銀河英雄伝説を「映像の世紀」風に 適当にまとめ

立体映像の千年紀

2 名前:1 投稿日:02/11/12 22:32
 これは帝国辺境の惑星、地球にあるカンチェンジュンガ山の映像です。
 峰の上部が失われているのは、黒旗軍の地球攻撃の際に失われたものと考えられています。
 かつて「人類文明の首都」として植民諸星の富の集積によって繁栄した地球でしたが、
 ジョリオ・フランクール率いる黒旗軍の激しい攻撃によって、現在、それを偲ばせる姿を見ることはできません。
 
 経済において歴史上比類ない力を有していた地球は、植民星政策において公正さを欠き、
 いくつかの事件を経て勃発した植民諸星との全面対決において、敗北します。
 この時代、史上最も優れたリーダーの一人として著名なカーレ・パルムグレンも、歴史の表舞台に登場します。
 
 「立体映像の世紀」と題されたこのシリーズの第1回は、栄耀栄華をほこった地球と、
 不公正な植民地支配を打倒するために立ち上がったシリウス星系政府を中心とする自治政府連合との戦いを描き、
 銀河の歴史の序章を振り返ります。
 
14 名前:名無しは無慈悲な夜の女王 投稿日:02/11/21 20:19
 これは、帝国艦隊総旗艦「ブリュンヒルト」の艦橋を捉えた数少ない映像の一つです。
 バーミリオンでの会戦が行われる前に撮影されたものと考えられています。
 右奥でラインハルト=フォン=ローエングラム元帥とオーベルシュタイン上級大将が確認できます。
 この数時間後、銀河系の行方を占う会戦の戦端が開かれました。
 その結末は多くの人々の予想を大きく裏切るものでした。
 
 「シャトル発射口でヤン提督を見送ったのはいつだったか。
  降伏した前線基地の後始末などで、連日本部ビルに泊まり込みだったある日、
  ついにバーミリオンでヤン艦隊がローエングラムの直衛艦隊を発見したとの報に接した。
  我々の同盟の命運がいよいよ決まる。
  ヤン提督が負けるはずがない、自分自身に強く言い聞かせたつもりだったが、やはり緊張した。
  
  上司は少し前から、全く仕事をしていない。
  前線の兵士を思って、いささか腹が立ったが、その上司に比べた自分も大した仕事をしてはいなかった。」
 −「後方勤務本部職員の手記」
 
15 名前:名無しは無慈悲な夜の女王 投稿日:02/12/08 19:52
 画面がかなり暗いのですがこちらの映像をご覧ください。
 最近宇宙空間を漂っていた艦から発見された映像です。
 
 巡航艦レダⅡ号の警備カメラの映像です。
 画面奥の通路から一人の男性が左足を引きずるように歩いて来るのが確認できます。
 
 ヤンウェンリー提督です。
 周囲を見回した後、画面から消えてゆきます。
 
 宇宙暦800年6月1日、この日ヤン提督は皇帝ラインハルトと会談の途上地球教徒のテロリストの銃弾に倒れました。
 ヤンが暗殺される事無く皇帝との会談が実現したならどのような歴史が展開されたか、今となってはわかりません。
 
17 名前:名無しは無慈悲な夜の女王 投稿日:02/12/09 18:10
 この映像はマル・アデッタ星域会戦 における戦艦ヴィーザルの映像です。
 画面中央、司令官席に座っている人物がアイゼナッハ上級大将。
 傍らにいるのが、副官グリース少佐です。
 ここで戦況を伝えるモニターを凝視するアイゼナッハ上級大将が右手を軽く後ろに振るのが確認できます。
 副官「全艦隊砲撃を止め、後退しつつ密集隊形を組め!」
 
 「最近アイゼナッハは無能な指揮官だったのではないか?
  本当に優秀なのは副官では?という意見があるが馬鹿げている!
  戦況を正確に把握し適切な判断をまさに絶妙のタイミングで指揮していた。
  おかげで今私は曾孫に囲まれ幸せに生き長らえている。。
  アイゼナッハは誰がなんと言おうと名指揮官であった・・」
 
18 名前:名無しは無慈悲な夜の女王 投稿日:02/12/09 18:14
 同じくアイゼナッハ大将の映像から・・
 アイゼナッハ大将が指を二回鳴らします。
 しばらく後、従卒の一人が二杯のコーヒーを持ってきます。
 激烈な任務とは言え、コーヒーを二杯も飲み干すところからアイゼナッハ大将はかなりのカフェイン中毒であったと見られます。
 
19 名前:名無しは無慈悲な夜の女王 投稿日:02/12/09 19:08
 今ご覧の映像は、有名な「自由惑星同盟宇宙艦隊最後の瞬間」です。
 銀河帝国軍の総旗艦ブリュンヒルトのモニターを介して記録された、貴重なものです。
 モニターの中央で敬礼をしている老人が同盟最後の宇宙艦隊司令長官アレクサンドル・ビュコック元帥、
 その側で酒瓶とグラスを掲げて見せた中年の男性が総参謀長チャン・ウーチェンです。
 それでは、短い映像ですがじっくりご覧下さい。
 
 「…だからこそ、あなたとわしは同じ旗をあおぐことはできなかったのだ。
  ご好意には感謝するが、いまさらあなたにこの老体は必要あるまい。」
 「……民主主義に乾杯!」
 
 …以上がその瞬間ですが、艦橋の中央にたつ皇帝ラインハルトが
 なにか呟いたのにお気づきになった方もおられるのではないでしょうか。
 読唇術の専門家によれば、彼は「他人に何がわかる」と帝国公用語で独語しているということです。
 
 宿敵自由惑星同盟軍を滅亡させた彼の胸には、この瞬間なにがよぎっていたのでしょうか。
 
22 名前:名無しは無慈悲な夜の女王 投稿日:02/12/11 20:33
 銀河系中の航行可能な回廊宙域の一つ、イゼルローン回廊。
 ここにはかつて、難攻不落を謳われた要塞がありました。
 ・・・・・イゼルローン要塞
 
 先年、新銀河帝国とバーラト自治政府との間で、要塞破壊の合意が得られ、その役割を終えました。
 かつて、このせまい宙域において、激しい戦闘が幾度と無く繰り返され、悲劇を生み出す土壌として、語り継がれてきました。
 シドニー・シトレ、ヤン・ウェンリーユリアン・ミンツ、オスカー・フォン・ロイエンタール、皇帝ラインハルト。
 数々の名将たちの華々しい活躍は、多くの尊い人生が失われた累積の裏返しでもありました。
 「立体映像の世紀」、
 11回目の今日は、イゼルローン要塞をめぐる戦闘を通じて、銀河系分断の時代の悲劇を描きます。
 
23 名前:名無しは無慈悲な夜の女王 投稿日:02/12/11 20:49
 銀河帝国の統治方法はいわゆる「アメとムチ」でした。
 社会秩序維持局による治安警察活動は、ムチの最右翼であると後世の歴史家の見解は一致しています
 この映像の一部を拡大すると、薄い頭髪に覆われた小男が確認できます。
 ハイドリッヒ・ラングです。
 
 当時の誰もが想像できないことでしたが、ラングは歴史に少なからず影響を与えることになります。
 
24 名前:名無しは無慈悲な夜の女王 投稿日:02/12/11 23:56
 歴史上、最初に自由惑星同盟の首都ハイネセンを攻撃した人物は、
 皮肉なことに銀河帝国の軍人ではなく、同盟末期の名将ヤン・ウェンリーでした。
 
 当時ハイネセンには「処女神の首飾り」と呼ばれた12個の攻撃衛星からなる防衛システムが存在し、
 同盟軍首脳部は「これある限り、惑星ハイネセンは難攻不落である」と豪語していたのです。
 強力無比を謳われたこの「首飾り」は「救国軍事会議」のクーデターが鎮圧されるさい、ひとつ残らず破壊されてしまいました。
 ヤン提督が取ったその方法は今ご覧になっている映像のとおり、ドライアイスの巨大な塊を衛星にぶつけるという単純なものでしたが、
 しかしながら効果は絶大でした。
 
 「我々は名誉と生命を賭けていた…」
 「その点に関して、何者にも誹謗はさせん。
  我々は正義を欠いていたわけではない。
  運と実力がほんの少し足りなかった。ただそれだけだ…」
 「軍事革命、万歳!」
 
 「処女神の首飾り」は一瞬のうちに全滅し、「救国軍事会議」は抵抗を断念したのです。
 
25 名前:名無しは無慈悲な夜の女王 投稿日:02/12/15 19:45
 この画像は惑星オーディンの街頭の帝国臣民監視カメラの映像です。
 勿論現在ではこのような臣民監視システムは撤廃されましたが、当時はこのような非開明的なシステムが施行されていたのです。
 しかしおかげで面白い画像が記録されています。
 
 今、一軒の家の窓から男が飛び出してきます。続いてこの家の主がライフルを男に向けて発砲しています。
 男は巧みに避けながら逃げてゆきます。
 
 この日の帝国警察所の記録に
 本日夜11時頃、第8区にて発砲事件発生。
 原因は発砲者の妻の不貞の現場に出くわした夫による事件。
 撃たれた男は逃走中。
 
 画像解析の結果、私達はこの男が旧同盟軍の撃墜王、オリビエポプランと解かりました。
 
28 名前:名無しは無慈悲な夜の女王 投稿日:03/01/22 05:01
 この画像は、「獅子の泉(ルーヴェンブルン)の七元帥」の一人、猛将「フリッツ・ヨーゼフ・ビッテンフェルト」提督の艦隊、
 黒色槍騎兵(シュワルツ・ランツェンレイター)艦隊のランテマリオ星域会戦での戦闘を映したものです。
 その名のとおり、全ての艦が黒く塗られたこの艦隊は、銀河帝国艦隊の中でも最も強力な攻撃力を有していました。
 その源は、各艦の性能もさる事ながら、ビッテンフェルト提督のその性格に起因します。
 
 ビッテンフェルト提督は、身方からは「野獣」と賞えられ、敵からは「猪野郎」「猪突猛進しか芸が無い」と恐れられました。
 先鋒を好んだり、勇猛果敢に攻め入ったりする戦法を好むので、「猛将」と言う言葉が似合う人物。
 粗っぽいが戦略的感覚も持つ、少数の天才と多数の良将・賢将ら宿星数多現れる中で、獣の感性を持つ武将でした。
 ランテマリオ星域会戦において、ビッテンフェルト提督の艦隊は予備戦力として後方に配置されるが
 遊撃戦力として、その獰猛な野獣の牙を見せつけることになる。
 
 「我が艦隊の辞書には、後退とか迂回とかのまどろっこしい言葉は載っていない。」
 
 これは、会戦時のビッテンフェルト提督の言ですが、これを証明するかの如く、
 同盟軍と帝国軍の間に横たわる宇宙潮流を横切り同盟軍の後背に回ろうとしたフェーレンハイト艦隊は潮流の激しさに渡河を断念したが、
 ビッテンフェルト提督の艦隊は、宇宙潮流を物ともせずに前進し同盟軍艦隊の集中砲火を浴びながらも渡河点を確保し、
 同盟軍陣内に肉薄し戦線の崩壊に貢献している。
 この時の衝撃力は物凄く、ビッテンフェルト艦隊の一撃で同盟軍の陣形を崩壊させいてる。
 
 「2時間と時間を限れば、双璧(ロイエンタール、ミッターマイヤー両提督)さえも1歩譲るかもしれない」
 と言われるビッテンフェルト提督の面目躍如たる戦いでした。
 
29 名前:名無しは無慈悲な夜の女王 投稿日:03/01/22 22:04
 これはファイアザード星域会戦から帰還した将兵たちの戦勝パレードを市民が撮影したものです。
 群衆の歓呼に応える若き将官たちのなかに、ブルース・アッシュビー提督を見つけだすことができます。
 
 730年代後半から740年代にかけて、
 「730年マフィア」と呼称される若い清新な指導者集団によって指揮された同盟軍は帝国軍を圧倒し続けました。
 しかし、軍事面において放たれた光彩の陰には、政治面における停滞、軍関係への偏向的人材配置による社会組織の疲労、
 フェザーンに対する経済的依存、といった自由惑星同盟の存立の根幹に関わる問題が山積していたのでした
 
 ブルース・アッシュビーの死後、自由惑星同盟の滅亡にいたるまで、同盟の根本的改革は、成功することはなく、
 民主政治の意義をイゼルローン共和政府へと引き継がれること止まります。
 「立体映像の世紀」第8回目の今日は、自由惑星同盟最後の黄金時代を振り返ります。
  
   「それはファイアザードから始まった」
 
30 名前:名無しは無慈悲な夜の女王 投稿日:03/01/22 22:23
 こちらの画像は惑星フェザーンを皇帝ラインハルトが専用車で通過する模様をフェザーンの一市民が撮影したものです。
 一見何気ない記録映像ですがわたくし達は沿道で見物する群衆の中に意外な人物を見つけ出す事が出来ました。
 ・・・この部分です。・・拡大してみましょう。
 
 亜麻色の髪の少年がじっと車内の皇帝ラインハルトを見詰めています。
 同盟軍屈指の提督ヤンウェンリー養子であり、その後の歴史を大きく動かす事となったユリアンミンツ氏です。
 この時ユリアン氏はいったい何を思ったのでしょうか?
 
34 名前:名無しは無慈悲な夜の女王 投稿日:03/01/23 18:48
 銀河帝国第一王朝の宮殿として知られる「新無憂宮」。
 この広大な宮殿の正門から北へ3キロ、リンベルク・シュトラーゼの一画に、ある屋敷が保存されています。
 元の持ち主をクーリヒ夫人といい、互いに未亡人となった妹とふたりで生活していました。
 そしてこの屋敷には、かの獅子帝ラインハルトとキルヒアイス元帥のふたりが、
 元帥府をひらく直前まで間借りしていたという2階が、ほぼ当時のままに残されています。
 ラインハルト皇帝即位のあとも、クーリヒ夫人は以前とまったく変わらずに暮らしていました。
 ふたりの未亡人の死後、財産と共にこの屋敷を相続したリヒャルト・クーリヒ予備役大佐は、
 偉大な皇帝が寝食を過ごしたこの屋敷を、現在広く一般に公開しています。
 
 クーリヒ予備役大佐にお話を伺ってみました。
 
 「私の大叔母の得意料理はフリカッセでした。
  ラインハルト陛下もフリカッセをお好きでいらして、”宇宙で3番目に美味なフリカッセだ”とおっしゃられたそうです。
  ただ当時、大叔母は陛下のことを”金髪さん”、キルヒアイス元帥を”赤毛さん”と呼んでいたそうで、まったく畏れ多いことですね。
  私は軍歴の最後をグリルパルツァー提督のもとで勤めましたが、あるとき提督が私を呼び止めて
  ”ヒルデガルド皇太后にお話を伺ったことがある、卿の大叔母上とラインハルト陛下のエピソードをな”と突然おっしゃって
  私はただただ恐縮するしかありませんでしたよ。」
 
36 名前:カール五世 ◆zJFe8ZPXPA 投稿日:03/01/23 19:41
 ・・・この映像は、自由惑星同盟軍の総力を結集、
 8個艦隊3000万人を動員したアムリッツァ星域会戦の直前、同盟軍がイゼルローン要塞を進発する様子です。
 しかし、この戦いで自由惑星同盟軍は銀河帝国軍に大敗を喫し、2000万人の兵力を失います。
 
 …そしてこの後、自由惑星同盟は急速に衰退、アーレ・ハイネセン以来300年余の歴史に幕を下ろす事になり
 ヤン・ウェンリー対新銀河帝国、ヤン氏亡きあとはイゼルローン共和政府94万対新銀河帝国400億の最終局面を迎えるのです…。
 
38 名前:名無しは無慈悲な夜の女王 投稿日:03/01/24 20:14
 帝国歴486年5月17日、帝都オーディンは大量の雨に洗われていました。
 こちらの映像は、この日の夜ピアノコンクールが行われた国立劇場の防犯用カメラがとらえていた映像です。
 画面右隅、2台の地上車が新無憂宮への帰途につきます。
 後続の車両の窓から一瞬見えたこの金髪の女性、美貌を歌われたグリューネワルト伯爵夫人です。
 彼女は当時の皇帝フリュードリヒ4世の寵姫として知られていました。
 
 このわずか1時間後、新無憂宮の北の通用門に通じる道で、2台の地上車は対戦車ライフルによる襲撃を受けます。
 しかし、伯爵夫人の警護のために随行していた彼女の実の弟、
 ラインハルト・フォン・ミューゼル上級大将の活躍によって事なきをえます。
 
 当初過激派の犯行と報道されたこの事件は、翌日思わぬ展開を見せます。
 犯行を計画したとして宮廷裁判にかけられたのはベーネミュンデ侯爵夫人。
 彼女は以前フリードリヒ4世の実質的な妃として知られていた女性です。
 過去に皇帝の愛を失った女性が、現在皇帝の愛を一身に受ける女性を嫉妬のあまり殺害しようとした、
 この真相は当時一般には明らかにされませんでした。
 
 ベーネミュンデ侯爵夫人の自裁という形で事件は解決しますが、
 この事件がゴールデンバウム王朝からローエングラム王朝への時代の移り変わりを示す、
 最初の閃光の一筋であったとは、当時誰が予想したでしょう?
 
 続く第4次ティアマト会戦で武勲を挙げたミューゼル上級大将は、ローエングラム伯爵家の家名を継ぎ、
 ローエングラム元帥として皇帝への道を一気に駆け上がることになるのです。
 
51 名前:名無しは無慈悲な夜の女王 投稿日:03/01/31 09:46
 この映像は最近旧帝国公文書館に発見されたもので、
 帝国暦482年度幼年学校卒業式の様子を撮影したものです。
 壇上中央にて記念のメダルを受けておられるのが主席で卒業なされた
 先帝ラインハルト陛下であり、その右側の成績優秀の列には
 故ジークフリード・キルヒアイス元帥の姿もみうけられます。
 まだ当時15歳の少年の目には何が映っていたのでしょうか。
 
 今そのことを知るすべはありませんが
 この後10年を待たずして、この二人の少年が宇宙を手に入れるとは、この時は誰も予想しなかったことでしょう。
 
53 名前:名無しは無慈悲な夜の女王 投稿日:03/01/31 19:01
 惑星フェザーン
 ここは軍務省に程近いある公園です。
 広場の一際目立つ噴水前のこの場所に、一体の彫像が屹立しています。
 銀河帝国第二王朝、初代軍務尚書を務めたパウル・フォン・オーベルシュタイン元帥の像です。
 
 いかなる時も冷静、沈着さを保った元帥の働きぶりは
 同時代の提督たちからも敬遠され、私生活も質素を極めていましたが
 最後の瞬間まで獅子帝ラインハルトに従った元帥として知られ
 その功績は第一級のものとされています。
 
 傍らにはダルメシアン種の犬が寄り添うように配されています。
 この愛犬も元帥の死後まもなく、後を追うように老衰で息をひきとりました。
 彼は先天性の障害により両目は義眼でしたが、
 死して彫像となった今も、その眼差しは真っ直ぐに皇宮「獅子の泉」の方向へ向けられています。
 
55 名前:名無しは無慈悲な夜の女王 投稿日:03/02/03 22:08
 クサンテン。
 ここは惑星オーディンの小都市ですが、良質なモルトウイスキーの産地としてよく知られています。
 新領土総督をよく補佐したベルゲングリューン大将もここのウイスキーを好んで飲んでいたと伝えられています。
 新帝国暦2年11月新領土総督ロイエンタール元帥は皇帝ラインハルトに対して反旗を翻しました。
 ベルゲングリューン大将はその破局の回避に努力しましたがついにその努力が容れられることはありませんでした
 
 「聞くところによれば『野心という酒に卿は酔っている』という趣旨の言を
  ミッターマイヤー提督はロイエンタール元帥にしたらしい。
  正確なところは明らかではないが、その言はロイエンタール元帥の性格をよく捉えている。
  結末はともかく彼の人生はその野心によって充実したからである。
  皇帝に対する忠誠を全うできなかった点を強調し元帥を断罪する評があれば
  それはロイエンタール元帥を理解しない者の言であろう。
  
  これに対して、ベルゲングリューン大将は、自身が酒に酔ったことで理想の上官に出会い、
  その上官を失った後、再び出会った理想の上官を別なる酒に酔って失ったのだから、これは間違いなく悲劇である。」
            ―「回想録」―エルネスト・メックリンガー
 
56 名前:名無しは無慈悲な夜の女王 投稿日:03/02/03 23:59
 この、派手さはないもののバランスの取れたスタイルの艦は「獅子の泉の七元帥」の1人、
 アウグスト・ザムエル・ワーレン提督の座乗艦です。
 
 先に述べた事からも分かるとおり、彼もローエングラム朝初代皇帝の幕下に最も早い時期に
 加わった人物であり、現王朝の成立に最も貢献した人物の一人です。
 
 彼の特徴を一言で現すならば、「地味」といったところでしょうか。
 用兵能力を見ても他の同階級の提督達に比べて特に大きな長所も目立った欠点もありません。
 総合能力的にも、個性的ながら極めて水準が高かった初代皇帝時代の上級大将達と比べても全く遜色はありません。
 むしろ、あらゆる状況に対応できるある意味、最も使える提督の一人だったと言えるでしょう。
 しかし、この事がかえってワーレン提督の地味さを醸し出すことにもなりました。
 
 攻守共にそつなくこなし、確実に任務を遂行するがヤン・ウェンリー提督には一応、負ける。
 妻を亡くし父子家庭ではあるが
 ロイエンタール、オーベルシュタイン両元帥のように家庭というものが全く似合わない人達と比べると遥かにまともな生活である。  
 また、身体的特徴として地球教徒に襲撃されて以来、片腕を失い義手を着ける事になるが、
 これもまたロイエンタール、オーベルシュタイン両元帥の持つ、「眼」の特徴のインパクトに比べると極めて地味である。
 だが彼は、地味ながら確実に出世し、ローエングラム朝成立の立役者となった。
 この彼の実績はまさしく、有能な上司さえいれば目立たなくとも努力は報われるという証左ではなかろうか。
 
 昨今、この首都星フェザーンでは旧同盟領の市場獲得を狙った各企業の派手な宣伝活動が展開されているが、
 このような競争の中でこそ、初代皇帝とワーレン元帥の関係のような中身を伴った経済活動が求められるのではなかろうか。
 
57 名前:名無しは無慈悲な夜の女王 投稿日:03/02/04 20:50
 この映像は宇宙暦792年、旧帝国暦483年に敢行された第五次イゼルローン攻略戦の作戦会議の様子を収めた秘蔵映像です。
 
 後に統合作戦本部長となるシドニー・シトレ提督の姿とともに、
 当時第四艦隊司令官だったドワイト・グリーンヒル中将、
 同じく第五艦隊司令官アレクサンドル・ビュコック中将、
 そしてシトレ提督付の次席副官として会議の準備をしているヤン・ウェンリー少佐など、
 後の同盟軍の主要メンバーが多く見て取れます。
 
 五万隻以上の大艦隊で挑んだこの作戦は結局は失敗に終わりますが、
 艦隊の並走追撃によってイゼルローン要塞の主砲、「トゥールハンマー」を無力化することに成功し、
 参加した提督たちに多くの教訓を与えることとなりました。
 
 そしてその後、宇宙暦794年の第六次攻略戦を経て、
 ついに796年の高名な「ミラクルヤンによる第七次イゼルローン攻略戦」へとつながって行くことになるのです。
 
58 名前:名無しは無慈悲な夜の女王 投稿日:03/02/04 22:06
 これは新帝国歴002年9月22日、新領土行幸の途につこうとする帝国艦隊総旗艦ブリュンヒルトの映像です。
 士官達の顔にも新たな任務への緊張の表情が読み取れます。
 
 「・・・獅子帝ラインハルトは旧王朝の一提督であった時代から、
  宮廷で美姫に囲まれているより、宇宙戦艦の艦上や軍事施設において将兵と共に在ることを好んだ。
  兵士達は、絹のドレスと宝石で飾り立てられた姫君より、黒と銀の軍服をまとった彼らの皇帝こそ、
  華麗なものとして見ていたのであろう」(エルネスト・メックリンガー)
 
 この年の夏は銀河帝国人民にとって、平穏で陽気な季節でした。
 長きにわたった戦争は終末を迎え、父親や夫や兄弟や恋人や息子はそれぞれの家族のもとに遠征から帰ってきました。
 故郷に帰還して恋人に迎えられ、そのまま結婚式場に駆け込む若い兵士も、何万人となくいたのです。
 
 艦内の士官食堂を撮影したこの映像にも、階級や身分にとらわれず、分け隔てなく歓談する士官や兵士達の姿が映されています。
 旧王朝時代には士官たちは出身身分や階級に応じてそれぞれに固まり、小さな争いも頻発していました。
 これは戦乱の時代が終焉し、新たな平和の時代を迎えた者達の心の平安を、素直に表した変化でした。
 
 「・・・ローエングラム王朝の軍隊が強兵であった理由のひとつとして、
  皇帝個人の敵と、国家の敵と、民衆の敵とが、別個のものではなく、同一のものであることを信じていたことが挙げられる。
  ラインハルト・フォン・ローエングラムは彼らにとって解放者であった」(ユリアン・ミンツ)

 ところがこの行幸がウルヴァシー事件をまねき、新領土総督ロイエンタール元帥の謀反という事態に直面しようとは、
 このときどれだけの者が予想したでしょう?
 
 第二次ランテマリオ星域会戦において新王朝の士官と兵士たちは、
 それまでの見方同士、親兄弟同士を相手に戦わなければならない、過酷で悲惨な運命が待っていたのです。
 
60 名前:名無しは無慈悲な夜の女王 投稿日:03/02/07 22:57
 796年に行われたアスターテ会戦は今日でこそラインハルト1世の完全勝利と思われていますが、
 当時従軍した兵士たちは多くの不安を抱えていました。
 いまだ常勝の神話を築いていなかったラインハルト1世をその若さから不安視する声が多かったのです。
 
 艦隊の後方主任だったロベルト・マンシュタイン氏の手記が残っています
 
 「…キルヒアイス中佐から補給に関して、補給部隊の提督とミーティングしておくよう言われた。
  今回の作戦はいかに移動しながら各艦に補給を行うかがキーになるかららしい。
  二倍の兵に囲まれて勝つ気でいるのだから、たいしたものだ。
  
  補給部隊の司令官と言うのは何とか言う貴族の出だった。
  あまり聞かない名前で、少将というのだから、きちんと出世してきたのだろう。
  だがこの少将どのは自分と一言も口を利かず、意思疎通は身振り手振りや指使い、それを副官が通訳したものによってのみであった。
  そういえば、ローエングラム提督は貴族たちから嫌われていて、
  今回の艦隊は人事上でも多くの嫌がらせを受けていると聞いたことがあった。
  
  暗雲たる気持ちでミーティングルームを出ると、隣の部屋からエルラッハ提督のどなり声が聞こえた。
  悔しそうな顔をして出てきた砂鉄色の髪をした男は25,6歳に見えたが准将の階級をしていた。
  どうせ貴族の若造だろう。
  
  ……こんなやつらに指揮されれば絶対負ける。
  私はそう覚悟すると、ふらふらと自室に戻った。家族に遺書を送るためである…」
 
 一方、迎え撃つ同盟側も、ヤン提督をはじめとする若手士官が艦隊を集中して運用するよう進言しましたが
 古い考え方の司令部には受け入れられませんでした。
 特にこの会戦では明確な総司令官が決められておらず、意思の統一を図ることが難しい状態にあったのです。
 
 こうして両方とも多くの不安を解消しきれないままついに戦端が開かれたのでした…。
 
64 名前:名無しは無慈悲な夜の女王 投稿日:03/02/15 01:01
 これは宇宙暦797年、ゴールデンバウム帝国暦488年三月の終わりに行われた進発式の様子です。
 この年、ラインハルト1世は国内を二分したリップシュタット戦役に直面しました。
 
 正規兵だけでも800万ちかい兵員が敵対する貴族連合につき、特に後方勤務の人員不足が問題になります。
 艦隊司令長官として実戦部門はほぼ掌握していたラインハルト1世でしたが、
 その当時はまだ軍務省までは掌握しきれていなかったのです
 この問題を解決するために、彼は艦隊勤務者の中から軍務省勤務の経験のある将官を中心に軍務省に転任させて、
 急場をしのぐことで問題が表面化することを防ぎます。
 
 それによって前線部門に開いた穴を埋めるために、彼は若手士官の中から推挙のあったものを将官に任じ、
 自らが集めた提督たちの下につかせ、未来の中級指揮官を育成しようと考えます。
 この決定によりいまだ二十代前半だったバイエルライン、ヴァーゲンザイル、トゥルナイゼン、クナップシュタインなど
 多くの佐官級の人材が将官へと登りました。
 彼らの多くは当然艦隊指揮の経験は皆無でしたが、歴戦の提督に率いられ、勝利と経験をつみ、
 後に一線級の指揮官として黎明期から安定期に入るローエングラム帝国を支えることとなります。
 
 しかしこの決定は同時に多くのトラブルを生むことになります。
 ゾンバルト提督は同期のミュラー提督との待遇の差にあせり、ラグナロク作戦で失敗し、
 また、宇宙暦800年、ローエングラム帝国暦002年に起こった「ロイエンタール元帥反逆事件」に加担したグリルパルツァー提督も
 この制度によって将官に上がった人物の一人でした。
 改革時に生きた彼らは、時として自らの器以上の地位を望み、そしてそれによって自滅していった人物も大勢いたのでした。
 ある意味彼らも歴史の犠牲者の一人と言えるかも知れません…。
 
65 名前:長くてごめん1 投稿日:03/02/15 20:14
 宇宙暦796年、帝国領への侵攻が発表されると同盟市民は興奮と熱狂に支配されました。
 この画像はハイネセンから進発する同盟軍の艦艇の姿です。
 見送る将兵、家族で宇宙港は騒然としています。
 後にアムリッツァの戦いと呼ばれるこの作戦に従事した同盟の艦艇は20万隻、
 将兵は3000万人という史上類をみない大規模なものでした。
 
 参加したある兵士の日記が残っています。
 
 「ついにこの日が来た。専制国家を打倒する日がついに来たのだ!
  軍に入ってからまだ一年しかたっていないのに、こんな作戦に参加できるなんて夢のようだ。
  帝国の虐げられた国民を解放し、僕たちが解放者になるんだ。
  今は後方の輸送部隊所属だけど僕だっていつかはフォーク準将のような参謀になってやる。
  同盟は絶対に勝利する
  同盟万歳!」
 
66 名前:長くてごめん2 投稿日:03/02/15 20:14
 お祭りさわぎに浮かれる兵士・市民たちとは対照的に軍の指導部には悲観的な見方が強かったと言われています。
 戦後公開された議事録からは作戦を立案したフォーク準将と慎重的な立場をとるヤン・ウェンリー提督との対立がよみとれます
 ヤン提督と同じく慎重派だったビュコック提督の手記です
 
 「同盟がこの史上最大のばかげた作戦を実行するのは選挙をひかえた
  政治家どものたくらみだろう。 フォークはそれに利用されただけにすぎん。
  これが民主主義国家の実像だ。
  
  おそらく多くの兵士が再び同盟の地をふむことはないだろう。
  しかし、被害を最小限にとどめることはできる。
  唯一の希望はヤン・ウェンリーが同盟にいることだ」
 
 宇宙暦796年、帝国暦487年に行われたアムリッツァの戦いによって
 同盟軍は2000万人の兵士を失い、壊滅的な打撃をこうむります。
 
 この戦いで軍事バランスは大きく帝国に傾き、
 さらに迎撃の任にあたったラインハルト・フォン・ローエングラムは帝国軍部での影響力を増大させました。
 一方、同盟においてもヤン・ウェンリーがその地位を進め、この二人の天才を中心に歴史は動き始めることになります・・・
 
67 名前:名無しは無慈悲な夜の女王 投稿日:03/02/15 23:15
 宇宙暦800年8月29日、
 ローエングラム朝銀河帝国初代皇帝であるラインハルト・フォン・ローエングラム
 戦死者墓地の完工式に出席し、帰途につく途中に暴漢に襲われ、暗殺されかけました。
 公式には地球教徒の犯行と発表されたこの事件は、実際には個人の憎悪から発したものでした。
 
 「きさまに何ら危害を加えたわけでもない子供や赤ん坊を、
  熱核兵器の劫火で生きながら焼き尽くしたように、おれを焼け!」
 「死者は忘れんぞ。自分たちがなぜ焼き殺されたか、永遠に憶えているぞ」
 
 …なぜこのような映像が検閲を潜り抜け、後世に残されたか疑問に思う方も多いのではないでしょうか。
 実はこの映像を撮った軍の広報カメラマンは、恋人がヴェスターラントの出身者でした。
 ブラウンシュヴァイク公の行った核攻撃で恋人を失い、復讐のために軍に志願したのです。
 皇帝ラインハルトを救世主として崇め、忠誠を誓ってきた彼はこの事件で真相を知ってしまいます。
 
 その直後に彼は謎の死を遂げますが、映像を記録したディスクは厳重な封印を施された上で、
 惑星オーディンの衛星軌道上を回り続けていたところを発見されました。
 
68 名前:名無しは無慈悲な夜の女王 投稿日:03/02/16 20:50
 帝国暦490年5月5日、
 同盟軍の砲列が、帝国艦隊総旗艦ブリュンヒルトを砲列に捉えたとき、
 同盟首都星からの一通の通信文が、事態を変えます。
 無条件停戦命令でした。
 
 「『政府首脳部は気が狂ったか!
   我々は勝ちつつある。いや、勝っている!
   何だって,いま戦闘を停止せねばならんのだ!?。』
  俺が怒号してベレーをたたきつけたそのとき、
  シェーンコップ中将は以前からの煽動とは比較にならない激しさでヤン提督に命令を無視するよう焚きつけた。
  しかしヤン提督は普段と変わらない様子で全艦隊の後退を命じたという。」 ―回想録― ダスティ・アッテンボロー
 
 同盟政府をして無条件停戦命令を発するに至らしめたのは、
 帝国の双璧として称えられたミッターマイヤー上級大将とロイエンタール上級大将らが指揮する艦隊が無防備の首都星への攻撃でした。
 しかし、この作戦を立案したのは後の皇妃となるヒルデガルド・マリーンドルフであったと帝国の公式文書が伝えています。
 
 「統合作戦本部ビルが一瞬にして崩壊した。艦隊から極低周波ミサイルが発射されたのだろう。
  どうやら敵は民衆に被害について配慮しているようだ。
  前線で帝国の最精鋭と戦い若い生命が失われているこのときにいたってまで責任を考えず
  安全な地下で隠れている軍首脳部とは器が違うと言うことを実感した。
 
  民主主義が個人に敗北した・・・とは思いたくはないが、
  同盟が降伏した後、民主政治の精神を知らない大衆はますますあの若き魔術師を支持するにちがいない。
  民主政治の精神はここに死んだ。」
          「降伏前夜の手記」―ジョアン・レベロ―
 
69 名前:名無しは無慈悲な夜の女王 投稿日:03/02/17 04:38
 マル・アデッタ。
 自由惑星同盟最後の正規軍を率い、ローエングラム帝率いる十万隻の本隊に最後の戦いを挑んだ
 同盟軍宇宙艦隊司令長官アレクサンドル・ビュコック元帥が選んだ決戦の地です。
 七十歳を過ぎ、すでに老人ではありましたが、元帥はその年齢を全て経験に変え、
 あらゆる局面に対応する手腕を持ち、また柔軟性の面においても衰えはありませんでした。
 
 ローエングラム帝が帝国最大の実力者となり、同盟への侵攻を開始して以来、
 皇帝はほぼ常に十万隻前後の規模を誇る大艦隊を率い、侵攻作戦の中枢として同盟領奥深くに駒を進めました。
 当然、幕僚にはロイエンタール、ミッターマイヤー両提督を始め、
 帝国軍の中核を成す人物が多数おり、まさに宇宙最強の艦隊と言えるものでした。
 
 同盟軍艦隊司令長官だったビュコック元帥はこの帝国軍本隊の迎撃に二度、当たっています。
 一度目はランテマリオ。
 この時、元帥は約三万隻を率い、両翼を広げた帝国軍の中央突破を計りましたが
 味方の抜け駆けなど統制が取れず、あえなく敗退しました。
 そしてマル・アデッタ。
 元帥の率いる戦力はなんとかかき集めたといわれる二万隻。
 しかも複雑な構造の宙域ながら戦略的には意味を持たず、
 ある程度の押さえの兵力で塞がれると首都星までそのまま素通りされてしまうような場所になぜ布陣したのか。
 
 元帥にはローエングラム帝自ら本隊を率い、全軍で攻めてくる確信があったと言われています。
 戦いを挑む者を無視するは非礼なる行為。
 元帥はそのことを既に分かっていたのでしょう。
 
 そして遂に、同盟軍最後の戦いが始まります。
 が、ここで帝国軍は思わぬ大苦戦を強いられる事になります。
           映像の宇宙世紀 第35回 「マル・アデッタの戦いー前編ー」
 
77 名前:名無しは無慈悲な夜の女王 投稿日:03/02/21 22:30
 この映像は宇宙暦798年、ゴールデンバウム王朝暦489年、
 8月20日に自由惑星同盟全土に放送された、銀河帝国正当政府の樹立と、
 当時7歳だった皇帝エルウィン・ヨーゼフ2世の亡命を伝えた放送を記録したものです。
 
 このとき同盟政府最高評議会議長だったヨブ・トリューニヒト議長が熱弁を振るっています。
 当時、彼は巧みな弁説とカリスマで同盟市民の圧倒的な支持を得ていました。
 
 「帝国のラインハルト・フォン・ローエングラムは、強大な武力によって反対者を一掃し、
  いまや独裁者として権力を欲しい侭にしています。
  わずか七歳の皇帝を虐待し、自らの欲望の赴くままに法律を変え、部下を要職につけて、国家を私物化しつつあります。
  しかも、帝国内部だけの問題ではありません。
  彼の邪悪な野心は、わが国に対しても向けられています。全宇宙を専制的に支配し、
  人類が守り続けた自由と民主主義の灯を消してしまおうと言うのです。彼のごとき人物とは共存できません。
  我々はここで過去のいきがかりを捨て、ローエングラムに追われた不幸な人々と手を携えて、
  すべての人類に迫る巨大な脅威から我々自身を守らねばならないのです」
 
 しかし、後の調査によって、この亡命劇が当時第三勢力と目されていたフェザーン
 そして地球教とトリューニヒト氏の三者が共謀であったことが分かっています。
 彼らは共通の利益の元、幼かった幼帝を亡命させ、それを口実に自由惑星同盟の滅亡を図ったと言われています。
 
 しかし、当時の同盟市民はこのことは知らされず、
 幼い幼帝を当時まだローエングラム公爵を名乗っていたラインハルト1世から守るという、ナイトシンドロームに酔いしれました。
 結果、ラグナロック作戦によって同盟は敗北、
 バーラトの和約によって銀河帝国正当政府は半年足らずでその短い運命を終えることになったのでした。
 
78 名前:名無しは無慈悲な灰色の女王 投稿日:03/02/23 08:39
 『立体映像の千年紀』
 
 第0集 それはシリウスから始まった 搾取と弾圧が反地球勢力を育てた
 第1集 宇宙暦の幕開け フロンティアは拡大を続けた
 第2集 ルドルフの野望 人々はみずから専制君主を求めた
 第3集 自由の旗自由の民 共和主義者たちは深淵を渡った
 第4集 血塗られた帝譜 臣民は雲の上の争いに翻弄された
 第5集 銀河を覆う戦火 長く熱い戦いが始まった
 第6集 果てしなき対峙 フェザーン、730年マフィアそしてイゼルローン
 第7集 獅子と魔術師と 硬直した時代が彼らを必要とした
 第8集 英雄たちの戦場 多くの将兵が熱狂とともに死地へ向かった
 第9集 最後のともしび それでも残された者たちは戦いつづけた
 第10集 ローエングラム朝の興亡(仮題)
 
 7〜9集だけ、他の回の10倍くらいの分量がありそうですな(w
 
89 名前:名無しは無慈悲な夜の女王 投稿日:03/04/10 22:36
 「進め!進め!退くものは王虎の主砲で吹き飛ばすぞ!!」
 画面中央、大声で艦隊を指揮しているのが猛将ビッテンフェルト提督です。
 彼は戦いにおいて決して敵に対して後ろに引かず、常に攻撃あるのみでした。
 旧同盟軍艦隊では彼の乗艦王虎を見ただけで戦意を失ったとも言われています。
 
 そんな彼ですが意外な一面もあります。
 こちらの映像は帝国劇場において、ラインハルト皇帝を迎えてのオペラの御前公演されている所です。
 通常このような芸術鑑賞にはラインハルト皇帝の隣には芸術家提督メックリンガー氏がお供をする事が多かったのですが
 ビッテンフェルト提督がいます。
 
 舞台の役者達の熱演にビッテンフェルト提督の目にうっすらと涙が確認されます。
 戦場の猛将の意外な一面といった所でしょうか?
 
 90 名前:名無しは無慈悲な夜の女王 投稿日:03/04/11 08:12
  >>89
  欠伸で涙がでたのでしょう
 
 91 名前:89 投稿日:03/04/11 08:16
  昨日放映いたしました映像の世紀銀河英雄伝説において
  ビッテンフェルト提督についての紹介の中で一部誤りがございました。
  関係者の皆様の御証言から、観劇中ビッテンフェルト氏はあくびをかみ殺しただけで
  オペラ等にはまったく興味がなかったとのことです。
  お詫びして訂正いたします。
 
98 名前:名無しは無慈悲な夜の女王 投稿日:03/05/16 10:51
 現在でこそ帝国政府の人類発祥記念国定公園星に指定され一度は訪れてみたい人も多いと思われる地球ですが、
 戦乱の時代には陰謀と権謀の渦巻くテロの中心でした。
 
 AD世紀に地上を出ることが無かった人類にとっては最高峰の山脈であったヒマラヤ。
 現在では何も彫られていない記念碑がひとつ建っています。
 この碑こそがテロによって人類の歴史を後退させることは出来ないという
 政府の断固とした意思を示す目的で建てられたのは新帝国暦12年のことでした。
 そしてこの碑だけがかすかに当時の歴史を感じさせてくれます。
 
 この映像はその地球でのテロ集団、地球教本部内で撮影された非常に貴重な映像です。
 年代は特定できませんが、帝国暦485年頃ではないかと推測されています。
 黒衣の集団が当時の大司教と見られていますが、定かではありません。
 
 陰謀はこの当時より旧フェザーン自治領を経由して銀河に広がっていましたが、知るものはいませんでした。
 そして、陰謀によって紡ぎだされた歴史は間接的に旧自由惑星同盟の崩壊を描いていく事になります。
 今夜は"戦争とテロ"と題してお送りしていきます。
 
109 名前:名無しは無慈悲な夜の女王 投稿日:03/06/15 00:35
 イゼルローン陥落は、帝国に大きな衝撃を与えましたが、
 意外にも軍上層部は処分されず、大きな変化はありませんでした。
 その内幕の一端が、当時の皇帝フリードリヒ4世の日記から窺えます。
 
 「イゼルローン失陥の報を受けた。なぜこんな事になったのか。
  三長官がそろって辞任を申し出てきたので、ローエングラム伯にそのうちの一つを与えようとしたが、
  伯は三長官に罪はないと断った。全く無欲な者だ。
  仔細は国務尚書に任せ、午後はバラの世話をした。」
 
132 名前:名無しは無慈悲な夜の女王 投稿日:04/02/11 00:12
 私が同盟軍に着任したのは、この軍務が終了すればノンキな年金生活ができると聞いたからでした。
 しかしここに着いて三つのことを知りました。
 
 まず第一に、
 同盟軍は年金がもらえるまで長生きできる兵隊などいないということ、
 次に、
 そもそも軍では年金など、戦死する兵隊のために用意されてなどいないこと、
 そして最後に気付いたのは、
 この軍隊で私が長生きする役目は私自身に課せられているのだということでした。
 
 -----うっかり本音を洩らした同盟軍将校の談話より
 
135 名前:名無しは無慈悲な夜の女王 投稿日:04/02/15 06:26
 ――同盟軍兵士の手紙より
 
 万歳!
 とうとう明日、午前十一時、徴兵のために集まると言う命令を受け取りました。
 今か今かと待っていたところです。
 今朝、知り合いの若い女性に会いました。
 軍服姿じゃないのを見られるのが恥ずかしいぐらいでした。
 僕はもう、平和な時代の人間ではありません。
 こう言うときに、自分のことや家族のことを考えると、小さく、弱くなります。
 国民や祖国のことを考えると、強くなれるのです。
 
136 名前:名無しは無慈悲な夜の女王 投稿日:04/02/15 10:15
 ――ユリシーズ艦兵士の手紙より
 
 泥、泥、泥・・・・・・
 僕は毎日、泥の戦艦の中に居ます。
 戦艦は、思っていたのとはまったく違う所です。
 最悪の敵は、排泄物です。何日も何週間も、濡れた糞尿の上にうずくまり、
 敵の砲弾の中で暮らすのは、どんなものか想像もつかないでしょう。
 厚いブーツを履いていますが、冷たい糞尿で、足は氷の塊のようです。
 何人かの鼻は効かなくなりました。
 
140 名前:名無しは無慈悲な夜の女王 投稿日:04/03/18 02:08
 これは、バーミリオン星域会戦時にスパルタニアン搭乗員が故郷に送った手紙からです。
 
 「無数もの光が視界を支配する・・・
  後世の人たちが映像だけ見たら美しささえ感じかねない光景だ。
  しかし、そのひとつの閃光が垣間見えるたびいったい何人の人間が蒸発したのかは、外からは見えない。
  母さん・・・ 俺は怖いんだ。
  次の瞬間、自分がそうなるかもしれないってさ・・・」
 
 この搭乗員はこの手紙を送ったあと、戦死しています。
 こうして宇宙に命を散らしていった若者が当時、大勢いたのです。
 
142 名前:名無しは無慈悲な夜の女王 投稿日:04/03/18 22:59
 第2集 ルドルフの野望 人々はみずから専制君主を求めた
 
 今流れている映像は、宇宙暦285年当時のハイスクールのイベントをホームビデオで収めたものです。
 この学生の中でもひときわ風貌が際だっているこの少年が、当時弱冠17歳のルドルフ・フォン・ゴールデンバウムです。
 この人物がのちに政界に転じ、銀河帝国を興しやがて「初代銀河帝国皇帝」になることになります。
 今日はこのルドルフと彼を支持し、やがて独裁者として君臨させてしまったこの時代を中心に、歴史を追っていきます。
 
144 名前:名無しは無慈悲な夜の女王 投稿日:04/03/24 12:50
 ここは、恒星アムリッツアです。可住惑星が存在しない不毛の星系です。
 今では誰も近寄らないこの星系で、人類史上最大の戦いが行われました。
 「アムリッツア星域会戦」です。
 
 この戦いでは自由惑星同盟に所属する2千万人の将兵の命がこの恒星に吸い込まれ命を落としていきました。
 これに体表されるように、この時代においては1度の戦闘で数百万人の生命が奪われることがしばしばおきました。
 今回は、宇宙歴640年に始まる銀河帝国自由惑星同盟に代表される共和主義者の戦いを中心に歴史を追っていきます。
 
 「第3章 専政と愚衆の闘い」
 
151 名前:1じゃないよ 投稿日:04/03/29 14:59
 旧帝国歴797年、宇宙歴488年4月19日。
 旧帝都オーディン郊外のリップシュタットの森にリヒテンラーデ=ローエングラム枢軸成立に反発した旧勢力の名門貴族たちが集まり、
 いわゆる『リップシュタットの密約』が交わされました。
 
 この映像はリヒテンラーデ公の命によりこの密議に潜入したヘス子爵が密かに撮影したものです。
 前皇帝フリードリッヒ4世の娘婿であった当事の大貴族ブランシュバイク公やリッテンハイム侯の姿が見えます。
 画面右端で一際大げさな身振りで騒いでいるのが後に幼帝エルウィン・ヨーゼフ2世を誘拐することになるアルフレッド伯です。
 
 この密約にはそれまで敵対関係にあったブラウンシュバイク公とリッテンハイム侯が共同で呼びかけたものでしたが、
 ゴールデンバウム朝における名門貴族、有力貴族、高級軍人の多くが集まりました。
 その中にはヒルデスハイム伯を始め大規模な私兵を有するもの、シュターデン提督のように現役の正規軍の艦隊司令官などがおり、
 リヒテンラーデ=ローエングラム陣営は軍事的に圧倒的に不利な立場に陥ります。
 
 しかし、リップシュタット戦役でローエングラム陣営が勝利したため有力貴族の大半が没落することになり、
 結果的に戦役後はゴールデンバウム朝の旧勢力は一掃されることになります。
 
 ゴールデンバウム朝最大の内乱と呼ばれたリップシュタット戦役、
 それはラインハルトよる旧王朝打倒の戦いでもありました。
 
152 名前:ひさしぶりに1です 投稿日:04/04/05 22:46
 先年、古書市場に売りに出された1枚の光ディスクが、歴史家のみならず、一般メディアの注目をも集めました。
 それは、イゼルローン革命政府軍司令官ユリアン・ミンツが地球教本部において発見した
 地球教の極秘文書が収められたディスクの数少ないコピーのひとつであったからでした。
 
 レオポルド・ラープがフェザーン自治領を立ち上げるに至った経緯など
 銀河の裏面史の研究がこのディスクの頒布によって大きな進展が期待されます。
 
 「立体映像の世紀」、
 第7回目の今回は、このディスクの資料をもとに、地球とフェザーン自治領による銀河系工作の系譜をたどります。
 
174 名前:こんな感じ? 投稿日:2005/04/19(火) 01:00:44
 現在、98歳のワレンコフ・ツヌゲイさん。
 現在、ハイネセン近郊の住宅街で悠々自適の生活を送っています。
 しかし、今から81年間、ツヌゲイさんはヤン艦隊の旗艦「ヒューベリオン」に新兵として乗船していました。

 (字幕 2ヶ国語)
 「周りを見回しても銃の扱いもろくにできない連中ばかり。
  初めて行き先を「イゼルローン」と聞いたとき、この司令官は馬鹿だと思いました。
  次に俺は死ぬんだ。と。
  
  ビデヲレターを作成しようと急いで酒保に行くと、既に記録媒体はすべて売り切れ。
  俺は家族に最後のお別れもできないのかと思うと、その日の夜は、涙が止まりませんでした。」
 
179 名前:名無しは無慈悲な夜の女王 投稿日:2005/05/02(月) 22:36:12
 ――惑星オーディンの中心部に位置するこれらの壮麗な建物群はかつて「新無憂宮」と呼ばれたかつての皇帝たちの宮殿であり、
 建物の大半が閉鎖された今でも、美術館として公開された部分を見学することで旧銀河帝国の栄光を偲ぶことができます。
 この「立体映像の世紀」の取材のために、この「新無憂宮」に初めてカメラが入ることが許されました。
 
 ――この帝国宰相執務室では、新銀河帝国皇帝ラインハルト・フォン・ローエングラムが、
 皇帝となる前に数々の政治改革を行った場として知られています。
 なかでも有名なのは同盟崩壊の決定打となる「神々の黄昏」作戦前に行われた
 オーディン駐在フェザーン高等弁務官ボルテックとの会談ですが、
 このたび公開された資料からその会談を再現してみましょう。

 ボルテック  「閣下は新帝国において政治上及び軍事上の権力を独占なさりませ。
         我々は、統一された新帝国における経済的な特権、特に恒星間流通
         と輸送の独占を閣下にお認めいただきたいのです」
 ラインハルト 「では、フェザーンの地位はどうなるのか」
 ボルテック  「今まで通り、我々の自治権はお認めいただきたい」
 ラインハルト 「それを認めるための条件としてフェザーン回廊の航行権を要求する」
 ボルテック  「・・・即答致しかねます。」
 
 この会談以後、旧来の勢力均衡外交を維持しようとしたフェザーンは没落し
 ラインハルト・フォン・ローエングラムの構想する新たな秩序に組み込まれることとなります。
 
181 名前:名無しは無慈悲な夜の女王 投稿日:2005/05/02(月) 22:51:49
 ジェシカ・エドワーズの意思を継ぐエドワーズ委員会が警察権力によってその政治生命をたたれたために、
 トリューニヒト政権を掣肘しようとする者は後を絶ちました。
 
 ――エドワーズ委員会主催のデモに参加した女子学生の日記より
 「わたしも友人と一緒にデモに参加しました。
  現在の戦争は少数の政治家や軍需業者を肥え太らせるためにのみ継続されていると考えたからです。
  
  でも、そのことがこんな大事になるとは思っても見ませんでした。
  ここは自由の国であり、政治思想の主張は国民の権利であるとそう信じて疑わなかったからです。
  
  でも、警察官たちが、バリケードを作って私たちを包囲しているのを見たとき、
  私たちが国家の敵となってしまったことを瞬時に悟りました。」
 
190 名前:名無しは無慈悲な夜の女王 投稿日:2005/08/15(月) 09:58:53
 宇宙暦797年6月22日日曜日
 
 重苦しい日だ。
 ハイネセン記念スタジアムで市民たちが反戦集会をやろうとしたために、深刻な暴動が起こった。
 軍隊は発砲しなければならず、多くの人が殺され、負傷した。
 何とも重苦しく、心の痛む出来事だった。
 
       6月23日月曜日
 
 今日はイゼルローンに特別の事件は起こらなかった。
 いくつかの報告を聞いた後に、フレデリカと昼食を共にした。
 午後、キャゼルヌの家からケーキを持参したシャルロットに会った。
 散歩後、ユリアンのところでお茶を飲んだ。

                        ――ヤン・ウェンリーの日記より スタジアムの虐殺当日
 
191 名前:名無しは無慈悲な夜の女王 投稿日:2005/08/15(月) 10:48:27
 敵の艦隊が悠然と突撃してくるのには仰天した。
 将校の中には、下がるやつはケーニヒスティーゲルの主砲で吹き飛ばせという人もいる。
 私たちは砲撃を開始した。あとはどんどん弾を詰め込むだけだった。
 連中は100隻単位で倒れていく。
 狙う必要などない。彼らに向けて、引き金を引けばそれで済んだ。
 
                          ――ロイエンタール反乱軍射撃手の手記より
 
192 名前:名無しは無慈悲な夜の女王 投稿日:2005/08/16(火) 00:18:05
 反乱軍は今、宇宙唯一の敵国であり、その軍事力は我が国よりも微妙に勝っている。
 しかし、帝國軍にあって反乱軍にはないものがある。
 長期戦に備えられるだけの広大な国土と莫大な人口、そして食料である。
 したがってこの戦争は三つの段階をたどる。
 
 第一段階
 自由惑星同盟は奥地まで攻め入ってくるが、補給に行き詰るだろう。
 第二段階
 自由惑星同盟は現地調達で対抗するが、我が方の焦土作戦によって消耗するであろう。
 そして第三段階
 十分な力を蓄えた我が方は、自由惑星同盟を追い出し、戦争は終わるであろう。
               ――アムリッツア星域会戦前夜ラインハルト・フォン・ローエングラム
 
193 名前:名無しは無慈悲な夜の女王 投稿日:2005/09/15(木) 04:41:42
 帝国軍の主要基地であるイゼルローン要塞
 
 ここは軍事要塞の中で唯一民間人が見学に訪れる事が出来る要塞です
 観光客が真っ先に訪れカメラに納めるのはただのベンチの様に見えますが、このベンチには名前が付いています。
 「思慮のベンチ」または「ヤンのベンチ」と
 
 司令官室にいることが少なかったといわれるヤン元帥が考え事をするのによく使っていました
 後年はミンツ代表もここで考え事をしていたようです
 
 イゼルローンの住人達はここで考え事に耽るヤン元帥を数多く見掛けていました
 当時副官であったヤン夫人は、用があるときは司令官室よりも、このベンチを先に探したと言われています
 また、八月の記念日にはイゼルローン共和国の子孫達がこのベンチを囲み往時を懐かしむのです
 
 次の映像は、復元されたヤン元帥司令官室と居住フラットです
 先程のキャゼルヌ元ノイエラント警備局事務総長のフラットより生活感がないのは独身時代のフラットを再現したからです
 ここにヤン元帥とミンツ代表は暮らしていました
 ヤン元帥と夫人がここで暮らすようになるのは、二回目にイゼルローン要塞を奪取した時からです
 
 映像の世紀「イゼルローン〜旧同盟の住人達」
 
194 名前:名無しは無慈悲な夜の女王 投稿日:2005/09/15(木) 15:51:45
 現在、ファイブ・ブラザーズと呼ばれる帝国の五大星間輸送船会社
 その一つである「(株)商船ベリョースカ」。
 最近までフェザーン資本により設立された会社であると思われてきました
 
 我々取材班は、この会社の設立時の資金の流れに注目。
 結果、この会社は当初、旧同盟の船と旧イゼルローン共和国・旧同盟・フェザーン独立派の資金が合わさって出来た会社だとわかってきました
 現在の社長スズイ・ウェンズデェールは「知らなかった。先々代の社長からはフェザーンの商人達が資金を出し合ったと聞いていました」
 
 映像の世紀、今回は動乱の時代から創成への転換期に隠された複合企業体の成立に焦点を当てて行きます
 
 「複合企業体〜経済、境界なき魔物」
 
200 名前:名無しは無慈悲な夜の女王 投稿日:2005/10/28(金) 21:41:49
 ここに、一枚の写真があります。
 
 新帝国暦3年7月20日、すなわち獅子王ラインハルト一世が死去するわずか一週間前に撮影されたもので、
 車椅子に座ったラインハルト一世、その傍らのヒルダガルデ皇后、
 そして、ラインハルト一世の横にいる人物こそが、若き日のユリアン・ミンツです。
 
 帝国憲政の父と呼ばれているユリアン・ミンツが、旧同盟の軍服を着ていることを奇異に思われるかもしれませんが、
 ユリアン・ミンツは、実は旧同盟ハイネセン出身であり、同盟軍軍人として育てられ、
 イゼルローン共和国軍の司令官だったこともある人物です。
 
 そして、この日、ラインハルト一世との会見において、ユリアン・ミンツは、憲法の制定と議会の設置を提言しました。
 わが国における、民主主義の歩みは、この瞬間から始まった、と言っても言い過ぎではありません。
 
 ユリアン・ミンツはこの後、ヒルダガルデ皇后の依頼により、
 立憲君主制憲法を調査するため、地球に赴くことになるのですが、それが、憲法学者としての第一歩となるのでした。
 
201 名前:名無しは無慈悲な夜の女王 投稿日:2005/10/30(日) 13:30:47
 この記録映像はマシューソン家に代々伝わる門外不出の物として保管されてきたものです
 それではご覧頂きましょう。
 
 スクリーンの向こう側に写っている細身の男性はなんと若き日のヤン少佐です
 その横にいる幅がヤン少佐の倍はあろうかと思われる男性はオペラ参謀と言われるパトリチェフ大尉(当時)です
 そしてこの二人に向かって詰問口調で話しかけているのは後にヤン艦隊の歩くお小言と恐れられるムライ中将なのです。
 
 この当時 ヤン提督は少佐 ムライ参謀は中佐でした
 ヤン提督の上位者としてのムライ参謀が写っている映像はこの一本きりであり歴史学者の間で騒がれております。
 
 タナトス警備管区司令官マシューソン准将が軍機違反を覚悟でこっそり撮り貯めていた
 司令官部屋のモニター映像の記録の中の一本にこのような貴重な記録が残されていたことに驚きを隠せません。
 
202 名前:名無しは無慈悲な夜の女王 投稿日:2005/11/06(日) 22:30:06
 ご覧ください。きわめて貴重な記録映像が発見されました。
 
 宇宙暦800年9月獅子帝ラインハルトがその生涯において芸術に興味をしめした時の記録映像です。
 猛将として名高いフリッツ・ヨーゼフ・ビッテンンフェルト上級大将を随行に古典バレエを観劇する獅子帝の姿が映っています。
 
 ご存知のとおり公式記録をのぞいて皇帝の記録映像は消去されますが、
 今回 会場の警備システムに未処理の記録映像が残されていたのです。
 
 熱心に観劇をする獅子帝の傍で、あくびを我慢しているビッテンフェルト上級大将の姿がよく映っています。
 皇帝の「芸術の秋」に側近達は内心頭をかかえていたという風評は事実だったようです。
 
205 名前:名無しは無慈悲な夜の女王 投稿日:2005/12/22(木) 10:50:16
 【オーディン21日】
 
 21日付の帝国紙デア・フェザーンによると、銀河帝国の獅子帝ラインハルトが描いた水彩画が、
 インターネット競売最大手企業のフェザァーン惑星内ページで、オークションに掛けられた。
 
 同紙によれば、19日から競売に付されている作品の1つは「幼年学校」というタイトルで、
 獅子帝ラインハルトの署名も書き添えられており、希少品として2億1000万帝国マルクの言い値を付けた。
 
 また、獅子帝ラインハルトの別の水彩画「薔薇の花」には、
 少なくとも250000件の入札があり、20日に4億5000万帝国マルク以上で売られたという。
 
 獅子帝ラインハルトが帝国軍幼年学校において美術の単位をとっていたことは有名な話。
 ところが、幼年学校の教師からは技術的には優れているが個性のきらめきも感受性の深みもないと酷評されていた。
 銀河帝国軍を率い、新帝国暦2年に宇宙を事実上統一した大英雄。
 獅子帝が描いた絵画やスケッチはほとんど残っていないが、芸術的価値はほとんどないと 専門家からは批評されている。
 人類史上最大の英雄の作品をオークションに掛けることは、帝室に対する配慮から主要な競売商からこれまで敬遠されていた。
 
 (新帝国通信) - 12月22日15時30分更新
 
214 名前:名無しは無慈悲な夜の女王 投稿日:2006/02/11(土) 02:03:41
 私は、父からは帝国のような貴族社会に生まれなくてよかった。フェザーン人で良かったんだぞ、と聞かされていた
 母からは、同盟のような不安定な社会に生まれなくてよかった、運が良いのよ、と聞かされて育った
 フェザーン人である事に幸せを感じていたし、誇りを持っていた
 そして、この幸せは永遠に続くと信じていた。今考えれば根拠はないが…
 
 あの日、久しぶりの休暇で妻と買物していた。子供はいないが、幸せだった。
 あの日までが、幸せの絶頂だったのだ。あの日、カフェで警報を聞くまでわ
 
 妻の機嫌が悪くなる前に、家に帰り、久しぶりな事をしようと思っていた
 突然のサイレンと公共モニターから帝国軍が進行して来ている事を伝えていたわけが分からなかった。
 ただ、家に帰ろうと、家に帰ることだけを考えていた
 
 幸い、私の住んでいる地区に直接的な侵攻はなく、
 朝になって、カフェに買物袋を忘れて来た事を思い出したときには、我が家も街も落ち着いているように見えた
 
 ――――――――――――――――――――――――旧フェザーンの貨物船員のメモより
 
217 名前:名無しは無慈悲な夜の女王 投稿日:2006/02/21(火) 20:56:50
 自由惑星同盟への死刑宣告 バーラト講和条約で巨額損害賠償
 
 宇宙暦799年5月25日、同盟最高評議会ビルの特別議場の外。
 帝国軍の士官たちが椅子やテーブルの上に乗って、強化ガラス越しに中をのぞき込もうとしている。
 ホールの中では同盟元首ヨブ・トリューニヒトが講和条約の署名と調印をはたそうとしているところである。(左上の写真)
 
 金色の表紙の条約書には、同盟が帝国の属領と化した事実を双方に確認されるものであり、
 同時に巨額の安全保障税を支払わねばならないものであった。
 (左下の写真は、この条約が運ばれているところ)。
 
 この条約により、同盟は領土の一部を割譲、同盟領内の自由航行権 戦艦および宇宙母艦の保有の放棄を強いられた。
 
 中略
 
 帝国は、同盟がこの条件をのまない場合は、全同盟領を占拠すると脅かした。
 結果、「バーラト講和条約」は、同盟議会で可決される。
 
 こうして銀河には、ようやく平和がもたらされたように見えた。 
 しかし、その後の歴史が物語っているように、実際の平和はまだ訪れてはいなかったのである。
 
          J・J・ピサドール「英雄的な歴史」より
 
218 名前:名無しは無慈悲な夜の女王 投稿日:2006/02/22(水) 00:19:23
 歴史に消えた美しき女スパイⅠ
 情報公開法により旧自由惑星同盟軍情報部のコンピューターから興味深い情報か発見されました。
 
 それは、自由惑星同盟を滅亡に導いた獅子帝ラインハルトのラグナロック作戦の原案ともいうべきデーターであり、
 作戦発動の一ヶ月以上も前入手されているにもかかわらずこの情報は信頼度レベルEとして処理されていました。
 
 ヤン・ウェンリー提督が事前に帝国軍のフェザーン侵攻計画を予測していたにもかかわらず、
 同盟軍の上層部はその可能性を否定して帝国軍の侵攻を許してしまいました。
 
 もし、この時この帝国からの情報によりヤン提督の進言にしたがいフェザーンを防御していたら
 歴史はどう変わっていたでしょうか?
 
 ハイネセンプラネットTVは、二夜にわたり帝都オーディンから貴重な軍事情報を送り続け、
 そして帝国軍がフェザーン侵攻をおこなった当日に帝都ヴァンセンヌの森で謎の死をとげた、
 美しき女スパイ、マルガレーテ・アイゼンエルツの生涯をお届けいたします。
 
219 名前:名無しは無慈悲な夜の女王 投稿日:2006/02/22(水) 10:54:32
 歴史に消えた美しき女スパイⅡ
 マルガレーテ・アイゼンエルツ(同盟軍情報部のコードネームはワイルド・スワン)
 元帝国宮内尚書アイゼンエルツ伯爵の庶子として帝国暦462年4月誕生しました。
 
 周知のとおりアイゼンエルツ伯爵は地方の一男爵でありながら妻をフリードリヒ四世に提供することにより
 宮内尚書と伯爵の地位えた人物です。
 その愛人の娘としてうまれた彼女は成長するとともに帝政にたいして強い不信感をいだき
 自ら自由惑星同盟軍情報部と接触して情報提供者となったのです。
 
 帝国暦482年から490年の間、提督たちのクラブ「ゼ・アドラー」の高級ホステスなった彼女は
 その美貌とグラマラスな肢体そして元宮内尚書の娘という肩書きを背景に
 複数の高級士官と親密な関係となり貴重な軍事情報を同盟軍に提供しました。
 一例をあげるならば486年の第3次ティアマト会戦における派遣される帝国軍の陣容の正確内訳がありました。
 
 これら貴重な軍事情報を提供してくれる彼女に対して
 同盟軍情報部は高く評価をして特A級の評価を与えていました。
 
220 名前:名無しは無慈悲な夜の女王 投稿日:2006/02/22(水) 10:56:09
 歴史に消えた美しき女スパイⅢ
 しかし、489年彼女の報告は微妙に変化をはじめます。
 
 彼女を監視かつサポートしていた人物からの報告によれば、
 リップシュタット戦役終結後情報収集活動の意欲が乏しくなり同盟軍と連絡を取ることを厭うようになりました。
 理由としては、彼女の憎しみの対象であった門閥貴族が滅びさったこと、
 一人の高級士官と深い親密な関係になったことが報告されています。
 
 そして、同年4月イゼルローン要塞強襲についてなんら報告がなかったことにより
 情報部は彼女に不信感をいだくようになりました。
 
221 名前:名無しは無慈悲な夜の女王 投稿日:2006/02/23(木) 22:09:14
 歴史に消えた美しき女スパイⅣ
 幼帝エルウィン・ヨーゼフ二世の亡命
 そして、ラインハルト・フォン・ローエングラム公爵の苛烈な宣戦布告
 
 帝国軍の軍事的脅威が高まったことを認識した同盟軍情報部は、彼女に軍事情報の入手を強要した指令文書が、
 先日 情報公開法により確認されました。
 それに対して、マルガレーテ・アイゼンエルツがどのように対応したかは、不明です。
 確かなのは、一枚の光ディスクが同盟軍情報部の元に届いたということです。
 
 しかしながら、その情報は情報分析官によりランクE評価を受けることになりました。
 理由としては、それまで彼女の情報に高い評価をあげていた担当者が左遷させられたこと
 情報部自体トリューニヒト政権による人事干渉により混乱していたことなどが考えられます。

 こうして、事前に獅子帝ライハルトのラグナロック作戦を入手しながら情報は闇に消えていったのです。
 
222 名前:名無しは無慈悲な夜の女王 投稿日:2006/02/25(土) 22:34:07
 歴史に消えた美しき女スパイⅤ 
 誰が、彼女を殺したのか
 後に多くのミステリー小説家の題材となった殺害犯人は今日なお不明です。
 
 同盟軍情報部が口封じに殺害した説
 彼女にふられた帝国軍の士官説
 情報を漏らしたした軍人説
 失態の漏洩をおそれたの帝国軍の防諜部説 そして、彼女の恋人説。

 彼女の遺体は、親族にひきとられることもなく無縁墓地に葬られました。
 帝国内務省警察総局より犯罪捜査の打切りが命じられていることも、様々な噂が語られています。
 
 こうして、20世紀の有名な女スパイ「マタ・ハリ」と同じ名をもつ一人の美しい女スパイは姿を消しました。
 もし、彼女の情報が正しく評価されていたら歴史はどう変わっていたでしょうか?  

 ハイネセンプラネットTV「if の歴史より」解説はK・MATUDAIRAでした。
 
223 名前: ◆aDTWOZfD3M 投稿日:2006/03/10(金) 20:04:02
 第二次ティアマト会戦は、同盟軍の歴史上屈指の名将と言われたブルース・アッシュビー提督最後の戦いとして知られています。
 これは、その様子を同盟軍の戦艦が撮影した大変貴重な映像です。

 「悪夢の中で怪物に追われている、そういう感じだった。
  私は戦艦シャー・アッバスのB04砲塔にいて、戦闘の前半でウラン238砲弾を撃ちつくしてしまい、
  後半を無力な傍観者としてすごした。
  
  前方のスクリーンで光と闇が踊りまわっていた。
  熱量計の針が一瞬の休みもなく左右にうごきまわり、すぐちかくで爆発がおこっていることがわかる。
  私はシートのなかでブラスターをいじくりまわしながら、つぎの戦闘のときにはもうすこし有効に砲弾を使おうと思っていた。
  
  ただし、次の戦闘というものが私のうえにおとずれるとは、むろん保証のかぎりではなかった。」
                同盟軍公戦史より
 
 この証言は、同盟軍最後の宇宙艦隊司令長官アレクサンドル・ビュコック元帥によるもので、
 その点でも歴史上貴重な証言と言われています。
 
225 名前: ◆aDTWOZfD3M 投稿日:2006/03/11(土) 17:39:45
 こちらの映像は、宇宙歴788年に撮影された、エル・ファシル中央宇宙港に設置された監視カメラの映像です。
 左端でサンドイッチらしきものをくわえながら、右側にいる下士官に指示を出しているのが、
 当時まだ無名だったヤン・ウェンリー提督です。
 
 このときいまだ中尉にすぎなかったヤン提督は、このエル・ファシル脱出行を成功させた事により
 「エル・ファシルの英雄」と呼ばれ、初めて歴史の表舞台に登場します。
 そのためこの映像は、無名時代の彼をとらえたほぼ唯一の映像とされています。
 
233 名前:名無しは無慈悲な夜の女王 投稿日:2006/04/30(日) 14:27:40
 こちらの映像は、新帝国暦003年5月14日、
 現皇帝アレクサンデル1世がお生まれになった直後のフェザーン医大付属病院産婦人科病棟の様子です。
 クラッカーが鳴らされ、シャンパンで乾杯を交わし、新帝国の世子誕生に浮き立つ様子が良くわかります。
 
 画面の右側では、上級大将の制服を着た煤で顔が黒く汚れた男性と、
 なぜか片頬にだけ煤がついた、小柄で黒い髪の若い女性が明るい音楽にあわせ、ダンスを踊っている様子が見られます。
 この男性は当時の憲兵総監で、現在はフェザーン大学総長であるウルリッヒ・ケスラー退役元帥、
 女性のほうは005年にケスラー総長と結婚したマリーカ夫人です。

 アレクサンデル皇帝の誕生の直前には、ラインハルト先帝とヒルデガルド皇太后の住まいであった柊館が
 地球教のテロ部隊に襲撃されるという事件(柊館炎上事件)がありました。
 この危機を救い、最終的にはノイエラントを含めた帝国全土にわたる治安維持組織を確立したのがこのケスラー退役元帥です。
 
 今日は、自由惑星同盟ではなく地球教というテロ組織と戦い、
 銀河に平和をもたらした憲兵隊の視点から、この激動の時代を振り返ります。
 
238 名前:名無しは無慈悲な灰色の女王 投稿日:2006/05/14(日) 19:31:58
 元銀河帝国宇宙艦隊総旗艦「ブリュンヒルト」。
 今も書類上は現役扱いのまま、キルヒアイス大公の「バルバロッサ」と並んで繋留され、
 内部は獅子帝ラインハルトの業績を記念する博物館となっています。
 
 その一角に、なぜか旧自由惑星同盟軍陸戦隊の装備品が展示されています。
 新帝国暦3年6月1日、この廊下で壮絶な白兵戦が展開されたのです。
 
 廊下の突き当たりに「シェーンコップの階段」があります。
 ここに座り、帝国兵たちを見下ろしたまま息を引き取ったと云われる一人の勇者。
 
 今日は彼が率いていた部隊、ゴールデンバウム時代の帝国から
 同盟へ亡命した人々によって編制された「薔薇の騎士」連隊の歴史をお送りします。
 
240 名前:名無しは無慈悲な夜の女王 投稿日:2006/05/22(月) 01:24:11
 これは第二次ランテマリオ会戦における黒色槍騎兵艦隊の旗艦、
 「ケーニヒス・ティーゲル」の艦橋内の映像です。
 画面中央、両腕を振り回して何か叫んでいる男が、艦隊指令のビッテンフェルト提督です。
 
 このとき、彼の艦隊は、ロイエンタール艦隊からの集中砲火を浴び、壊乱状態に陥りつつありました。
 黒色槍騎兵艦隊は突撃時の圧倒的な強さで知られていましたが、同時に守勢に弱いという弱点がありました。
 
 艦隊の危機を救ったのは、一人の幕僚の機転です。
 画面右下、通信オペレータの脇にいる一人の将校が、何かのスイッチを操作しています。
 黒色槍騎兵艦隊の副参謀長、オイゲン少将です。
 オイゲン少将が操作したのは、通信回線のスイッチで、
 全艦隊にビッテンフェルト提督の叫ぶ声が流されました。
 
 - 黒色槍騎兵艦隊の一艦長の独白 -
 我々の艦隊は集中攻撃を受け、大混乱に陥っていました。
 回頭して逃げようとして敵の砲撃の餌食になる艦、あわてて後退して僚艦と衝突する艦、
 とても艦隊と呼べるような状態ではなかったのです。
 そのとき、艦のスピーカーから、ものすごい怒鳴り声が聞こえてきたのです。
 
 「退く奴は、かまわん王虎の主砲で吹き飛ばしてやれ!」
 
 艦隊指令、ビッテンフェルト提督の声でした。私たちは震え上がりました。
 「あの方ならやりかねない・・・」その恐怖が、敵の砲撃の恐怖よりも勝っていたのです。
 それで、我々はなんとか踏みとどまり、艦隊は壊滅を免れました。
 
260 名前:名無しは無慈悲な夜の女王 投稿日:2006/09/06(水) 00:29:30
 工作兵が、機雷の信管を取りのぞいている際の映像です。
 
 #…、!
 
 一瞬、振り返った、この人物。
 後に銀河帝国の皇帝となる、ラインハルトです。
 
 こういった、平官時期のラインハルトの生活を記録した映像は、不敬であるととしてその大半が破棄されてしまいました。
 これは、それを免れた、貴重な映像です。
 
262 名前:名無しは無慈悲な夜の女王 投稿日:2006/09/09(土) 19:53:01
 第2章「ゴールデンバウム王朝・後半」
  貴族たちは、「金髪の小僧」にひれ伏した!

 #一見、貴族たちの抗争は、宮廷内に限られた話と思われがちです。
  しかしこの時代、その陰で多くの民衆がその無意味な政争に巻き込まれ、犠牲になっていました。
  これは、ゴールデンバウム朝の末期、ある惑星で撮影された映像です。
  この惑星は当時、ヴェスターラントと呼ばれていました。
 
  「その星の表面を見ると、異様な光景が広がっていた。それが、熱核兵器のせいだってのは、何となく分かった」
  「それは、私にとって決定的な出来事でした」
  「こんなことがここで起きてしまったということは、どこでも起こりうるということです。いずれは、私にも…」
 
 #銀河英雄伝説を「映像の20世紀」風に。
 
  今晩は、残された貴重な映像を中心に、ゴールデンバウム王朝の、末期の苦しみを眺めていきます。
 
266 名前:名無しは無慈悲な夜の女王 投稿日:2006/10/01(日) 10:42:14
 同盟はイゼルローン要塞を奪取した今、強国であり、その軍事力は我が国よりも互角である。
 しかし、帝国にあって同盟にはないものがある。
 長期戦に備えられるだけの広大な国土と莫大な人口、そして正義である。
 したがってこの戦争は三つの段階をたどる。
 
 第一段階
 同盟は奥地まで攻め入ってくるが、我が方の焦土戦によって経済的に行き詰るだろう。
 
 第二段階
 同盟は補給部隊を送って対抗するが、キルヒアイス艦隊によって拿捕されるであろう。
 
 そして第三段階
 十分な力を蓄えた我が方は、消耗した同盟を追い出し、戦争は終わるであろう。
  
 ――持久戦論より 
 パウル・フォン・オーベルシュタイン
 
267 名前:名無しは無慈悲な夜の女王 投稿日:2006/10/05(木) 05:58:20
 まずはこちらの映像をご覧下さい。
 これは旧帝国歴477年にオーディンにて行われた射撃大会の様子です。
 ご覧の通り、使用されているのは現行のレーザーライフルではなく火薬式のライフルです。
 これは当時の貴族社会における「決闘」に用いられた物で、
 それゆえ参加者達も貴族の面々ばかりなのですが・・・
 
 こちらをご覧下さい。右から2番目のブース、軍服姿の若者が映っています。
 彼はその素晴らしい射撃の腕前で、見事この大会に優勝します。
 美しい藤色の瞳、もうおわかりでしょう。彼の名はコルネリアス・ルッツ。
 後に獅子帝ラインハルトの旗のもと、宇宙を駆け回った名将の若き日の姿です。
 
 今晩は、かのルッツ提督が惑星ウルヴァシーにて最期を遂げるまでの栄光を辿る旅と参りましょう。
 
281 名前:名無しは無慈悲な夜の女王 投稿日:2006/11/26(日) 07:37:57
 同盟も決して誇れる状況ではなかったが、帝国の搾取を前提にした体制よりはマシであり、宣撫できると思っていた。
 
 だが、占領地で3つのことに驚かされた。
 
 まず第一に、彼らは帝国の圧制と搾取に慣れ切っていたのだ。「我々は解放軍である」。この言葉の意味を理解しなかった。
 そして第二に、「今度の『領主様』はどなた様か?」
 最後に、(これは驚くには値しないのだが)、食料を求めてきた。
 
 士官としてハイネセンの理念(自主・自立・自尊)をそれなりに信じて、
 禄を食んできた自分を恥ずかしいと思ったことは一度もなかったが、
 この状況で糧食の分配以上にできることはなにもなかった。
 
286 名前:名無しは無慈悲な夜の女王 投稿日:2006/12/27(水) 02:27:15
 占領された、ハイネセンの映像です。
 
 あまりにも整然とした占領に、ハイネセン市民は、敗戦を忘れるほどでした。
 
「帝国軍の連中と言えば、話し掛けても、いいやつばかだ。
 普通なら上官に話が行くにつれあれやこれやで話が通じなくなるもんだが、
 奴らの世界では逆で、上に行けば行くほど話が早かったよ。
 それは、同盟でカタギの商売をしていた私らにとっては願ってもないことで。
 これはこのラインハルト皇帝は、たいしたところまで行くんではないかと思いましたね。
 
 なんせ、今まで散々国家のためだとか民主主義のためだとかで、
 政治家やら顔役やら、私らにとってはゴロツキにしか見えない連中に、商売を邪魔されてきたんですが、
 それが一気になくなって、やりたいようにできるようになったわけですから。
 皇帝バンザイ、てなもんです。
 
 ただ気になるは、イッヒとか、リーベとか、カイザーとか、帝国兵士の話口調が馬のいななきみたいで、
 それが耳につくってことぐらいですかね」
 
 ※占領初期の段階で、ラインハルトの統治は申し分の無いものと評価されていました。