思い出の作品達 百十回 「オウガバトル64」

オウガバトル64

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 久々に思い入れのあるゲームを語ってみる。
 オウガバトルサーガ、現在最新作……いやまぁ、8年前の作品なんだけどさ。
 任天堂ならば新作を出してくれると信じている、松野も移籍したらしいし、モノリスソフト買い取った訳だしさ。
 
 さて、本作は「伝説のオウガバトル」に端を発するオウガバトルシリーズの正統な続編とも言うべき作品。
 リアルタイムでのユニット操作とシンボルエンカウントによる戦闘(非正規集団とのランダムエンカウント?もあるが)、広大なマップに点在する占領された都市を開放・制圧してゆく副目的/中心都市に待ち受けるボスを倒してマップ全体を開放する主目的(そして、その際に開放したか占領したかで上下する隠しパラメータ『カオスフレーム』によって分岐するエンディング)、都市の開放/制圧やユニットのクラスチェンジに大きく影響を与える可変性アラインメントと戦闘において与ダメージ/被ダメージに関係する属性、民族的対立や門地的差別を主軸に独自の神話を絡めて描かれるシナリオ、オーケストラ調の壮大な楽曲……正に『オウガバトル』と呼べる代物に仕上がっている。松野氏らメインスタッフが移籍した等、かなり負の要素が強かった割に頑張ったと褒められる作品だろう。(構想は移籍前にあったらしいし、オウガバトルサーガの世界観の設定は「伝説のオウガバトル」を作った際に様々な作品へ流用出来るよう体系化してあったらしいが。)
 シナリオは時間的には「タクティクスオウガ」とほぼ平行、「伝説のオウガバトル」から幾らか時間が経った後といった感じ。「伝説のオウガバトル」の主人公らが参戦したり「タクティクスオウガ」について触れられる会話があったりとシリーズファンならばニヤリとする要素がそこはかとなく散りばめられている。
 
 俺と言えば「タクティクスオウガ」から本シリーズにはまった口なので、初プレイ時はリアルタイムの操作での進軍や戦場の把握について勝手がつかめず苦戦したり、カオスフレームが存在する事を知らずに力押しプレイしていたらバッドエンド直行したりと、中々に最初は厳しかった思い出がある。尤も、定石の幾つかを身につけた上で再度プレイしてちゃんと羅陵王マグナスにまで至ったけどな。
 
 感想としては新システムであるレギオン(五個部隊を一つの軍団として纏め上げ、進撃させるシステム。主人公らを含む一部のクラスにしか率いる事が出来ない。)が今一つ役に立たない代物だったり、結局は死神ユニットによる駆逐とアラインメントを調整したユニットによる開放(或いは制圧)の繰り返しという作業に辿り着く点であったりと、作品としては『伝説のオウガバトル』の正統な続編であって進化している感がない事が惜しまれる。『伝説のオウガバトル』において家庭用ゲーム機におけるリアルタイムシミュレーション・RPGという分野を大きく広げ、『タクティクスオウガ』においてはシミュレーションRPGに三次元とウェイトターンというシステムを持ち込んでその後のシステム・テンプレートの一つとなるまで爆発的な影響を与えた本シリーズとしては、本作は余りに凡庸と言わざるを得ない。あくまで『続編』の枠に縛られすぎている様な、そんな感じ。実際、世間の評価でも『松野氏が関わっていない点』のみを大きく取り上げられたのみで、その他は話題になる事も無かった辺りに(当時、既にPSに大きく市場を奪われたN64での発売と言えども)本作の影響力の無さを示していると言えるかも知れない。というか、ストーリー分岐やエンディング分岐が前々作より減ってどうするよ。
 ただし、本来『誰でもファンタジーRPGを作れるようなテンプレート』として「オウガバトルサーガ」を設定した松野氏の理念から言えば、彼が抜けた後でもちゃんと『オウガ』と言える作品がこうして発売されていたという事実はある意味成功した作品なのかもしれない。独特の世界観と民族や門地による対立、その裏で蠢く陰謀、結果訪れる悲劇と最後の最後で現れる凶悪なまでの敵、そしてそれまでの行動によって分岐するその後の歴史など、確かに(あくまでシナリオ面ではあるが)要素を取り出してみると『オウガバトル』している。惜しむらくは一から作り上げた前々作やそれを越えるべく新たな挑戦をした前作に比べ、余りにも前々作を踏襲しすぎたが故に結局再生産に止まってしまった点だろうか。
 
 万民にはお勧め出来ないが、シリーズファンにならばお勧め出来る。
 ただし、「伝説のオウガバトル」に思い入れが強い人は購入に当って一考する必要があるかもしれない。そんな作品。
 (多分、俺が楽しめたのはその時点で「伝説のオウガバトル」を未プレイだったという点が大きいと思うし。)