思い出の作品達 六十回 「ファイナルファンタジー5」

ファイナルファンタジー5

ファイナルファンタジー5

 
 
 モアイの中には隠し要素が詰まっていると信じていた、若かりし頃のあの日。
 
 システムとシナリオ(設定)、音楽と登場人物や舞台、グラフィックと演出が噛み合った非常に楽しいSQUARE-SOFT黄金期初期の作品。前々回紹介したFF6がバランス調整崩壊により名作が微妙作に崩れた残念な代物だとすれば、本作は名作がそのまま名作として成立した良い作品だと言えよう。
 FF3にて登場しプレイヤーを魅了したアレを改良し、やり込み要素を追加した新ジョブチェンジシステム。前作や次作に比べて、初心者から上級者まで幅広い層を満足させる様に調整されたゲームバランス(FF4は中盤以降が少々高め、FF6は中盤以降がかなり低め)。FF4の路線を引き継ぎ、更に進化し多様化した音楽。前回シリアスに傾き過ぎた点を考慮したのかコミカル/シリアスとメリハリの付いた脚本と演出。万民向けのRPGとしては非常に完成度の高い作品に仕上がっている。
 殊、ジョブチェンジシステムの完成度は非常に高く、使い易いバランスの取れた(DQ3風に言えば勇者/戦士/僧侶/魔法使い)各種ジョブから使い込めばバランスブレイカーとして機能したりするマイナーな代物(ぶっちゃけ、『歌う』と『捕らえる/放つ』と『調合』)まで数多く揃えられているのが魅力的。ここで重要な点としては『単体でバランス崩壊させるような強力な能力がほいほい簡単に手に入らない(事も無いけど、やり込まないと気付かない)』様に作ってある点だろうか。初回から強力な火力や支援能力が当たり前の様に登場する6以降のインフレ路線とは違い、何度もプレイしたり長時間やり込んだり様々に試してみたりした時に初めて気付かされる、試行錯誤と発見の楽しみが本作には仕込まれている。字際に俺がリアルタイムでプレイしていた時は上記のバランスブレイカー(といっても、『アルテマウェポン』とか『ソウルオブサマサ』&『スリースターズ』とか『ナイツオブラウンド』とか『エンドオブハート』とか『アーク』とか『七耀の武器』の様な阿呆ほどバランス崩すような代物では無く、どちらかと言えばFF2の『古代の剣』とか『眠りの剣』に近い?)に気付く事無く、それでいて多種多様な能力とその組み合わせを純粋に楽しんでいたし。
 本作については特に欠点らしい欠点が見当たらない。ただ、DQ3やFF3の様に『傑作』と呼ぶにはインパクトに欠けてしまうのが俺としては若干の欠点だろうか。
 
 モアイの中に追加要素(ダンジョン)を詰め込むのだろうなと邪推している、汚れてしまった今の俺。