる』といったワードメモリーシステムを導入
 とまぁ、後のSa・Gaシリーズに繋がったり繋がらなかったりするシステムの数々が本作で試行されている。
 ここで最も重要となり、遂には本作の難易度評価の両極端化の端緒となるのが第一項に挙げた熟練度制である。
 
 それまでRPGといえば『敵を倒す→経験値を獲得』→『経験値が一定値に達する→レベルアップ→能力値上昇』のプロセスが当たり前だったのだが、本作においては『戦闘中に各種行動を行う→それぞれ対応した熟練度が上昇・減少』→『熟練度が一定値に達する→能力値変化』のプロセスへと変質している。字面だけを追っていれば、別段大きく変化している訳では無いのだが、本質的な変化は大きなものである事は実際に触れた人間には自明の理であろう。
 無粋を承知で解説するならば、それまでのRPGが結果主義(戦闘を終了させた事が重要)だったのに対して本作では過程にも焦点を当て、より個々のプレイヤーのスタイルに応じたキャラクター成長を、自由度を提供しようと計ったと考えられる。これは、初代におけるジョブシステムを導入したり、後の3や5でジョブチェンジシステムを採用したり、6の魔石/7のマテリア/8のジャンクション/9の装備品アビリティ/10のスフィア盤/12のライセンスなど、後のシリーズに繋がる『ファイナルファンタジーシリーズ』(ついでに言えば『Sa・Gaシリーズ』)のテーマと言うべきシステム設計であり、世界設定からGUIに至るまでシリーズを通して一貫するものが殆ど見当たらない(今となってはアイテム命名基準ぐらいだしなぁ、共通項)本シリーズにおいて受け継がれている、数少ない特徴であると言えるかもしれない。
 
 だが、本作において採用された熟練度システムには重大な問題が存在していた。
 熟練度システムの穴、つまるところ戦闘中の行動を測定する部分が、何と言うかアレだったのである。
  ・両手装備品の熟練度管理は『戦闘中に「たたかう」を選んでAボタンを押した回数』に応じて熟練度を上昇
  ・同様に魔法熟練度の管理も『戦闘中に該当する魔法を選んでAボタンを押した回数』に応じて熟練度を上昇
  ・HP/MPの上昇管理は『戦闘開始時と比較してどれだけ減少しているか』に応じて成長判定を行う
  ・回避率の熟練度管理は『戦闘中にどれだけ敵の通常攻撃の対象になったか』に応じて熟練度が上昇
  ・魔法回避率の熟練度管理は『戦闘中にどれだけ敵の特殊攻撃の対象になったか』に応じて熟練度が上昇
 まぁ、さし当たって攻略に重要である5要素の成長管理について記述してみた。
 普通に製作者陣が想定したプレイを行う上では問題は無い、敵と戦い、攻撃して攻撃されて、次第に強化されていくようになっている。
 
 しかし、製作者が想定しなかった/或いは想定していても重視していなかった問題が浮上することになる。
 ――――裏技の流行、である。ウル技でも構わんが、要はバグを利用した想定外のプレイ全般がゲーム誌や口コミを媒体として全国的に大流行していた時代である。また、現在ほど品質管理が盛んではなかったり製作者のお遊びが許容されていた時代だったこともあって、猫も杓子も裏技が仕込まれたり発生してしまったりしていた時代である。上上下下左右左右BAである。
 本作の場合は所謂『A・Bキャンセル技』や『パーティアタック技』が大々的に掲載され、キャプテン狩りで資金を溜めた上で序盤からセーブ&リトライにてミシディアを狙う攻略法が知れ渡ることにより、本作の難易度は激増した……いや、正確に言えば本作終盤の難易度が激増した。本来、ある程度の回避率/魔法回避率がある事を前提とした凶悪な攻撃を行うパンデモニウムに出現する敵の猛攻にインスタント成長なパーティでは全く歯が立たなかったのである。これはパーティアタックでは回避率/魔法回避率が上昇しないことと、熟練度の極端な上昇+序盤から凶悪な武器を入手することによる戦闘時間の短縮による被弾回数の減少によって回避率/魔法回避率がその後も上昇せず、見掛け上のみの耐久力しか持たない張りぼてヒーローなステータスに育ってしまう事が原因である。
 デスライダー・クアール・ラミアクィーン、ついでに皇帝……ちゃんと回避率/魔法回避率を上げていれば雑魚な相手を前に、幾人ものプレイヤーが挫折を味わうことになる。俺も初回プレイではジェイドを抜けるのがやっとだったしなぁ。
 
 ともあれ、製作者の想定外のプレイスタイルがマスコミ/口コミを通じて一般化され、それによって評価をゆがめられた作品。
 本作はそんな悲劇の作品なのかもしれない。