思い出の作品達 第百六十四回 「ファイナルファンタジー7」
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シナリオに「探偵神宮寺三郎」シリーズや「ヘラクレスの栄光III 〜神々の沈黙〜」「ヘラクレスの栄光IV」、或いは「バハムートラグーン」等において、癖は強いが質の高い脚本を提供していた野島一成氏と、■を始めとする『映画的』な手法や表現・演出を取り入れたゲームを提唱し、自由度と誘導のバランスを重視する北瀬佳範氏を起用。殊、本作のテーマとも言える『自分探し』や中盤から後半に掛けてのどんでん返しに定評がある野島氏による巧みなシナリオ展開や一本道の物語の中にも遊び的要素としての自由度を重視する北瀬氏による様々なミニゲームやサブシナリオは、新たなプラットフォームと表現手法を以って、それまでのシリーズ作品から飛躍した本作を見事に形作っている。しかし、作品内で全てを語らずに思わせぶりな最後や明かされない設定を山積みにして物語を締めるという、投げっぱなしジャーマンな展開や結末には異論を唱えたいところだろうか。演出としてあのラストは有りなのかも知れないけれども。若干映画や流行に影響を受け過ぎではないかと、当時から苦言を述べていたりする。まぁ、そのお陰で続編が出たというか、その所為で続編が出てしまったというべきか、評価に困る部分ではあるけれども。
システムとしてはFF4以降において定番となったATBシステムを基本としつつも、FF5以降において定番となった『各キャラクターのカスタマイズ』のシステムとして装備アイテムと連動した『マテリアシステム』を採用。『装備品にマテリアをはめ込む事によって、各マテリアに籠められた力を引き出す』という設定を元に、多種多様な能力の組み合わせを実現。また、これにより装備を選択する基準として能力や属性・耐性だけでは無くマテリアを嵌め込める穴の種類や個数が新たに重要な要素として立ち上がることになり、プレイヤーに対して様々に思考する楽しみを提供している。尤も、反論としては『一部マテリアが凶悪過ぎる。』『キャラクター間の性能差が殆ど発生せず、使い分ける必要性が減少し過ぎている。』とあるが、凶悪なマテリアはあくまで隠し要素やお楽しみ要素として用意されているものが多いし、性能差の減少はそれこそシステム設定上狙ってやっている訳だから仕方が無い部分だと個人的には思う。後、マテリアが凶悪というよりもバランスが味方側に傾き過ぎってのが大きいような。まぁ、それは前作や前々作からの傾向だから何を今更ってのはあったけれども。(そして、その後FF10に至るまでインフレは続く、と。)
グラフィックについては、従来驚異的な書き込みを誇るドット絵に定評があったスクウェアだけあって、背景のCGグラフィックの描写は凄まじい美麗さを醸し出している。マップ移動時のキャラクターアイコンや戦闘時における敵味方その他の3Dキャラクターはまだまだ粗い作りではあるが、ぐりぐりとよく動き、今まで培ってきた戦闘システムのリズムをなるべく壊さない様にしている努力の後が窺えなくも無い。いやまぁ、召喚獣の演出が長すぎてテンポ台無しだったりする訳だが、逆に考えればテンポを壊す程の代物なのだから切り札として乱用しなければ良いだけ、ともとれなくも無い。
サウンドについては文句の付け所は無い。後、田代言うな。
さて、本作についての個人的な思い出だが、実のところ俺が本作をプレイしたのは発売後半年程過ぎた頃だった。次世代機競争にてN64を購入した当時の俺にとって、FF7が発売したからといってPS毎購入するだけの経済的な余力は無かったから、というのが主な理由だったりする。いやはや、発売後間もない頃は周りの話を聞いていて『何故、俺は発売日にN64を買ってしまったんだ!いやまぁ「スーパーマリオ64」も「マリオカート64」も面白いけど、それでも、様子を見てPSにするという選択肢を何故持たなかった俺よ!』と嘆いていた覚えが。
その煩悶は、いい歳して中二病なゲームを平然とやり込む事に今尚定評がある我が親父が、ある日唐突にPSとFF7を購入してきたお陰で解決する訳だが。お陰で、中二の夏はPS三昧だった。徹夜でFF7や幻想水滸伝をプレイし倒してた思い出ばかりが蘇る。夜中にイヤホンから流れ出るゴールドソーサーの曲に心を躍らせたり、スノボで『変』を出しては無邪気に喜んでいたりと、半年遅れながら精一杯楽しんでいた記憶が今尚鮮やかに脳裏へ刻まれている。また、意図的に攻略情報を目にしたり耳にしたりしない様にしていたから、純粋に楽しめた最後の作品だったというのも大きいかもしれん。中学時代はネットも無かったし、攻略本をホイホイ買えるほど財政的な余裕も無かったからなぁ。