思い出の作品達 第百五十四回 「ドラゴンクエスト4 〜導かれし者たち〜」 TAKE2

ドラゴンクエストIV

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 FC→(DQ7準拠級にリメイク)→PS→(マイナーチェンジ)→NDSとリメイクされながら、何だかんだで全部ミリオンヒットというのは流石DQの金看板といったところだろうか。というか、この調子でDQ5DQ6もミリオンだったら正直恐ろしいものが無いでもないな。特にマイナーチェンジどころかダウングレードになりそうなDQ5とか。(尤も、新規仲魔モンスターのステータス値の適当さ加減など、PS2版で指摘されている手抜き要素を改善すれば結構化けるかもしれんが。)
 しかし、小説描写の積極的な引用はどうかと思わなくも無い今日この頃。後付設定は物語の破綻を招く危険が大きいと思うし、そもそもピーちゃんはバランスブレイカー過ぎる。あの厨臭い能力設定考えた奴は猛省するべきだろうて。後、エビプリに謝れ。
 
 本作はFCでのDQシリーズ最終作であり、前作にて完結した『ロトシリーズ』に次ぐ新たな世界観『天空シリーズ』三部作の第一作目にあたる作品である。このシリーズの特徴としては前『ロトシリーズ』が成長譚を主軸に据え、育成要素を前面に押し出しRPGにおける『(日本的に)王道』なゲーム性を売りにしていたのに対し、本『天空シリーズ』では悲劇性や苦労譚が強く描かれており、翻って物語の自由度は若干低下している。『キャラクターを育成し、シナリオを進めていく』という形態から『物語が進んでいくにつれて、キャラクター達が成長していく』といったストーリー重視へと向かっていくRPGというカテゴリ全体の傾向が反映された結果とも取る事が出来るが、社会現象にまで騒がれそれこそ『そして伝説へ……』となった前三部作からのユーザーの中にはそういった傾向に対して否定的な意見を述べる者も居ないではない。個人的には悲劇の勇者と悲恋の魔王のある意味因果応報な顛末を描いた本作や親子三代に渡る壮大な大河物語を描いた次作は結構好みなのだが。
 
 さて、本作はFC末期の作品だけあってROM容量も大きく、前作から更に倍の4M bitの大容量が実現されており、これは当時の本作広報でも『それまでのエニックスファミコンソフトを全部足してもまだ余る』と大々的に喧伝された要素となっている。実際、ドラゴンクエスト:512k bit+ドラゴンクエスト2:1M bit+ドラゴンクエスト3:2M bit+ポートピア連続殺人事件:256k bit+ドアドア:128k bit+64k bitなので、全部足しても確かに64k bit程DQ4の方が大容量になる。(尤も、データ容量の多寡でゲームの面白さが決定付けられるという訳では無いが。)
 兎に角、5本の作品を内蔵出来るほどの当時としては画期的な大容量を実現した事により、様々な面で前作から大きく変化を遂げることになる。全五章に渡るオムニバス形式のシナリオとそれが繰り広げられる広大な世界・様々な市街や村落・迷宮などなど、より精緻に/美麗になった各種グラフィック、後に発売されたOSTにてオリコン初登場1位を獲得する事になる多彩な楽曲……FCという一つの時代を作り上げたゲーム機における末期を飾るに相応しい充実度と完成度を以って、新シリーズの開幕を彩る作品に仕上がっている。
 
 先ず、システム面では前作において形が定まってきた基本システムを改良したものが採用されている。例えばコマンドからアイテム使用に変化していた扉の開閉を一括した『とびら』コマンドとして復活(+施錠されていない扉の登場、主に城郭の出入時などに演出として盛り込まれている)や、スプライト処理の関係上で避けるべきとされていた5人以上のパーティを実現させる馬車システム(前作における『ルイーダの酒場』の携行化)の登場により組み込まれた入れ替えシステム、或いは本作の目玉となり後のシリーズにおいて標準搭載されているAI戦闘システムの採用やAI動作の傾向を定める『さくせん』コマンド等、発展的な部分でのシステムの変動が目に付く仕様となっている。また、宝箱以外に箪笥や壷を調べ、アイテム入手が可能となったのも本作がシリーズ初出となっている。様々な場所にアイテムや仕掛けを仕込めるようになった反面、その所為で『新しく訪れた場所ではまず家捜し』といった勇者らしくない行動が推奨化される事となり、批判の対象となっていたりもする。
 本作がシリーズ初出といえば小さなメダルを用いたアイテム交換所『メダル王』もそうであり、珍しく非常に有用なアイテムを非売品であり世界各地の宝箱・壷・箪笥・地面に隠されている小さなメダルと交換で入手出来る場所として、ストーリー中盤以降の攻略において重要なバランス調整を担っている。(『きせきのつるぎ』の入手タイミングによって難易度がかなり変わってくるしな。) また、非売品アイテムの入手先といった点では前作における『モンスター格闘場』を進化発展させた『カジノ』も今回からの登場であり、運と実力/或いは事前知識次第では物語の序盤〜中盤から凶悪な武具や有用過ぎるアイテムの入手が可能となっている。
 
 次にストーリーとしては、第一章から第四章までの『導かれし者たち各位が如何にして旅に出ることになったか』が語られるプレストーリー的な部分と第五章の『勇者を筆頭に、導かれし者たちが集い、魔王へと挑んでゆく』本編の二部構成となっている。各章、キャラクターはそれぞれLv.1からスタートすることになり、第一章〜第四章で育てたキャラクターはそのまま第五章に引き継がれる設定となっている。
 それぞれのシナリオは、
 ・バトランド王国の戦士ライアンが行方不明の子供たちを捜索する「王宮の戦士たち
 ・サントハイムの王女アリーナが臣下であるザラキ神官クリフトと教育係ブライを引き連れ、
  諸国漫遊の腕試しを行う「おてんば王女の冒険」
 ・片田舎の武器屋の雇われ店員であるトルネコが世界一の武器屋を目指す「武器屋トルネコ
 ・亡き父親の仇を討たんとするマーニャ・ミネアの双子姉妹の復讐劇を描いた「モンバーバラの姉妹
 ・故郷の村を襲われた勇者が仇であるデスピサロを求め、
  運命に導かれし7人の仲間と共に世界を巡る「導かれし者たち」
 となっており、(3章だけ若干異色のシナリオとなっているが、)プレイしていくにつれて本作のシステムを学べる様に様々な工夫が凝らされている。例えば『敵と戦って勝利し、ゴールドと経験値を稼ぐ』『稼いだゴールドで装備を整え、キャラクターを随時強化していく』事を先ず最初に第一章で身に付け、第二章にて『耐久力のある仲間が先頭で盾・矛となり、後衛が呪文にて攻撃・回復・補助を行う』といったパーティ戦闘の戦術を学び、第三章は飛ばして第四章にて『呪文主体で戦うにあたって如何に節約し、如何に使うか』のバランスを体感し、それらの全てを第五章にて活用していくといった具合に、進行に合わせて本作の仕組みを理解していける作りとなっている。こういったチュートリアル的な要素をシナリオに大きく矛盾を生じさせずに盛り込める構成の妙は流石といったところだろうか。
 
 残念ながら前作を超えるセールスにはならなかったものの、FCにて300万(+PSリメイク→NDSリメイクにてそれぞれ100万)の大ヒットを飛ばす事となり、FFと共に引き続き国内におけるRPG人気を牽引していくことになる本シリーズ。838861枚や逃走不可時における8逃げ等の初期ロットのバグなど、有名な裏技の印象が強いが作品自体も上記の通り、今になって見返してみると様々に試行錯誤の後が見受けられる事が判る。というか、DQFFは毎度の事なのだが。この『試行錯誤を繰り返した結果の改良』をどこよりも多く深く厚く積み重ね続けてきた事こそが国民的RPGと呼ばれるまでに至った本シリーズらの強みなのだろう。
 NDS版が絶賛発売中ではあるので、リメイク版をプレイした諸氏は数多く居るとは思うが……時に、アレって正直どうよ?個人的には『ま〜た難易度下げやがって』といった印象を抱いたのだが。PS版より楽になってないか、今回。