思い出の作品達 第百五十五回 「桃太郎伝説」 TAKE2
桃太郎伝説 | |
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DQから多大な影響を受けて雨後の筍の如く大量に出回った見下ろしMAP+対面型コマンド選択式戦闘システムなRPGの一つではあるけれども、それだけじゃない何かを作ろうとして光る原石が眠る鉱脈を掘り当てた数少ない例の一つだと思うのだが……内部的に(具体的にはハドソン広報部とさくまあきらとの間に)色々とごたごたがあったり改善されたりされなかったりと色々あるみたいだが、何とか(今更ながら)続編とか新シリーズとか、どうにかして作ってくれないものかな。
日本国民なら誰でも一度は聞いたことがあるであろう勧善懲悪の英雄譚『桃太郎』を軸に、『金太郎』『浦島太郎』『かぐや姫』など有名な昔話の登場人物・世界観をごた混ぜに詰め込み、コミカルなタッチで描いた物語が特徴なRPG。本作を含め続編二作に外伝とスピンオフの活劇・電鉄など、FC中期以降現在に至るまで「ボンバーマン」と並んでハドソンの屋台骨を支え続けている作品の原点。本作が無ければ未だに年刊のペースでリリースされ続ける長寿作品「桃太郎電鉄」シリーズは無かったであろう。いやまぁ、前述のごたごたでシリーズ自体が無くなる可能性も依然としてあるっぽいが……一応次回作は出るんだよな?
シナリオとしては前段にて述べた様に『桃太郎』を基盤として幾つかの昔話の登場人物や粗筋を抜き出し、混ぜ込んで再構成したものとなっている。内訳を覚えている限りで具体的に抜き出して記述すると……
・桃太郎 :主人公、お供の三匹を道中にて仲間に加えて鬼ヶ島に巣食う悪い鬼を打ち倒す
・金太郎 :登場人物、且つ足柄山も舞台として使われている
・浦島太郎 :登場人物、且つ竜宮城も舞台として使われている
・かぐや姫 :重要人物、また原典で求婚の条件として挙げられた五つの宝物がキーアイテムとして登場
・花咲か爺 :登場人物、またお供の犬はこの花咲爺さんの飼い犬という設定
・三年寝太郎:登場人物、ぶっちゃけシナリオ進行管理フラグ
・猿蟹合戦 :村として登場、またお供の猿の出身地……って事は、蟹虐め倒した猿なのか
・舌切り雀 :宿場として登場、といっても舌切り雀のエッセンスはつづらぐらいだが
等々、覚えているだけでも多岐に渡るし、忘れて抜け落ちた要素も加えるともっと増えそうな気もする。(そう言えば、おむすびころりんとかあったよな。本作だと)
また、昔話をモチーフにしているだけではなく、当時の流行を積極的に取り入れたギャグが多数用いられている事でも有名。
(有名なところでは「金銀パールの鬼」だとか「なるほど・ザ・ワールド」とかかな。)
ただ、コメディに傾倒した作品ながら、根底に流れるテーマであろう『共存』『不殺』を貫き通したシナリオとなっており、敵味方問わず人死にが無い大団円な物語展開は『御伽噺』ではなく、あくまで『童話』をモデルにした事を意識していると思われる。
(余談だが、続編の一方である「新桃太郎伝説」だと『絶対悪』であるカルラを中心に、かなり陰鬱な展開が用意されていたりする。先に続編として出された「桃太郎伝説II」やRPGとしてのスピンオフ作品である「桃太郎伝説外伝」では本作の作風を受け継いでいるにも関わらず、シリーズ最終作としてかなり異色な作風に変貌を遂げている部分がある。これは諸説有るが、冒頭にて記載したハドソン社との関係悪化が原因との噂が根強い。)
システムとしては経験値/レベル制とイベント習得の特殊能力『術』の成長管理、装備品と特殊イベントアイテム/一般アイテムを別枠にしたアイテム管理、神社で取得出来るパスワードによる進行度保存と力尽きた際の再スタート地点設定など、見た目上のインターフェイスこそ違えど殆どDQシステムの模倣に近い類似性を見て取る事が出来る。これはゲームデザイナーであるさくまあきらと堀井雄二が友人である事から、本作制作に当たっての手解きを堀井が行った事が直接的な原因であろうし、そもそも本作企画自体が『二匹目の泥鰌』を狙ったものであるという事も影響しているだろう。
尤も、殆ど使い分ける必要が無いのに使う/食べるを別コマンドにしていたり、アイテムの売却が質屋でしか行えなかったりと、変な作りこみが見られたりするのは世界観の構築に気を使い過ぎだと思えなくも無い。というか使う/食べるは『新』に至るまでずっと本シリーズの仕様だったが……正直、誤操作で試行回数が増えるのはUIとしてどうかと。いやまぁ、イベントに絡ませている仕様だから仕方無いのかもしれないけどさ。
グラフィックやサウンドについては、時代が時代だけにまだまだ粗い作りとなっているがほのぼのとした世界観を表現した明るめのモノが印象に残る作りとなっている。というか1987年としては結構頑張ってる方だろう。殊、モンスターグラフィックのドット絵はかなり神懸っている節があると思うのだが如何? 後、OPEDとか。
さて、本作についての俺の思い出だが「ふ」を用いた閻魔虐殺だったり、或いはクリア後のエンカウント無し高速地形無視移動を使ったフラグ無視プレイであったりが印象深い。無論、本編のかなり高難度なゲームバランスに泣かされたり、天の声を書き取りミスって進行度が巻き戻ったりとまぁ他にも色々あるんだが、その辺りは別に他のRPGでも良くある事だしな。ネタを除けば純和風な世界観を持つRPGとしてはかなりの完成度を持っているし、そして前述したテーマを一貫させた後味の悪くない展開も見事なところ。また、OPとEDに凝っていたのも結構嬉しかったかな。
PSやGBCでリメイクされている作品ではあるが、これらは殆ど別作品なのでちとお勧めし辛い。
出来ればVC配信を望みたいところだが……元データ無くしてやがるんだよな、ハドソン。ふざけんな。
(元データ無くしてるといえば、天外もそうだったっけか?)