思い出の作品達 第百四十三回 「ヴァルキリープロファイル」

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ヴァルキリープロファイル(通常版)
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 完成品で市場に送り出してほしかった作品。いやまぁ、トライエースの手掛けた作品って今の今までそんなのばっかりの様な気がしなくもないが。
 ……2はどうだったんだろうと気になって調べてみたが、評価の割れ加減は相変わらずの感じ。(割れた理由は真逆であるが。)
 
 「スターオーシャン」シリーズにて株を上げたトライエースが、SO2の後に新たに立ち上げたRPGシリーズ。
 北欧神話を軸にした幾重にも伏線を張り巡らせたストーリーと緻密で幻想的な筆致で織り成される終末的雰囲気漂う世界観。
 豪華な配役が用意されたキャラクターボイスや事ある毎に表示される華麗なグラフィック。
 未完成ながら独特なシステムによって描かれる迫力あるバトル、或いは『神々の黄昏』を巡る各陣営の思惑。
 そして、相変わらず舞台を盛り上げまくる『桜庭』サウンドの数々。
 
 よく言えばハードゲーマーにのみ購買層を絞った外角低目へのド直球、敢えて言うなら中二病大全開。
 はっきりいって大多数のゲーマーに本作を薦められるかと問われれば否と答えるだろうし、ある程度RPGの類をやり込んでいるような人間に薦める際でも『時間が有り余っていない限り、攻略本片手でプレイする事』を伝えざるを得ないだろう。時間と意欲が有り余っていて、且つ痛いほどの展開をこそ素直に感動出来る、そんな層にのみ全力でお勧め出来る作品。だからこそ、今尚記憶に残っているのだろう。
 
 ストーリーとしては前述の通り、北欧神話を基底に現代風のアレンジを加えた相関関係を敷き直し、『生命の尊厳』であったり『神々と人間』であったりを軸にしたドラマを散りばめた作りとなっている。展開としては自分で操作が必要であり、物語の主な部分の進行に関わり深いRPGパート/大半は個々の登場人物の独立エピソード描写だが一部で物語の核心を司るADVパートとSLGパートの三種類が存在しており、基本的にはプレイヤーの判断による自由な裁量でイベントの発生/選択が可能となっているが、真のエンディング(Aエンディング)へ至る為には守らなければならない一定の手順が存在している、そして何も考えずにプレイしていたら……まぁ、非常に辿り着くのは困難だろう。よくてB End、手順をミスるか捻くれたプレイをしていればC Endに至るだろうし。というか、ノーヒントで一周目A Endは絶対に変態だ。
 基本的にはRPGパートにてイベントの探索(ワールドマップで□ボタン)を行い、発生したイベント/ダンジョンへ向かう。イベントは概ね個々の登場人物の死に様を見せ付けられる展開となっており、大体にして前述の通り独立している様に見えるのだが、意外に伏線が張り巡らされていたりする……初見で全て気付けたら変人なぐらいに。ダンジョンは本編に関わりがあるものと、単純にキャラクターの強化/アイテムの回収のみを目的としたものの二種類があり、何だかんだでクリアを目指す場合は回れるだけ回っておくといい感じ。一部、回っていないとフラグが潰れてA End不可になるし。また、システム上ダンジョン内で発見したアイテムの一部は神界に返還する様に要求される。断って己の懐に入れる事も可能だが、ちょっとしたペナルティが発生するので後でちゃんとフォローする必要がある。
 また、自動展開されるSLG風な神界パートの為に神界へキャラクターを転送(本編内で二度と使用不可になる)する必要があり、ここでもとある手順を逃すとA Endへ辿り着けなくなったりする。また、最低限必要な員数を送るのが効率としては正しいのだが、神界へ送ったキャラクターとその能力値/適正値に応じてちょっとしたイベントが発生したりしなかったりするので、適当に送っていても普通にそこそこ遊べる仕様となっている。これは元来「作品世界内における正史としてのA Endルート」「ゲームとして楽しめる要素を詰め込むはずだったB Endルート」「ペナルティのC End」の三種類を揃えて世に出される予定だった為であり、SLG風な神界パートも本来は完全にSLGとして活きる仕様だったらしい。様々に細かいエピソードが仕込まれているのもその名残、といったところだろうか。因みにこの転送作業を余りにサボっているとC Endに到達してしまうので注意。
 
 システムとしては『格闘ゲーム風なターン制バトルシステム』であったり、前述の『神界転送』に纏わる一連のシステムであったりが本作独特のモノであるだろう。前者は単独では単にアクション要素の強い戦闘システムに過ぎないが、本作の余りに尖ったバランス調整を最大限に活かす事によって難易度が激変するやり込み性の高いアクの強さを秘めている。コンボ回数、属性関係、性能の強弱……そういった諸々の要素を組み合わせて最適なものを選び出す、プレイヤー側の裁量を広く求めた代物となっており、製作者の狙いを正確に掴んでいく事が重要となる。
 製作者の狙いを掴む、という事で言えば戦闘以上に重要なのが『神界転送』関連のシステム/イベントであり、Normal以上の難易度でプレイする際にはこのシステムを完全に使いこなし、裏をかく〜というか、製作者の真の意図を見抜く〜必要がある。というか、そうしないとA Endに至れない。例えば、キャラクターを育成する際に戦闘関連能力と共に『何故か』性格を変動させる項目が存在したり、或いはヴァルキリーにのみ『何故か』封印値という特別ステータスが存在していたり、その他プレイしていて疑問に感じる要素や展開/台詞回しが仕掛けられており、それらを随時回収し/推理し/理解する事によって初めて、本作の真の物語へ至ることが出来る……まぁ、上でも述べたように攻略本無くしては複数周プレイを前提となる構成となっている。これは例えるならば製作者からの挑戦状であり、例えるならば正解率1%ぐらいのアレである。まともにミスリードに引っかかる初回プレイでは絶対にA Endに至れないとか、まさにそんな感じ。神々の視点で語られていく本作冒頭の物語を否定して、初めて真の姿が現れてゆく……これ、自力で気付けたら凄く感動出来たんじゃなかろうか。
 
 兎にも角にも大作RPGに恥じない、様々に意欲的な仕掛けや凶悪な展開を仕込まれた鬼作/怪作。
 多少のとっつき難さを抜きにしても、事前情報無しで頑張って欲しい作品だし、攻略情報持ちでも十二分に楽しめる要素は備わっている。