思い出の作品達 第百六十二回 「ドラゴンクエスト7 エデンの戦士たち」

ドラゴンクエストVII エデンの戦士たち / ドラゴンクエストVII エデンの戦士たち PS one Books / アルティメット ヒッツ ドラゴンクエストVII エデンの戦士たち

ドラゴンクエストVII エデンの戦士たち
ドラゴンクエストVII エデンの戦士たち
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 ドラゴンクエスト6の発売後、4年半以上の期間を設け満を持して発売された国民的RPGシリーズの最新作。
 プラットフォームをSFCからPSへ移し、データ容量を始め、グラフィック・サウンドの品質を飛躍的に向上させ、シナリオも大幅増量された本作。
 更に、従来の平面見下ろし型のマップデザインを一新、立体的に書き起こされた3Dマップを用いた360°見渡せるタウン・ダンジョンマップ。
 舞台は世界一面を海底に封印された世界、謎の石版を集めて封印された世界へ向かい世界に島を/大陸を取り戻すマップコレクションシステム。
 また、『人は誰かになれる』というテーマに基づいた膨大な数のキャラクター職業と職業の経験を活かした特技習得システム。
 ……いやまぁ、販売本数だけは立派な数字を刻みはしたんだけどな。シリーズ歴代一位/PSソフト歴代一位の売り上げな訳だし。
 
 本作は2000年夏に発売されたPS用のゲームソフトである。繰り返す、“2000年夏”に発売された“PS用”のゲームソフトである。
 本作を含む『ドラゴンクエスト』シリーズは日本国内におけるRPGの草分け的存在であり、その後の国内RPG界に対して隠然たる影響力を放ち続けているモンスターシリーズであり、ゲームで遊ばない人々にまで名前が知られている数少ない超メジャー級タイトルの一つであり、初代よりナンバリングタイトルは全てミリオンヒットを飛ばしているEnixの屋台骨を支えてきたキラータイトルとして広く認知されている。
 元々初代にて国内におけるRPGの認知度を高める事を図って作られたタイトルだけに、そのシステムは簡易性と利便性を重視した作りとなっており、シナリオも全般的に判り易く万民向けの内容を採る事が多く、王道な冒険譚や貴種流離譚の形式をなぞったものが過半を占めている。そういったプレイするに当たっての『敷居が低く』『安心感』があるタイトルとして広く認知されており、『革新性』が強い『ファイナルファンタジー』との対比をされる事が当時からなされていたのは周知の事実だろう。
 さて、翻って本作なのだが……そういった意味で非常に『安心感』が無く『敷居が高い』代物として仕上がってしまっている。ゲーム開始後、会話による幾つものフラグを立て、ダンジョンをクリアしなければ初戦闘にすら辿り着けない冒頭イベント。(大体2時間ぐらい、必要なフラグ手順を知っていれば随分と短縮可能ではあるが。) メインシナリオを攻略するに当たって集める必要のある石版収集の煩雑さ。(一応ゲーム内で確認する事も出来るが『世界で一つしか確認出来る場所が無い』『情報が酷く曖昧、役に立たない事も多々ある』) 更に石版回収を始めとする攻略全般の難度を上げるマップ構造の把握のし辛さ。(下手に3D化した所為でマップ細部の見落としが多発する。) ついでに言えば2001年夏とは思えない悪夢の3Dムービー。(アレだけは用語不可能だろう、ムービー入れ無い方がマシなレベル。) 何にでもなれるが、何になっていいのか判らない職業の雑多さ加減。(いやまぁ、何になろうと別段問題は無いのだが。) 呪文・特技間の性能調整の粗さ、というか特技の過剰優遇。(つるぎのまい・どとうのひつじだけでどうとでもなるバランスってどうよ。) メインシナリオだけでも十分な二部構成の容量を誇るにも拘らず莫大な詰め込み過ぎと言える程に詰め込まれたサブシナリオの数々。(個々のシナリオは味があるにも関わらず、多過ぎる量にかき消され全体として色彩が薄くなりがち。) 評価出来るのは敵味方のキャラクターデザインと音楽だけかもしれない程に、システム設計・シナリオ構成が穴だらけの代物となってしまっている。
 
 シナリオについては、以前『アークザラッド2』で述べたモノと似たような感想になるが、下手にサブシナリオに力を入れてしまったが故にメインシナリオの進行が遅々としたものになっている/影が薄くなっているという、構成上のミスが目立つ。開発時間が長く、またテーマとして人間そのものを強く見据えているだけに、人の美しさ/醜さを描く諸々のエピソードを詰め込む事は必然に近い部分があったかもしれないが、それにしたところで削るべき点を削るのは製品として重要な部分の筈だと思うのだが。(翻って、続編の8ではその辺りを強く意識したらしく、詰め込み癖の強いLevel5の開発陣に対して堀井自らかなりの駄目だしをしたと言われている。) 後、友達甲斐の無い親友の離脱が唐突過ぎるのはどうかと思わなくも無い。
 システムについては、兎にも角にも石版システムのいい加減さ具合が最大の問題であり、本作に対する批判『石版が見つからない』『物語が繋がらない』といった要素はこのシステムをもう少しすっきりとしたモノにするだけで解決可能だった筈だろう。(例えば、各色の石版を赤=メインシナリオ・青=サブシナリオ・黄=おまけにカテゴライズし、作中で『赤い石版から強い力を感じる』『青い石版は弱い光を放っている』とか『黄の石版を集めるといい事がある』といった具合に情報を流し、赤い石版はシナリオ進行上必ず手に入れられる様にしておき、青や黄は探索しないと取りこぼすかもといった具合のバランスにし、更には取りこぼした石版についての情報を把握し易い形式〜取りこぼしが残っている世界の台座を調べるとガイドメッセージが出るとか〜といった具合に、ユーザビリティの充実を図っていれば、評価はまた一つ違ったものになっただろう。)良くも悪くも『探索』に重点を置きすぎてコンプリートプレイヤーですら頭を抱える仕様になっているのは、万民向けとは言いがたい。
 キャラクターデザインについても鳥山明の作風が変わった時期と重なった所為で批判の対象となる場合もあるが、まぁこれは人の好みだろうからさておく。俺は初期(1〜3)も中期(4〜6)も後期(7〜)も現在(〜8)も別に嫌いという訳じゃないし。
 
 兎にも角にも調整不足な詰め込みすぎといった評価をせざるを得ないのが本作。駄作と言い切るには出来が良すぎるのだが、かといって名作には決してなり得ない。個々のシナリオは光るものが数多くあるのだが、全体として繋がりが分断されがちになっているので相殺されてしまっている。後、ムービー使うなら見栄えを最大限重視しやがれこの野郎。寧ろ使うな。
 まぁ、そもそもとして延期に延期を重ねる事を前提とした開発・販売計画自体が既に大問題だと思うのだが。普通、告知した販売時期に何度も変更を加えたら小売店から信頼無くして流通出来なくなるしな。(余談かつ直接関係の無い話だが、「斬魔大聖デモンベイン」がパートボイスでリリースされた原因は正に小売店からの信頼問題によるもの。「hello, world」の度重なる延期によって信頼を失っていたNitro+としてはどうしても「斬魔大聖デモンベイン」の発売をアレ以上遅らせる事が厳しくなっており、結果として収録を切り上げてボイス一部未実装のまま製品化する事になった。)
 ……尤も、納期を守れば良いって問題でもないけどな。その辺りは難しいところだろう。