マルドゥック・スクランブル

 第24回日本SF大賞受賞作品。
 マルドゥック市が定める人命保護を目的とした緊急法令マルドゥック・スクランブル0-9により、法的に使用が禁止されている科学技術によって生存の為の力を得た少女バロットとネズミ型万能兵器ウフコックを中心としたある一連の犯罪に関わる物語を描いた作品。
 手に汗握る逃走劇や銃撃戦あり、思わず固唾を飲み込む心理戦あり、世の無常を感じるような対話があり、息をつかせず一気に読みきれること間違い無し。
 中でも注目すべきは、作者自身が後書きで述べるように「書きながら吐いた」ほどの精密かつ熱気溢れるカジノでのブラック・ジャックの勝負シーンだろう。戦いながら『成長』していくバロットの様子は登場人物をして感嘆させうるほどに急激且つ華麗なものであり、作中最高のシーンとして非常に評価が高い。
 全三巻の作品ながら、その中に詰め込まれた内容は数十冊の大長編に匹敵するほどに濃く深い。ジャンルを超えた傑作の一つだろう。
 
 マルドゥック・スクランブル The First Compression 圧縮 asin:4150307210
 マルドゥック・スクランブル The Second Combustion 燃焼 asin:4150307261
 マルドゥック・スクランブル The Third Exhaust 排気 asin:415030730X