【勝手に】銀河英雄伝説IF物語【妄想】@SF・FT・ホラー 適当にまとめ 〜短編集〜 Vol.1
短編/小ネタ集
293 名前:名無しは無慈悲な夜の女王 投稿日:04/06/07 13:01
「今、何といいました、ブラッケ教授」
赤毛の上級大将の言葉はいつものように穏やかだったが、警戒と怒りを隠しきれていなかった。
「ローエングラム公の救援に行かれますなと申し上げました」
キルヒアイスには彼の真意が理解できなかった。
いや、彼がそのようなことを進言してくる理由に心当たりはあったが、
そこに考えを至らすには抵抗があったのだ。
「それは・・・どういうことです。貴方は何が言いたいのですか」
「ジークフリード・ファン・キルヒアイス上級大将、貴官の功績は偉大だ。
先の戦役において50数度に渡る辺境の戦いにことごとく勝利し、民衆に自治を与え、罪なき政治犯達を釈放した。
そしてローエングラム公に、いや来るべきローエングラム王朝に民衆の絶大なる支持という基礎を与えた。
なるほど、確かに貴族連合との戦いに勝利という点においては貴官の功績はガイエスブルクを攻略したローエングラム公に劣るかも知れない。
しかし民衆を解放したのは間違いなく貴官だ。貴官はこのことについて御自身でどのように評価しておられるのか」
294 名前:名無しは無慈悲な夜の女王 投稿日:04/06/07 13:08
キルヒアイスは警戒せずにいられなかった。
公職を辞してからさらに伸びた彼の口髭は、相手に口の動きを見せずに喋らせることを可能にしたようだった。
薄暗い帝都防衛司令官執務室の中で抑揚を殆どつけずに語りかける彼の言葉にキルヒアイスは息苦しささえ感じた。
「そのようなことを・・・。リップシュタット戦役において、私は一介の艦隊司令官としてローエングラム公の命に従い行動したまでです。
よって私の功績は全てローエングラム公に帰せられるべきものであり、そのことによって私ひとりがローエングラム公を差し置いて評価される言われはありません。
面会はもう終わりですブラッケ教授。もうお下がりなさい。私は救援艦隊の指揮を執らねばなりません」
キルヒアイスは秘書室へとつながる回線を開こうと机上のコンソールに手を伸ばした。
「お待ち下さいキルヒアイス上級大将。私の話しには続きがあります。
貴官は現在の地位に満足しておいでなのですか。一生をローエングラム公の下で過ごされるおつもりですか。
いや、疎まれた今となっては栄達も望めますまい。貴官は本当にそれで満足なのですか」
「同じようなことを言ってきた輩はこれまで何人もいました。貴方は彼らの末路をご存知なのですか」
「知っていますとも、貴官に近づくものは全てあのラング、私とリヒターを罷免させたあのラングに捕らわれ始末されました。
そしてこの部屋に内国安全保障局と名前を変えた治安維持局が盗聴器を仕掛けていることもね。貴官も既に気づいておられるはずだ。
これが貴官の現在の立場だ。ローエングラム体制樹立に最も功績がありながら冷遇され、危険視され監視される。
かつては比類なき信頼をよせた親友であるにも関わらずだ。
私は賭けているのですよ、今この部屋の中でね。私は賭けているのですよ貴官に、そしてこの帝国を、今まさにこの時に」
295 名前:名無しは無慈悲な夜の女王 投稿日:04/06/07 13:10
ブラッケの口調は次第に熱を帯びて口髭がカサカサと動いた。
「貴方は私を勘違いされているようだ。私には野心はない。
もう少し情勢が落ち着いたら退役しようとすら考えています。私を煽動しようとする貴方の努力は残念ながら無駄でした。
貴方のような方がこの帝国から消えるのは残念ですが、こうなっては致しかないでしょう」
キルヒアイスは視線を机上に落とそうとして、不自然にコンソールの上で留まっている自分の腕が目に入った。
この部屋で職務を執るようになる以前には、彼のコンソールの隣には何時だって、例え遠征艦隊の司令官室においてさえ、遠い昔に採った一枚の写真が建ててあったが、彼が最も敬愛した女性が亡くなってからは置いていない。
「なるほど確かに貴官には野心がない。
なればこそです。なればこそ次の時代の帝国には貴官が相応しい、
貴官はローエングラム公に劣らぬ用兵家としての手腕、政治家としての才覚、そしてそれ以上の人格を持っていられる。
やはり野心を刺激して貴官を説得するのは無理だったようです。言っておきますが、私は今日まで貴官に近づいた誰とも違う。
私をみてください、これまで貴官に近づいた者は一体誰ですか。私は彼らとは違います、私と彼らを比べてみてください。
私は門閥貴族の出自ではありません、私は子爵家の出自でありながら自ら貴族の称号を捨てました。
私はかつてのような貴族の専横を求めていません。私は貴族の専横に対していつも戦いを挑んできました。
ジークフリード・キルヒアイス、貴官は私と彼らのどちら側の人間ですか。貴官にはそれがお分かりのはずだ。
ジークフリード・フォン・キルヒアイス、ローエングラム公は私と彼らのどちら側の人間ですか。貴官はそれもお分かりのはずだ」
296 名前:名無しは無慈悲な夜の女王 投稿日:04/06/07 13:15
ブラッケは先ほど打って変わって静かに語り続けた。
「ローエングラム公は皇帝と貴族たちに虐げられている民衆のために
兵を起こされました。ローエングラム公は常に民衆の味方です」
幾度となく心の中で繰り返したその言葉は、口に出してみると思いのほか無力さに溢れているように感じられた。
キルヒアイスは視線を落としままそう答えると、コンソールの隣に存在するはずだった、いやかつては存在した写真を思い浮かべようとした。
数え切れないくらい幾たびも、計りきれないくらい多く時間を費やして脳裏に焼き付けたはずのその情景は、何故か2人の顔の輪郭だけがぼやけていた。
彼女はあれほど微笑んでいるのに。
297 名前:名無しは無慈悲な夜の女王 投稿日:04/06/07 13:18
「それは違うジークフリード・フォン・キルヒアイス。この貴官の歪な新しい名がそれを証明している。
確かにローエングラム公は民衆を苦役から解放し、無能貴族たちを放伐し、軍と政府から汚職を追放しました。
しかしそれだけです。名君と呼ばれるに値しても帝国の新しい時代を築く人物であるべきではないのです。
名君と呼ばれる皇帝は晴眼帝をはじめゴールデンバウム朝においても存在しました。
しかし彼らは後世に何を残せたでしょうか。彼らが行った良き政治は3代と続きませんでした。
彼が為したことといえば、結局のところゴールデンバウム王朝を延命させたことだけです。
ただそれだけなのです。その末路が先年までのノイエ・サン・スーシです。倦怠と怠惰と頽廃に満ち溢れたフリードリッヒ4世の治世です。
ヴェスターラントをご覧なさい、数百万の骸が未だに地表で朽ちています。
これがローエングラム公の政治です。自らの野心のためには如何なる民衆の犠牲も厭わない政治、ゴールデンバウム朝の政治と何処が違いますか。
貴官が自治を与えた民衆はどうなりましたか、今では自治を奪われて中心となったものたちは内国安全保障局に捕らわれています。
批判するものを許さず秘密警察をもって弾圧する政治。ゴールデンバウム王朝の恐怖政治と何処が違いますか。
貴官の歪な名を御覧なさい。功績のある者に特権を与えてその子孫に繁栄を約束する政治、かつてルドルフ大帝が行ったことと何処が違いますか。
なるほど確かに貴族の地位は低くなったかも知れません。しかしゴールデンバウム開闢の頃の貴族も大して権力を持っていませんでした。
500年後にはキルヒアイスの名はかつてのブラウンシュバイクのようになっていることでしょう。
オーベルシュタインが進めるローエングラム公の花嫁選びをご覧下さい。
何とリヒテンラーデ侯の娘が、フリードリッヒ4世の孫娘が最有力候補ではありませんか。これはゴールデンバウム朝の存続以外の何を意味するというのです。
そうです、ローエングラム公はゴールデンバウム朝という腐った酒を残そうとしているのです。皮袋だけ変えてね」
298 名前:名無しは無慈悲な夜の女王 投稿日:04/06/07 13:19
ブラッケは再び捲くし立てた。気づかないうちにキルヒアイスは彼を直視しおり、緩急のついた彼の言葉はキルヒアイスの胸を灰色の薄い膜で覆いつつあった。
この膜の正体は計りかねたが、それがひどく怖ろしいものであることだけは十二分に分かった。
「あなたは何を私に求めているのです」
「ジークフリード・キルヒアイス、次の時代の帝国が必要とする政治はローエングラム公のもとにはありません。
ただ貴方のもとのみにあるのです。立ち上がりなさい、新しい時代のために、帝国250億の民衆のために」
「つまり私に帝国を・・・いや帝政を滅ぼせと」
「そうです、銀河の次の覇者は貴方です」
キルヒアイスの胸を完全に覆ってしまった灰色の膜は、次第に厚く層を形成しつつあったが、
未だにその正体はしかとは解らなかった。
再びあの日の情景を思い浮かべてみると、さらに遠く感じられた。
まるでそれがもはや手の届かない場所へ去ってしまったように・・・。
しかし彼女の笑顔だけは何故あれほど鮮明なのだろうか。
379 名前:名無しは無慈悲な夜の女王 投稿日:04/06/12 19:45
(゚∀゚)銀英伝が「美味しんぼ」風に進行したら。アスターテ編
◆同盟軍究極の戦術「伝説の包囲網」
パエッタ 「どうだヤン。同盟の英雄、リン・パオとユースフ・トバロウルの合作。
ダゴン星域会戦を模した我が軍の包囲網はっ!!」
パストーレ「素晴らしいもんや。あっさりとしていながら、実に重厚な包囲網。これは一本とられたわ」
ムーア 「ケケケー。しかも敵の軍に比べ量も2倍。今回は同盟軍の圧勝ですねー♪」
ヤン 「・・・・・・・・・・・・」
ラオ 「?」
ラインハルト「こんな戦術を取るとは・・・究極の戦術とやらが聞いて呆れる」
パエッタ 「なっ、なんだと? 貴様に戦術の何がわかる!?」
ラインハルト「キルヒアイス。至高の戦術を・・・」
キルヒアイス「はい。ラインハルト様」
同盟軍諸提督「なにっ、バカなっ!!」
ヤン 「(やはり、これか・・・さすがだ・・・ローエングラム伯)」
至高の戦術「各個撃破」。
467 名前:名無しは無慈悲な夜の女王 投稿日:04/06/15 20:27
じゃ、ヤンが大貴族に生まれたと仮定しよう。それもブラウンシュヴァイク本家に。
歴史が好きで帝政に懐疑的と、一族から煙たげられているんだけど、戦場に出るとかなりの功績をあげるもんで、どう取り扱ったらいいか分からないので変人扱いを受けているヤン。そんなのが想像できた。
468 名前:名無しは無慈悲な夜の女王 投稿日:04/06/15 20:31
貴族になったら食うに困らないから引きこもって金にもならない歴史書を書いて一生を終えたでしょうよ
「毒にもクスリにもならない」「会ったことがない」とゴシップにすらならん人畜無害な存在になる悪寒
469 名前:名無しは無慈悲な夜の女王 投稿日:04/06/15 21:00
西欧式エリート(貴族)ならば、軍隊に行くのは当たり前。
ヤンならば案外提督まで出世したら退役して領地に戻り、年金を貰いながら疑似民主制をやるかも。
平民から選挙で選ばれた人間を家臣に選んで、平民自治による行政を任せる。
そして自身は、自分の本業と思う歴史の研究と歴史書執筆。そんな彼にも転機が…。
ある日彼は、大学への進学を志ながら両親を亡くした理知的な平民の娘に出会う。
名前はフレデリカと言う。弟ユリアンと暮らす彼女に、ヤンは学資支援を申し出る。
彼女フレデリカの大学進学を応援し、相変わらず領地の平民自治支援と執筆を続けるヤン。
卒業したフレデリカは迷わずヤンと結婚し、同時に彼女の弟ユリアンも引き取る。
そして、三人の楽しい生活は始まったが、ヤンを妬む門閥貴族達が…。
470 名前:名無しは無慈悲な夜の女王 投稿日:04/06/15 21:23
盛り上がっているようだけどヤンが貴族であるなら
ゲルマン風のかっこいい名前をつけてあげないと。そのままじゃまずいでしょう。
476 名前:名無しは無慈悲な夜の女王 投稿日:04/06/15 22:19
(゚∀゚)
貴族に生まれたヤン。やっぱり歴史好き。
親が事故死、借金のかたに屋敷をとられ無一文になってしまう。
しょうがなく親類の貴族にやっかいになる。
だが物好きな貴族の娘がヤンを気にいってしまい、ヤンと仲良くなってしまう。
これは、いかん。・・・とばかり親類の怒りをかい、軍隊に無理やり入れられ最前線へ。
そこでオスカー・フォン・ロイエンタールとウォルフガング・ミッターマイヤーに出会う。
477 名前:名無しは無慈悲な夜の女王 投稿日:04/06/15 23:08
すると、ミッターマイヤーの機動性とロイエンタールの頭脳戦を利用できるな。
と、心なく自由な戦略を空想する作戦参謀ヤン。
478 名前:名無しは無慈悲な夜の女王 投稿日:04/06/15 23:38
(゚∀゚)
イゼルローンで起こった事件を解決したとき、
「下級貴族で女たらしの中尉」と
「かたぶつの平民中尉」と
「ぼんぼんのおのぼり少尉」は胸襟を開いて語り合う仲になった。
軍部はこの三人を組まして戦わせるようになった。
ミッターマイヤーの迅速さに呼応できるのは、ロイエンタールとヤンだけであり、ロイエンタールの巧緻さに匹敵するのは、ヤンとミッターマイヤーだけであり、ヤンの知略を戦場において完璧に具象化できるのは、ミッターマイヤーとロイエンタールだけだった。
本来、かたぶつのミッターマイヤーが、女たらしのロイエンタールと仲良くなる要素は少なかったのだが、ヤンの柔和な性格と言動が、三人をより強固に結びつける要因となった。
479 名前:名無しは無慈悲な夜の女王 投稿日:04/06/15 23:45
「おい、ロイエンタール。」
「なんだ、ミッターマイヤー?」
「今度、赴任してきたあの参謀をどう思う?」
「あの参謀・・・・、ああ、あの古本屋の3代目のような容姿の作戦参謀殿のことか?」
「ああ、そうだ。」
「どうだ、といわれてもな。まだあの男の立案した作戦を見たこともないしな。
何ともいえんよ。せいぜい貴族の出と言うことが名前で分かるぐらいか。卿は何かしっているのか?」
「いや、俺も特に知っているというわけではないのだが、
あの参謀、司令官に『何もするな。』と言われたから本当に、寝るか歴史書を読むかしていないらしい。
今までにボンクラの貴族を何人も見てきたが何もするなと言われて本当に何もしなかったのは初めて聞いてな。
それで多少興味がわいたんだ。」
「なるほど。確かに『多少』は興味がわくな。
といってもあまりに暇だったのでちょっとしたことでも興味がわいているだけなのかもしれないが。
しかし、あの参謀。単に今までのボンクラ貴族に輪をかけたボンクラなのか?それとも大物なのか。
ふむ、どうだミッタマイヤー、460年モノの赤ワインをかけてかけてみないか?」
むぅ、ダメダメのできだ。もっと妄想力を働かせてくる。
480 名前:名無しは無慈悲な夜の女王 投稿日:04/06/15 23:46
帝国側で産まれたヤンなら、喜んでラインハルトに賛同するだろうな。
ヤンなら同盟の存在をどう考えたかな?
帝国体制のアンチテーゼに必要不可欠な存在として、侵攻は反対だろう。
すると、ラインハルトには嫌われるな…。
481 名前:名無しは無慈悲な夜の女王 投稿日:04/06/15 23:50
現在の安定した体制を「次善」とし、
ラインハルトによる宇宙統一を、過去の歴史から
「悲劇の端緒」として否定するヤン。
ラインハルトと袂を別ったヤンは、軍才を買われ貴族連合の雇われ大将となる。
そして両者は、リップシュタット戦役で激突する・・・
482 名前:名無しは無慈悲な夜の女王 投稿日:04/06/15 23:54
そして、その後は同盟に亡命…。
それじゃ、メルカッツ提督…。うーん。
483 名前:名無しは無慈悲な夜の女王 投稿日:04/06/15 23:55
(゚∀゚)
ある日、ミッターマイヤーはエヴァンゼリンに結婚を申し込もうとした。
誰に相談しよう?
だが、よき相談役となるはずのヤン青年は、前線から武勲をあげて帰ってきたのに、恋人がすでにヤンよりも外見も家柄もよい貴族と結婚していたことを知って傷心中であり、ロイエンタールはロイエンタールで漁色家としての道をばく進していたから、勢い余った彼は黄色の薔薇を買って求婚することになった。
484 名前:名無しは無慈悲な夜の女王 投稿日:04/06/16 00:00
ラインハルトが同盟侵攻を仕掛ける前に退役し、自分の領地で民主制を実現…。
それが妥当かな。同盟が、帝国のアンチテーゼではなくなる。
その後は、立憲君主国家の青写真を描いて議会を設立。
皇帝の非常大権を残しつつも機能する議会。
486 名前:名無しは無慈悲な夜の女王 投稿日:04/06/16 00:17
(゚∀゚)
ミッターマイヤーの結婚式。
ロイエンタールはさっさと引き上げたため、ヤンもつきあって退出した。
その夜、酒によったロイエンタールはヤン相手に自分の過去を暴露した。
「ミッターマイヤーが結婚したというのに・・・俺は祝福の言葉が言えない。・・・情けない話だがな」
ヤンは黙ってロイエンタールのグラスに酒を注いだ。
翌朝、ロイエンタールは今まで経験したことが無いような酷い二日酔いに悩んだ。
が、ヤンはもっとひどく、ほんとに死んだようにベットから起き上がれないでいる。
・・・おれは幸福かもしれんな。
手本となるような友がいる。その男は時に眩しい。
それに反する自分がいる。だが、眩しい光をやわらげるカーテンのような友もいる。
案外、俺は幸福な男なのかもしれない。
二人の得がたい親友をもったのだからな。ロイエンタールは思った。
504 名前:名無しは無慈悲な夜の女王 投稿日:04/06/17 00:14
(゚∀゚) ヤンが帝国に貴族として生まれていたら(続き)
それからロイエンタールは、ヤンという青年を注意して観察するようになった。
今まで、軍略家としての才能はともかく、一人の男としては、
大貴族の出身のわりには善良な人間・・・という以外にはとりえのない男と見ていた。
ヤンは他人や時代に流されるタイプの人間だ・・・ロイエンタールはそう思っていた。
ヤンは大貴族の出身ではあるが、領地や屋敷はすべて親類筋に強奪されたも同然で、
軍隊に入ったのも他人からの強制であり、身の置き場がないから、軍隊に入っているにすぎない。
ロイエンタールのような男にとって、ヤンが軟弱に見えたとしても仕方がないところであろう。
だが、運命に流されるだけの男以上のものを感じたように金銀妖眼の青年には思えた。
それは最初、漠然として感覚的に感じた予感程度のものだったが、月日がたつごとに、それは確信に近いものとなっていった。
730 名前:名無しは無慈悲な夜の女王 投稿日:04/07/08 22:01
「閣下」
ノックもせずに、すべるように入室してきたのはベイだ。
トリューニヒトはいかにも不愉快そうな顔をしてみせたが、
この厚顔な男はそれに動じたそぶりはみせない。
以前、クーデター派の中から情報をよこした功績で将官にまでのぼったが、
それ以来、彼の役にたっているわけではない。そろそろ潮時かもしれない。
「新要塞に潜入させた部下から、報告がありました。
やはりヤンは要塞の機能について報告をふせていたようです」
ベイはトリュー二ヒトのそばに寄り、顔を近づけていった。彼の体臭がのぼってくる。
さらに不愉快だった。だが、その言葉は、離れることのできないものだった。
「部下の報告によれば」
ベイは言葉を切った。一呼吸おいて続ける。
「要塞はロボットに変形します」
一刻の猶予もならなかった。
顔のデザインを、ヨブ・トリューニヒトのそれに
変えるべきであった。
12 名前:名無しは無慈悲な夜の女王 投稿日:04/07/22 02:19
「回廊の戦い」の後、ヤンが暗殺されなかったらのIF。
どんな感じになるかなあ。
盛り上げる所が、色目の叛乱始末くらいしか無いような…。
13 名前:名無しは無慈悲な夜の女王 投稿日:04/07/22 06:23
まずラインハルトとヤンの二度目の会見があるわな。
ユリアン相手の時よりも穏やかにコトは進むだろう。
14 名前:名無しは無慈悲な夜の女王 投稿日:04/07/22 19:24
ラインハルトの死後がメインになるとか。
状況にもよるけどヤンが活躍するとしたどう出るか。
15 名前:名無しは無慈悲な夜の女王 投稿日:04/07/22 20:20
茶坊主帝国元帥としてラインハルトの話相手をするヤンとか。
もはや戦争も無く、平和な時が過ぎ
16 名前:名無しは無慈悲な夜の女王 投稿日:04/07/22 21:28
「護民官」に就任するヤン・ウェンリー。
皇帝は、彼と職務上の話がこじれると、戦略シミュレーションで決着を付ける事を常としていた。ちなみに、皇帝の勝率、通算で2割程度。
「皇帝病」の発病による、死を目前とした状況においても、護民官に対し「頼む、もう一勝負だ」と明るい笑顔で言い放ち、周囲の嗚咽を誘ったという。
尚、護民官は、一切手加減せず叩きのめした。
132 名前:名無しは無慈悲な夜の女王 投稿日:04/09/01 08:45
んじゃ、ラインハルトとヤンの立場逆転IF一発ネタ。
家族の事情は変わらず生まれるサイドが逆だったら。
同盟政府の無能・愚劣さがなんらかの原因となって
最愛の姉と親友を失っている、野心に満ちた同盟軍の英雄ラインハルト。
イゼルローン艦隊司令官として仲間達と共に機を伺っていたが、
救国軍事会議軍のクーデターで、一気に同盟の掌握にかかる。
一方、帝国では貴族連合軍との戦いにおいて、ある士官学校同期三羽烏が
ずば抜けた頭角を現そうとしていた。ロイエンタール、ミッターマイヤー、
ヤン・ウェンリー。彼らの狙いは、現ゴールデンバウム王朝の打倒と
帝国における共和主義的政府の確立という巨大な改革の実現にあった。
んで、その後はラインハルト独裁の同盟VS民主主義の体裁はできた帝国かな?
ヤンの「現皇帝を倒し帝国に共和制を敷くという凡人には不可能な発想」を
気に入ったロイエンタールが後に叛乱を起こすかどうかは知らん。
138 名前:132 投稿日:04/09/02 07:19
>133
続き…続き、考えてなかった。
原作におけるヤン艦隊をラインハルトが率いたら、意外とラインハルトも幕僚達も楽しそうかもと思って。
覇気がありすぎて、同盟政府の言動にいちいちぶちぎれるラインハルトに、「まったくうちのカイザーは…」とぼやくムライとか。「まあ、あの人が突然人畜無害で何のトラブルも起こさない手のかからない人間になってみろ。本人も不幸だが周囲はもっと不幸だ。だからあれはあれでいいのさ」とか。
139 名前:132 投稿日:04/09/02 07:23
ロイエンタール・ミッターマイヤー・ヤンの三人が親友だとしたらのいい感じっぽさは前スレから。あれ好きだ。
ロイエンタールには、ラインハルトの発想に衝撃を受けたように、さらっと「わたしは、ゴールデンバウム王朝を打倒して、その後共和政府制に近いものを成立できればいいなと思っているだけだよ」というようなヤンの言葉に衝撃を受けて欲しい。
195 名前:名無しは無慈悲な夜の女王 投稿日:04/09/13 14:21:46
IFは、それらしいキーワードでぐぐれば結構見つかるが、面白いかどうかは読んでみないと判らないからね。
誰か、お勧めのIFとそれへの感想とそれらの在処を、どこかでまとめて紹介してくれないかな。
196 名前:名無しは無慈悲な夜の女王 投稿日:04/09/13 17:10:36
確かにヤヲイ系削ると激減するからなぁ
数少ないまともなサイトで良いif小説というと・・・
197 名前:名無しは無慈悲な夜の女王 投稿日:04/09/13 18:35:22
>>195
ここでもいいんじゃねえの?
198 名前:名無しは無慈悲な夜の女王 投稿日:04/09/13 19:16:27
たとえ良サイトとしての紹介でも、2chで晒されるのを嫌がる人も多いから、ここはどうかなあ。
良サイトとして紹介されて荒らしにあって、潰されたサイトと
かもあるしね。
ヒント程度ならまだいいかもしれないが。
それにしても、やっぱりIFはキルヒアイスやヤンが生きている、という設定のものが多いな。
199 名前:名無しは無慈悲な夜の女王 投稿日:04/09/13 19:55:06
じゃあ、探す上でのキーワードだけでも教えてくれ・・・
200 名前:名無しは無慈悲な夜の女王 投稿日:04/09/13 20:43:37
好きなキャラクター名&創作とか小説とか>キーワード−× とかやると、矢追系は結構落とせる。
自分のお薦め。キルヒアイスが生きてたらのIFで蝶が重要な鍵を握っているお話。
201 名前:名無しは無慈悲な夜の女王 投稿日:04/09/14 23:06:28
>200
それ読んでみたい。
何かヒントくれませんか?
202 名前:名無しは無慈悲な夜の女王 投稿日:04/09/15 00:32:45
キルヒアイスが、いったん死んで復活して、パンツ一丁か全身タイツで
蝶マスク付けて「蝶サイコー!」とか叫ぶ話を想像してしまったよ。
203 名前:名無しは無慈悲な夜の女王 投稿日:04/09/15 00:49:37
>201
キーワードは文章中に出しているので、適当なのでググってください。
改訂版を同人誌で出しているそうだけど、改訂前のはネットで読める。
>202
そんなぶっ飛んだ話、見てみたいぞ激しくw
他のオススメは帝国の小魔術師の話とか(オリキャラ活躍が駄目な人には向かない)、キルヒアイスの辺境征伐を書いた話とかかな。
276 名前:名無しは無慈悲な夜の女王 投稿日:04/09/21 00:46:47
ヤンが23歳ぐらいでジェシカと結婚していたら。
ラップは「ちくしょう、幸せになりやがれよ!」と祝福。
既婚者にトラバース法は適用されないので、ユリアンは養子にならない。
アッテンボローも刺激され、3年後、士官学校の同級生と結婚
25歳、一人目の子供(女の子)生まれる。ヤン・ホワンファと命名
ヤン、完全に思考が守りの人生モードへ。原作以上に軍を辞めたい辞めたいと思いつづける。
29歳、アスターテ会戦の直前、二人目の子供が生まれたのをきっかけに、中佐で周囲の反対を押し切り退役。
憧れの年金生活へ。
翌年、ハイネセンの私立大学の歴史科の編入試験を受け、合格
(士官学校の元戦史学科在籍により3年次の編入認められる)。
ヤン「もう一度学生をする事になっちゃったよ、ジェシカ」
ジェ「でもウェンリー、ホントはこれがあなたの望んだ道だったのでしょ?」
ヤン「そうだねえ、30を目の前にしてようやく正道に戻れたよ」
277 名前:276 投稿日:04/09/21 01:07:16
ヤンが試験を受けた頃、アスターテ会戦勃発。金髪の作戦により三艦隊がほぼ壊滅。ラップ死亡。
ラップの死を悲しむも、ヤン、そのまま軍には戻らす入学。好き放題に歴史の勉学に没頭する。
その後、何度か同盟軍によるイゼルローン要塞の攻略が行われるが、全て失敗。しかし、大きな被害も出ずに済む。
一方、皇帝フリードリヒ四世の死により、帝国では内乱が勃発。
しかし今だ10個艦隊を持つ同盟軍を背後に控えた上に、ゼークト&シュトックハウゼンは貴族連合側として旗色を鮮明にし、イゼルローン、ガイエズブルクの二大要塞を敵に回し、さすがの金髪軍も苦戦し、戦線はこう着状態に。さらにその後、貴族連合軍もブラウンシュヴァイクとリッテンハイムが決裂し、真っ二つに。その影響でにより時を同じくして、帝国内で次々と地方貴族領が独立を宣言。たちまち帝国中に小国家が溢れ返り、収集のつかない状態に。
金髪はこの内乱を収めてみせる自信はあったが、少なくとも5年はかかると踏んでいた。
さて、同盟の最高評議会がこの帝国の内乱にどうつけこむか喧喧諤諤している頃、ヤンは結婚7年目でありながら美貌の衰えない、やや気は強いが優しい妻と、二人の可愛い子供たちと幸せな家庭生活を営み、また、勉学に励むのであった。
もちろん将来は院に進み、修士号、やがては博士課程に進むつもりだ。
279 名前:276 投稿日:04/09/21 01:34:43
ヤン退役から1年、そろそろ大学院進学の準備を考え始めたヤンの元に、アッテンボローが尋ねてきた
ア「実はおれも今日、軍を辞めてきました」
ヤ「そうか…お前さんほどの人材を手放すのも軍としては惜しかっただろうなあ」
ア「まあ、いろいろ引き止められはしましたが…
でも、これでようやくおれも先輩と同じく、正道ってヤツに帰れますよ」
ヤ「やっぱり、お前さんの正道とはジャーナリズムのことか」
ア「…ええ、親父にはめられ苦節10数年…やっとですよ。まずは嘱託から始めますが、やがてフリーライター、ノンフィクション作家とステップアップしていけたらいいですねえ…まず手っ取り早く名をあげるには、帝国に潜入して、内乱の様子を突撃ルポ…というのも悪くないですねえ」
ヤ「おいおい、ようやく弾丸やミサイルが飛んでこない世界に来れたのに、またわざわざ戻る気かい」
ア「どうにも性分ってヤツでして。でも同じ戦場に行くのでも、ジャーナリストとして行く事におれの10年来の意義があるんですよ…まあ、ヤン先輩と違ってまだ子供もいませんしね」
…勢いに任せて書いてきたが、どうにも、ヤンとアッテンにとっては幸福な人生を歩みだしそうだ。
金髪による帝国の完全統一と皇帝即位は10年後、金髪の同盟制服と宇宙統一は25年ほど先になるか。
その頃、ヤン(55歳)は、地方大学在籍の歴史学科の講師を勤続10数年、昨年、要領の悪さから先送りにされていた教授にようやく昇進し、著書もわずかだがぽつぽつと売れ初めて来たのだった…
「ああ、国が無くなってしまったよ…カイザーは表現や学問の自由を掣肘するような人間ではないと聞くから私の著書が発禁になる事はないだろうけど…これから私たちの業界は自由惑星同盟の歴史の総括をはじめる事になるだろうな。なら、せめてアーレ・ハイネセンがあの世で嘆くような仕事をするのは避けたいものだなあ…」
283 名前:名無しは無慈悲な夜の女王 投稿日:04/09/21 15:45:29
もし、同盟軍士官学校戦史研究科が、廃止されなかったら。
ヤンもラップも無事卒業、2人はそれぞれ在学中に書いた論文が評価され、
同盟軍戦史編纂室に配属。
ところがそこは、仕事の内容的に軍事機密を扱うことが多くなる関係上、名前ののんきさとは裏腹に、強い権限を備え、危険な任務にも関わる情報機関と化していた。
情報分析官として頭角を現していくヤンとラップ。
ヤンが任務の都合でエル・ファシルに出張中に、例の事件発生。
ヤン分析官の助言(と監視)のもと、リンチは無事脱出作戦に成功。
後年「魔術師リンチ」と呼ばれる名将に成長していく。
その後、ジェシカとラップ、結婚。
アスターテ会戦の頃、ヤンは29歳にして准将、宇宙艦隊総司令部情報参謀を勤めていた。
彼の立案した情報操作が成功、帝国軍の侵攻部隊は3個艦隊を各個撃破する積もりが、最初にリンチ中将指揮下の艦隊に掛かった時点で、兵力において劣るリンチにてこずり、やがて更なる伏兵として忽然と現れたビュコック提督指揮下の第5艦隊に挟撃され、更に苦戦。ラインハルト、撤退を図りつつ援軍を要請するも、帝国軍上層部はこれを拒否。
貴族たちは、ラインハルトに、「名誉の戦死」を遂げさせる意向だった。そして同盟軍のもう2個艦隊も駆けつけ、ラインハルトの艦隊、4個艦隊に予定通り包囲殲滅される。ラインハルト、キルヒアイス、メルカッツ、ファーレンハイト、戦死。
アスターテ会戦での功績により、ヤン、少将に昇進、情報部次長に就任。
対帝国領内特殊工作活動の統括担当者としてその全権を担うことになる。
284 名前:283 投稿日:04/09/21 15:47:08
シトレの企画とヤンの発案により、イゼルローン要塞攻略作戦。
作戦実行担当、ビュコック提督。無事奪取成功。
シトレ、これを花道に引退、政界入り。のち国防委員長。
ヤン、中将昇進、情報部長に就任。
ビュコック、アスターテ会戦とイゼルローン奪取の功が評価され、大将昇進、
宇宙艦隊司令長官に就任。
ラップ、准将。情報部参事官。ヤンの腹心。
D・グリーンヒル、統合作戦本部長就任。
尚、ロボス、性病により退役。
フォークの遠征計画、事前にヤンに潰される。
その後、フォーク、ゲームセンターで小学生に惨敗、精神病院に入院。
帝国での内乱勃発とそのタイミングでの介入を目論む、ヤンとラップの神算鬼謀が進行しつつあった。
289 名前:283 投稿日:04/09/22 02:22:59
ムライ准将、少将昇進。新設の「機甲憲兵部隊」司令に就任。
ワルター・フォン・シェーンコップ大佐、准将昇進。「薔薇の騎士連隊」と共に機甲憲兵部隊に出向(実戦指揮担当)。
ヤンとムライとシェーンコップ、同盟軍内部を帝国に対する防諜を口実に調査。数々の腐敗・汚職の証拠を確保。
同じ頃、憂国騎士団のアジトの武器庫にて、横流しされた同盟軍制式兵器の高周波爆弾、「原因不明」の事故により炸裂。アジト半壊。死亡者は居なかったが大騒ぎになり、「偶然にも」すぐ近くで演習していた機甲憲兵部隊の協力を得た警察により強制捜査される。地球教団との関係と、双方の諸々の犯罪発覚。
憂国騎士団、並びに地球教団ハイネセンポリス大司教管区(同盟方面本部)、壊滅。
関係が取り沙汰された国防委員長ヨブ・トリューニヒト、一切知らないと言明。
数日後、彼を「裏切り者」と怨む憂国騎士団のメンバーによる自爆テロで死亡。
「まったく気の毒だねえ。一体どうしてこんな惨劇になったんだろうねえ」(情報部長ヤン・ウェンリー中将・談)
290 名前:283 投稿日:04/09/22 02:23:52
同盟軍内部で大粛正始まる。ドーソン、ベイ、ロックウェル、逮捕。
トリューニヒト委員長の憂国騎士団・地球教団・軍事産業絡みの汚職・犯罪疑惑、数々発覚。 自由惑星同盟最高評議会、総辞職。
主戦派にたいする市民多数の失望と反感が強まる中、ジョアン・レベロ、最高評議会議長選挙に勝利。政治家としては新人のシドニー・シトレを国防委員長とする、異例の組閣を行う。
同盟政府、軍の一部解体による民力回復計画、開始。
291 名前:283 投稿日:04/09/22 03:17:14
帝国においても、地球教に対する捜査、始まる。
担当、憲兵隊のウルリッヒ・ケスラー准将。
ルビンスキー、地球教に見切りを付け、この組織について知る限りの情報を、帝国政府、及び同盟政府にリーク。
帝国軍、地球教本部を強襲。少なからざる犠牲の上、地球教、壊滅。
指揮を執っていたミッターマイヤー・ロイエンタールの両提督、少将より中将に昇進、一個艦隊を預かる身の上となる。並びにケスラー、少将昇進。
これよりしばらく後、帝国政府財務尚書ゲルラッハ子爵、フェザーンに出張。
同盟軍情報部長ヤン中将と接触、非公式の会談。
同盟と帝国における、双方の社会学者たちの、帝国の将来についてのシミュレーションの結果を突き合わせる。いずれも、銀河帝国は、半世紀以内には、地方領主たちの軍閥化の進行により、中央の統制が崩壊し、幾つかの地方王国へ分裂する事を予測していた。
292 名前:283 投稿日:04/09/22 03:28:32
フェザーン自治領主アドリアン・ルビンスキー暗殺未遂事件。
フェザーンの情報機関及び警察内部の地球教残党による犯行だった。ルビンスキー、同盟軍情報部の特殊工作部隊の護衛・協力により、生命を救われ、犯人達を摘発・捕縛する。
フェザーンの、政府部内・民間双方における、地球教の残党、一掃。
293 名前:283 投稿日:04/09/22 19:17:09
帝国財務尚書ゲルラッハ子爵、帝都オーディンへ帰還。
それに伴い、フェザーン自治領主ルビンスキー、帝都オーディンへ出張。
自治領主には、見慣れない顔の黒髪の秘書官が随行していた。
ルビンスキー、皇帝フリードリヒ4世に拝謁。皇帝の山荘にて、国務尚書リヒテンラーデ侯、財務尚書ゲルラッハ子爵を交え、皇帝臨席のもと、非公式の会談が持たれる。
マリーンドルフ伯爵令嬢ヒルデガルド、ルビンスキー、及びその秘書官と接触。
ルビンスキー、フェザーンへ帰還。
そのしばらく後、長期休暇を取り、フェザーンへ観光旅行をしていたとされる同盟軍情報部長ヤン中将、職務に復帰。
「結構楽しめた。面白いお土産が色々有るよ」
294 名前:283 投稿日:04/09/22 19:39:00
「カストロプ動乱」勃発。
状況が悪化する中、宇宙艦隊司令長官ミュッケンベルガー元帥の命により鎮圧にあたったエルネスト・メックリンガー少将、これに成功。中将昇進、艦隊司令官就任。
皇帝及び国務尚書、エルウィン・ヨーゼフを立太子、次期皇帝に指名。
続いて、カストロプ動乱を口実とし、貴族達が地方警備部隊の名目で抱える私兵の解体・返上の旨、命令。ブラウンシュヴァイク公、リヒテンラーデ侯ら、門閥貴族の多数はこれに反発、再考を要請。
皇帝、急逝。
エルウィン・ヨーゼフ、即位。帝国軍上層部と官僚層、これを支持。
ブラウンシュヴァイク公・リッテンハイム侯、皇帝暗殺容疑の為、召喚。
両者、これを拒否、国元に脱出。
マリーンドルフ伯爵家、私兵のみならず領地の返上を進んで行う。
フランツ・フォン・マリーンドルフ伯爵、内閣書記官長に就任。
その令嬢ヒルデガルド、帝国宰相リヒテンラーデ侯の秘書官に登用。
帝国政府、帝国全土での郡県制の施行と徹底を公布。
貴族たちに、その領地を、1年の猶予期間内に返上の旨、新皇帝の勅命。
門閥貴族達の多数、領地と私兵の整理の名目で、続々国元に帰還。
ブラウンシュヴァイク公・リッテンハイム侯への討伐令出される。
295 名前:283 投稿日:04/09/22 19:41:29
「リップシュタット会盟」。
盟主、ブラウンシュヴァイク公。副盟主、リッテンハイム侯。
貴族の出身・関係の帝国軍高官、相当数これに参加。
帝国軍の実戦部隊最高指揮官たる、宇宙艦隊司令長官ミュッケンベルガー元帥は、体制側から動かず。尚、その領地は返上している。
ミッターマイヤー、ロイエンタール、メックリンガーら、大将昇進。
ケスラー、中将昇進。憲兵総監部刑事課長に就任。
軍部・政・官・経済界の、潜在的な門閥貴族派の捜査・粛正開始。
帝国政府、「開明派」の登用。リヒター、ブラッケ、入閣。
「リップシュタット戦役」、始まる。
総兵力と財力においては、貴族連合軍(公称「賊軍」)が体制側を、相当に凌駕していた。
296 名前:283 投稿日:04/09/22 20:09:17
同盟全軍、ブラウンシュヴァイク公・リッテンハイム侯への討伐令の頃より、臨戦態勢。ちなみに、これに先立ち、4個艦隊分の兵力が解体され、軍から民間に戻っている。このどさくさに、平行して、大掛かりな作戦行動の準備が、目立たないよう行われていた。
6個艦隊・約9万隻、加えて後方支援艦艇諸々、合わせて、およそ12万隻の動員。
大遠征、始まる。
作戦名は「ラグナロク」であった。
298 名前:283 投稿日:04/09/22 20:57:52
同盟遠征部隊総司令官、宇宙艦隊司令長官アレクサンドル・ビュコック大将。
遠征部隊参謀長には、やや異例ながら、情報部長ヤン・ウェンリー中将が選任された。
後方主任参謀に、アレックス・キャゼルヌ少将。
作戦主任参謀、チュン・ウー・チェン。士官学校戦略研究科の教授を勤めていた人物である。抜擢に伴い、准将から少将に昇進。
情報主任参謀には、ジャン・ロベール・ラップ。これに先立って、少将に昇進している。
艦隊司令官、リンチ、ウランフ、ボロディン、クブルスリー、エドウィン・フィッシャー、各中将。 尚、ビュコックは自ら一個艦隊を直属とし(分艦隊司令、カールセン少将、モートン少将ら)、全軍の艦隊運用をフィッシャーが担当する。
陸戦部隊の指揮官として、シェーンコップも従軍している。階級はこの時点で少将であった。
303 名前:283 投稿日:04/09/23 15:42:15
帝国体制側の兵力、ミュッケンベルガー元帥指揮下の主力と、ロイエンタール大将の指揮下の別働隊に分かれる。後者は辺境星域各地に拠る賊軍の兵力打倒・支配領域鎮定を任としていた。
数と軍資金において勝る賊軍は、当初は優勢だった。ミュッケンベルガーの部下のうち、そう有能でない提督達が何人か敗北し、その兵力はかなり削られる。賊軍にも相応の損害。
同盟軍情報部、貴族連合内部に予め作っておいた、何人かの貴族の協力者(脅迫・事業失敗などに付け込んだ買収、及び隠れ開明派など)を利用し、ブラウンシュヴァイク公・リッテンハイム侯の不和・対立を煽る。
リッテンハイム侯、劣勢に立つ。
同盟軍、リッテンハイム侯に接触。支持を公的に表明。
リッテンハイム侯、選択の余地無く、同盟軍の協力を受け入れる。
リッテンハイム派、離反・自立し、賊軍、二分される。
ブラウンシュヴァイク派、帝国体制側に一時的な講和と共闘を要請するが、帝国体制側、これを拒否。非公式ではあるが、帝国体制側と同盟遠征軍は連携しており、同盟軍は、補給においても帝国体制側の協力を得ていた。
304 名前:283 投稿日:04/09/23 15:43:43
ブラウンシュヴァイク派、リッテンハイム−同盟連合と、帝国正規軍との二正面
作戦を強いられる。また、貴族達の国元は、次々とロイエンタール大将の武略の前に制圧され、援軍も期待出来ない戦況だった。
ブラウンシュヴァイク派の艦隊、ミッターマイヤー大将指揮下の艦隊と交戦、殲滅される。
ブラウンシュヴァイク派の要塞と艦隊、同盟軍遠征部隊と交戦、殲滅される。リッテンハイム派の戦力、多大な損害を出す(そう仕向けられる)。この折、帝国軍装甲擲弾兵総監オフレッサー上級大将は、同盟軍陸戦部隊指揮官シェーンコップ少将と交戦し、一騎打ちの結果、戦死している。
305 名前:283 投稿日:04/09/23 15:44:14
ヴェスターラントにて民衆叛乱。ブラウンシュヴァイク派の領主、殺害される。
ブラウンシュヴァイク公激怒、ヴェスターラントの人民への核攻撃を、周囲の反対を押し切り命令。同盟軍、これを、事前に内部通報者により知らされる。
攻撃実行部隊を捕縛、虐殺を阻止。ヴェスターラント星系を、人的・情報的に封鎖。
「ヴェスターラントにおいて、ブラウンシュヴァイク公が、民衆に対する核攻撃を命じた」「ヴェスターラントの民衆からの通信途絶」との報道を、核兵器のキノコ雲の映像とともに、帝国全土に流し、「虐殺が行われた」と誤解されて当然の情報操作を行う。ブラウンシュヴァイク派所属の貴族・将兵による、戦乱に伴う民間人への犯罪も数々頻発しており、これらを材料としたネガティブキャンペーンによって、ブラウンシュヴァイク派への人心は、帝国全土で離反していくことになる。
「別に、嘘はついてないよねえ?」(ヤン中将・談)
306 名前:283 投稿日:04/09/23 15:44:40
リッテンハイム侯、同盟との協定に背き、手兵を率いて帝都オーディンを急襲、幼帝の身柄確保を図る。尚、彼は、この時点で、戦後の彼自身の安寧の保証と引き換えに、自分の野望の放棄を、やんわりと同盟に言い渡されていた。
この時、留守兵力を預かっていたナイトハルト・ミュラー少将、寡兵をもって良く守り、ミッターマイヤー艦隊の来援まで持ちこたえる。そして、急報を受け、常識外の速度で帝都に戻ったウォルフガング・ミッターマイヤーは「疾風」、3倍以上の兵力と五分に渡り合いその攻勢を防ぎ続けたナイトハルト・ミュラーは「鉄壁」の異名で呼ばれることになる。
リッテンハイム侯、敗死。
307 名前:283 投稿日:04/09/23 15:45:40
ロイエンタールの別働隊、辺境経略を終え、帝国正規軍主力と合流。
ブラウンシュヴァイク派主力が拠るガイエスブルク要塞付近の宙域に、帝国正規軍主力と同盟軍遠征部隊、集結。
この決戦は、「三軍会戦」と呼ばれることになる。
アンスバッハ准将、戦死。
ブラウンシュヴァイク公、自殺。
ビュコック大将、ミュッケンベルガー元帥、会談。
同盟軍と帝国正規軍、休戦協定。
ここに、「リップシュタット戦役」並びに「ラグナロク作戦」は終結する。
銀河帝国と自由惑星同盟、お互いの存在を公式に公認。
平和条約、通商協定などを締結。
308 名前:283 投稿日:04/09/23 15:47:17
リヒテンラーデ侯爵、公爵(帝国では、この時点では、爵位は、既に名誉のみで実体は無い)に爵位を勧め、帝国宰相に就任。同日、引退。本人の意思によるものである。
後任の帝国宰相、フランツ・フォン・マリーンドルフ「侯爵」。
内閣書記官長、ヒルデガルド・フォン・マリーンドルフ。
ちなみに彼女は、後に帝国宰相となる。
財務尚書、リヒター。
司法尚書、ブラッケ。
経済開発尚書、シルヴァーベルヒ。
外務尚書、ゲルラッハ「伯爵」。
民生尚書、ラング。
社会秩序維持局長を勤めていたこの人物のこの職務への登用に、無数の人々が驚倒した。
そして、一番驚いたのは当人であったという。
その後、大方の予想を裏切り、多大な業績を見せることになる。
309 名前:283 投稿日:04/09/23 15:47:53
宇宙艦隊司令長官ミュッケンベルガーなど、帝国軍三長官を含む5人の帝国元帥は、しばらく後、揃って、これも自ら引退。
三長官の後任は以下の人々である。
軍務尚書、メックリンガー。
統帥本部総長、ロイエンタール。
宇宙艦隊司令長官、ミッターマイヤー。
全員、帝国元帥に昇進している。尚、この時点において、「上級大将」の階級は、制度上消滅している。また、「帝国元帥」の、「元帥府を開設、部下を自由に任免」などの特権は廃止されている。
10年後、憲法が制定され、議会が開設されている。
皇帝エルウィン・ヨーゼフ2世は、立憲君主として、何の不足も無い人物に成長し、玉座での100年近い年月を大過なく過ごし、天寿を全うしている。
310 名前:283 投稿日:04/09/23 15:48:24
「銀河連合」と「星際司法裁判所」(刑事・民事・経済問題の裁定など全て管掌する)、そして「広域宇宙艦隊」が創設される。いずれも本部は、フェザーンに置かれる。
「フェザーン自治領」は廃止され、「連合直轄特別区フェザーン」となっている。帝国・同盟両国の軍産複合体の解体に伴い、フェザーンの商人たちによる、人類社会の経済の再編・統合が進んでいた。
銀河連合の初代事務総長、アドリアン・ルビンスキー。数年後、惜しまれながら病死するが、それまでの短い間に、その卓越した政治手腕によって、これらの国際機関の確立に尽力し貢献する。
「広域宇宙艦隊」は、三勢力が人員と資金を出し合い構成される、警察力としての軍隊であり、帝国・同盟における軍縮の結果、10年後には、人類社会における唯一の恒星間軍事組織となる。
初代長官 ケスラー。大将に昇進している。
次官 兼任 刑事局長 ムライ。中将に昇進している。
参事官 ルパート・ケッセルリンク。
イゼルローン要塞は、広域宇宙艦隊の管理下に置かれることになる。
要塞司令官 シェーンコップ中将。
要塞駐留艦隊司令官 ミュラー中将。
100年後、「銀河連合」は、「銀河共同体」へと発展的解消を遂げる。
311 名前:283 投稿日:04/09/23 15:54:15
ヤン・ウェンリー、大将に昇進の上、自身の強い希望で退役。
元帥号は、これより70年先、死去の後に追贈される。
情報部次長に就任以来、彼の副官を務めていた、フレデリカ・グリーンヒル(最終階級、少佐。退役)と結婚。
情報部長の後任は、中将に昇進したジャン・ロベール・ラップである。
ヤンの被保護者だったユリアン・ミンツは、当人の強い希望により、保護者の反対(笑)を押し切り、士官学校に入学し、優等生として在籍中。将来の夢は、「広域宇宙艦隊」の捜査官であるらしい。
ヤンはその後、ハイネセン記念大学歴史学科の3年次編入試験を受験、合格。
長年の夢だった、歴史学者への道を、再び歩み始めることになる。
「今更だけど、同盟軍の戦史編纂室って、詐欺だったよなあ」(ヤン退役大将・談)
312 名前:283 投稿日:04/09/23 16:10:38
最後になるが、或る人物の消息について。
アスターテ会戦の終了後、帝国軍の救命ボートが拿捕されている。中破したそのボートの唯一の生存者は、重傷の上、衝撃の為、記憶を喪失していた。更に認識票・階級章など、身元を確かめる手段になる物を一切所持していなかった。これは、拿捕され、尋問された際、敵の手掛かりになる危険を鑑みての配慮であったと思われる。
赤毛のこの人物は、記憶が回復しないまま、同盟軍の病院で数年を過ごす。
その後、記憶を回復したと見られ、退院。オーディンに向かい、グリューネワルト伯爵夫人アンネローゼの元を訪れている。彼女は、皇帝の死後、帝国政府より年金を得て、帝都オーディンの郊外に隠棲していた。
2人は、しばらく後、結婚。幸福な第2の人生を送ったという。
余談だが、結婚の数年後、生まれた子供は、「ラインハルト」と名付けられた。
友達を作るのは、別に下手ではなかったらしい。
終