クロノベルト 「かりそめの旅人」

クロノベルト -あやかしびと&BulletButlers クロスオーバーディスク-

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propeller 2008-05-23
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 「あやかしびと」と「Bullet Butlers」を生み出せしライター・東出祐一郎氏が自らの手でその二作をクロスオーバーさせたファンディスク作品。
 元々、クロスオーバーな二次創作にて名を大きく上げた出自からして、その手腕は自らの作品においても大いに発揮されていると言えるだろう。
 今回、ファンディスクとしてクローズアップされたキャラクターは「九鬼耀鋼」と「アルフレッド・アロースミス」の二名。それぞれ、各々の登場作品において最後に主人公の前へ立ち塞がる事になる、所謂『ラスボス』の立ち位置にあった者達であり、各作品内で単なる悪役ではなく主人公が全存在を以って乗り越えるべき障壁として、物語の最終幕(を中心とした名場面を)を見事に飾った魅力的な敵役の両名である。
 その彼らが出演作での出番を終えた≒死した後に、各々もう一方の世界へと『寄り道』を行うところから、本作は開幕する事になる。
 先ずは、アルフレッド・アロースミスが神沢市へと立ち寄る「かりそめの旅人」から紐解いていく事にしよう。
 
 本章において、徹頭徹尾アルフレッド・アロースミスという人物の掘り下げが行われることになる。「Bullet Butlers」ではリックとの対比や対峙といった部分にのみ焦点を当てられたが故に、彼自身についての描写の殆どがかなり限られた要素に留められており、そもそも「Bullet Butlers」においては世界観を中心とした主要登場人物以外の要素の説明、即ち背景描写が比較的にかなりのウェイトを占めており、各人物の掘り下げが一部不十分というか後もう少しあれば……といった感じに終わってしまうところがあり、殊にアルフレッド・アロースミスについては周りの濃い面子(シドやレイス、或いは同様に敵役のギュスターヴ)に食われてしまっており、大体にして己がラスボスを飾るセルマルートでは出番を完璧にシドに食われてしまう(更には戦いの最中においても輝義ベイルに横槍を入れられてしまう)と言う構成からか、正に不完全燃焼という言葉が相応しい残念さが確かに存在するキャラクターである。存在自体が雨の日の大佐なのかもしれない、CV的な意味で。
 兎も角、本来の登場作品では人物像がはっきりせず、作中での救済も殆ど無く、眼鏡も弟に取られてしまった可哀想なキャラクターだったのだが、そのお陰か今回は彼の救済が大きなテーマとなっている。BB作中では異常に早熟過ぎ/要領が良過ぎ/冷静沈着過ぎたが故に流されるままにあの結末に至ってしまった彼が、自らの意志で自らの目的/存在意義を確立するまでの一幕がコメディ7割・シリアス3割で描かれている。アルフレッドが神沢市において「あやかしびと」の世界に触れ、己の世界との違いについて思いを馳せ、自らの生涯を振り返り、零し落としてきた由無し事を取り戻し、遂には己の在るがべき位置を自覚するまでが描かれている。世界との隔絶振りに戸惑いながら順応していく辺りは如月双七のそれに準じた、零し落としてきた様々な何かを拾い集めていく部分においてはリックの裏面として描かれていると推測される。学園祭を控えて軒並みハイテンションに騒いでいる神沢学園生徒会並びに学園生徒達と触れ合って、次第に『自らの意志で決断して、自らの意志で巻き込まれていく』彼の仮面が次第に氷解していく様子は、まさに救済という言葉が相応しい物語と言えるだろう。
 

  • アルフレッド・アロースミス
    • 本章における主人公、「あやかしびと」の面々がボケ役に回ることが多いので自然と突っ込み役になっている。その様子が似合うのはやはり似たもの兄弟だったと言うことだろうか。基本的に本章が彼が悩み・苦しみ、それを乗り越えて答えを見つける話となっているので、本編での印象が薄らぐぐらいに弱さを見せ付ける部分が多いが、最後にはリックさながらの熱血執事化する事になる。
  • ルダ・グレフィンド
    • 流石は無機物が人気投票一位になってしまう作品の作者、今度は無機物が萌えキャラ化しちまったZE☆ というかある意味キャラクター崩壊度合いランキングだと第一位に輝いて良いぐらいに暴走キャラになっている。というか、声色が変わり過ぎて中の人が変わったかと思ったぐらいに変わり過ぎて困る。言うなれば通常描写→薫ルート後半の氷鷹零奈な感じ。中の人的に。一応モチーフとしては双七とすずの関係があるのか、作中での行動基準に幾つか類似項が見られる。
  • 如月双七
    • 学ランを羽織っていると名も無き妖モードを彷彿とさせる気がする今日この頃。何と言うか、色のイメージが白といった印象が強いからちょっと戸惑った。今回は良くも悪くも学園生活を満喫している青少年といった感じで描写されている。本編時よりも更に世間へ打ち解けた、作中での言葉を借りれば『悩みを既に乗り越えた』といった様子が見て取れる。
  • 如月すず
    • 本編時と然程変わらない様子、敢えて言えばボケ役度合いに比べて突っ込み役度合いが上昇しているか。まぁ、その辺りは相方の狸が凄まじい進化を遂げてしまった事に由来するのかもしれない。
  • 一乃谷愁厳
    • 作中設定のお陰か暴走気味テンションで終始走り抜けている人、流石男性陣で燃えと萌えの双方で最も輝いている人気投票第一位は違うと言ったところだろうか。その分、本編時における冷静さはいささか引っ込み気味。
  • 一乃谷刀子
    • 本編時に強く影を見せており、ドラマCDシリーズを通して確定した印象が完全に固まってしまった人。もう、完全に暴走担当・悪の女王様ネタ担当にしかなってない。また、作中展開の関係上兄貴が出ずっぱりになるので出番は若干少なめ。人気投票第一位なのに。
  • アントニーナ・アントーノヴナ・ニキーチナ(トーニャ)
    • 個人的に烈海王ネタに突っ込んだ時の双七との掛け合いが凄くツボだったりする。まぁ、兎にも角にもボケとツッコミの双方において重要な役割を担う本章のトリックスター。立ち位置が西博士っぽくなっている様な気がするのは俺だけではあるまい。立て板に水を流す様にネタを口走る様子は、流石といったところか。というか、これでヴァレリアと(別名義だけど)中の人が一緒って詐欺だろおい。コメディ部分の名場面の殆どにおいて活躍する、一応こんなんでも本編ではヒロインだったのよ。
  • 飯塚薫
    • 本編では自分のルート後以外ではその後について不明だった彼女だが、本章から察するに他のルートでも(トーニャルート後は違うかもしれないが)神沢学園で教師をやっていそうな事が判明したのかもしれない。いやまぁ、一応本章だけを取り上げるならば薫ルート後でも成り立ちはするのだが。ヅマ萌えのライターな割には本章では出番が少なかったり。
  • 加藤虎太郎
    • 今回出番無し。ロシアに出張との事なので、トーニャ絡みの件にでも関わっているとでも推測させるつもりだろうか。
  • ウラジミール(・アントーノビッチ・ニキートフ?)
    • 同じく直接的な出番無し、一応トーニャ宅に居るらしい事が作中から推測される。相変わらずの楽しいキャラクターな辺りも。
  • 上杉刑二郎
    • 中の人が西條拓巳と同じとは思えない今日この頃。どうやらカップリング的には伊緒との仲が進行している展開がベースらしく、作中でも自然とした夫婦漫才が成り立っている感じ。
  • 七海伊緒
    • 若干コメディ寄りになっているが、基本的には大きくは変わらず。というか、よくよく考えると「あやかしびと」側では野郎どもとさくら、ついでにトーニャが悪目立ちし過ぎてすず・刀子・薫・伊緒が割りをくってる様な按配となっているのは少し残念なところだろうか。
  • 姉川さくら
    • 腐女子は巣に帰れ、とお約束の突っ込みはさておき、本章ではトーニャと並んでトリックスター的立ち位置で日常場面の狂言回しとなっている。因みに、数少ない一枚絵では相変わらずお色気要員として活躍しているのは、何だかんだで偏愛されているキャラクターだからだろうか。
  • 新井美羽
    • 割りを食ってるようで本編と変わらない程度には登場し、印象を残していった感じか。今回は黒さはなりを潜めて愛らしい後輩に徹した描写になっている。
  • 愛野狩人
    • 相変わらず飄々と現れ、いつもの様に死んでゆく。周りの順応度合いが本編より進んでいるのか余り死んだ事に反応されなかったり。初顔合わせのアルフレッド達も反応が薄かったり。
  • 八咫烏
    • アルフレッドを監視し、導き、事態の全てを把握し解決を図る者としてシリアス部門ではかなり美味しいところを持っていく。ついでにお笑い要素も相変わらずで生徒会面々の殆どよりは厚遇されている感がある。まぁ、本編だと一部ルートで出番が無かったりした訳だから、これぐらいは許容範囲なのかもしれない。一応重要人物だし。
  • 鴉天狗
    • 八咫烏との漫才コンビは相変わらず。ポーカーフェイスのまま、真面目な事もふざけた事もあっさり言い放ちつつ、常に主人へ意識を払いあのお子様を立てる執事の鑑っぷりにアルフレッドから感嘆される程の完璧超人振りは面目躍如といったところだろうか。
  • 雲外鏡・睡
    • 今回のエピソードを生み出した仕掛け人。付喪神の類なので八咫烏に敬意を払わず、二度に渡って彼の顔面をへこませていたりする。ある意味ヒロイン、多分本章だけでフルプライス作品になってたら絶対ルダとアルフレッドの取り合いになる位にはヒロイン。正直、クロノベルトでの活躍(性的な意味でも)が気にならない事も無いことも無いことも無かったりするかもしれない今日この頃。地味にツボ。
  • レギオン
    • 中ボスらしく登場し、中ボスらしく悪辣に振る舞い、中ボスらしくあっさり倒される。まぁ、要は中ボス。弱体化していたアルフレッドの前に立ち塞がって痛手を負わせるも、覚醒したらあっさり倒される辺りが特に。尤も、選択肢次第では相打ちだが。