冲方丁「天地明察」

天地明察

天地明察
天地明察
角川書店(角川グループパブリッシング) 2009-12-01
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 こういう『義務教育レベルでは名前も出てこないけれども、実は凄かった人』が登場する歴史モノに弱い俺にとっては、まさにツボだった作品。
 伊達に「栄光なき天才たち」を全巻愛読してたり、学生時代に一番力を入れたレポートが一般教養の『科学史・科学論』だった訳じゃないんだぜ。
 (在学時代、ガチで優狙いにいった講義なんざ、これぐらいだったしなぁ……)
 
 物語は四台将軍家綱の時代、主人公として生き様が語られる男の名は渋川晴海。幕府お抱えの碁打ちの名門に生まれながらも、算術を一として天文学・暦学を研鑽し、遂には日本独自の暦法を導入させる事に多大な功績を残した人物。正直、大学受験レベルの日本史では名前を覚える必要すら認められていないものの、東洋文化史やら文学史を齧った事があれば『自国独自の暦法を作り、普及させる』事が東洋の世界観というか中華思想に対する凄まじい挑戦的行為である事に思い至ると思う。いやまぁ、俺とて単位稼ぎの一般教養で齧った程度の認識でしか無かったけれどもさ。(時間・空間の基準を定める事が出来るのは中原に覇を称える皇帝にのみ許された行為であり、その皇帝の定めた時間やら空間の仕切りに従わせる事によって『世界の中心・世界の支配者』を任じていた時の皇帝:当時は清国の文化圏からの脱却/反逆とも呼べる行為。)
 それをなす為に、気侭に生きてきた晴海が様々な有識者との出会いと別れを通じて使命感を抱くようになり、単なる算術好きの変人から理想を掲げた思想家へ至る過程が、情緒豊かに描かれている。
 アレだ、藤沢周平の時代物辺りが好きな人なら絶対ハマれる作品じゃないかと思うのだが、どうだろうか。
 
 しかし、この作品とシェンムーセガガガのシナリオが同一人物の手によるモノだとか、信じられないよなぁ。
 (時代物との相性が高いだろうな、というのはシュヴァリエやらピルグリム・イェーガーやらで推測出来るけれども。)