クロノベルト 「クロノベルト」

クロノベルト -あやかしびと&BulletButlers クロスオーバーディスク-

クロノベルト -あやかしびと&BulletButlers クロスオーバーディスク-
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propeller 2008-05-23
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 今までにも増してネタばれ過多でお送りするので、未プレイの方にはお勧め出来ない。注意である。
 
 「かりそめの旅人」と「復讐するに神はなし」の両章を終えると、遂に本作のメインとなる「クロノベルト」がお目見えとなる。
 両シナリオにて雲外鏡達が策動していた理由であったり、本作のタイトルである「クロノベルト」が如何なる代物かを描写しつつ始まる、この世ならざる摂理に縛られし混沌都市と、そこで相対する神沢市とオセロットシティの住民達代表。皆、同様に記憶の欠落と矛盾を抱え込み、それに気付かない様にして由縁無き憎悪に突き動かされて互いに殺し合い続ける。一日は十二時間、そこを超えれば事象の全ては無かった事になる異常が条理なる魔境。死者は蘇り、記憶は消し飛ばされ、ただ憎しみのみが降り積もる悪意に満ちた世界。その状況下において決定的な喪失感を抱えた二人の男達〜如月双七、リック・アロースミス〜が、世界の潮流に逆らい、自分達が『何を失ってしまったのか』を探し始める事から、物語は急速に動き出す。殺し、殺され、幾度と無く同じ結末を迎えながらも遂には自らが失ってしまったモノを取り戻し、世界の異常をはっきりと自覚した二人は、互いに互いを認め、問題解決へ向けて元凶たる悪意へ立ち向かう事になるのだが……
 ……あ〜、ぶっちゃけると「歌月十夜」に「斬魔大聖デモンベイン」のBad Endを足してゾンビを掛け合わせ、ついでに魔界塔士属性を付与してやると本作が産まれ出るような気がする。或いは、前作・前々作でやり残した事をここでぶちまけてみました、と言った感じの作品と言うべきか。若しくは、クロスオーバーと言う自身が名を上げたジャンル、即ち原点に立ち返ったと言う面では「Phantom of Inferno」や「吸血殲鬼ヴェドゴニア」に対する「鬼哭街」の様な作品なのかもしれない。つまり、純粋な東出祐一郎なら買いだとか、そんな意味合いで。
 
 制作期間の短さやテンポ優先の物語展開からの要求か、或いはそれ以外の何かからかは定かではないが、本章では一挙に登場人物が各陣営共に削減される事になる、具体的に言えば神沢学園生徒会が半壊する。ついでにシナリオ上の必然ではあるがメインヒロインが酷い扱いとなる。いやまぁ、一方には最後の最後で活躍の場が用意されているのだが、下手に前章まででそこそこ出番があった方に至っては出番が回想ぐらいというのはなぁ。
 ただ、登場人物を削り込み分岐を絞ったが故に、物語全体としては纏まりのある仕上がりとなっている。余りに纏まり過ぎていて物足りなさを感じる部分が無いではないが、下手に詰め込むのではなく『この対戦カードならば面白い』『この組み合わせを見たかった』といった要素をピックアップして更生していくという至極バランス感覚を重視した丁寧で荒削りな作品と評する事が出来るかもしれない。大体にして、これ以上人数を増やすと収拾が付かなくなって冗長になるだけだろうしな。殊、後半の決戦の辺りで。更に言えば、人数を増やしすぎれば対立構造における個々人の反応を描くだけでも大変になるから、今程度の人数が適当なのかもしれない。
 しかしながら、あくまで派生作品と言う事で/一つの連続し統一された物語を描く為に抑えられたボリュームとして納得は出来なくも無いものの、やはりもう少し盛り沢山な内容だったならば、と残念に思う部分は無いでもない。若干収拾付けにくくなったかもしれないが、ここはやはり登場人物を増やし、戦闘部分以外の混沌都市における日常描写をやって欲しかったなぁ、と。突然放り出された見知らぬ世界で神沢学園生徒会とオセロットシティのVIPとその周りの人々が違和感を抱えつつも何とか日常をこなしていたところに、悪意ある介入を以って繰り返される一日の中で次第に対立へと至っていき、ついには暴発するまでの過程を挿入するとか。まぁ、人数の頭数が増えると後半部分において冗長になりすぎるだろうことは、俺自身上記で推察して入るんだけどさ。
 
 何にせよ、両作品のファンにとっては賛否両論悲喜交々となるだろう部分を孕みながらも、クロスオーバーやスピンオフストーリーならではの笑いどころや燃え要素がしこたま詰まっている本作は、やはり両作品のファンに是非ともプレイして貰いたい作品と言えるだろう。というか、両作品のファンならば言わなくても大概買っていそうな気もするがな。
 

  • 如月双七
    • 本章でメイン主人公を努める尖り頭。戦闘面では本編ほど活躍する事は無く、どちらかと言えばリックや九鬼の引き立て役といった印象が強い半人前扱いだが、最後の最後で『塔の頂上にて「かみをばらばらにする」』活躍を以ってクライマックスを締める辺りは何だかんだで少年漫画的要素が一番強く発揮出来る人物像故の特権といったところだろうか。ジュブナイル的な主人公。ただし、本編に比べてちょっとヘタレ気味かも。というか、今回は全面的に頼れる存在である九鬼であったりリックであったりが居る為に、本編では描かれる事が少なかった少年的な部分が強調されているともとれる。
  • 如月すず
    • 出番どころか、完全攻略対象外になってしまった元メインヒロイン。下手に魅せ辛く凶悪な能力持ちという設定故の悲劇と言えるかも知れない。
  • リック・アロースミス
    • 本章でサブ主人公を務める眼鏡。戦闘での立ち回りやそれに伴う心構えにおいて、双七に尊敬を受ける頼れる兄貴分として痩せ我慢を担当する。ほぼ、本編における印象通りの全編に渡って魅せ、ラストにおいては大きな代償を払う事によって在り得ざる奇跡の一端を担う大役を果たす事になる。
  • セルマ・フォルテンマイヤー
    • とある事情によって本章では(本章でも?)終盤に至るまで影の薄い存在として屋敷に鎮座する事になる訳だが、最後の最後で英雄としての矜持を見せ付ける事になる。やはり、直接的なバトルヒロインだったのは出番的な意味で幸運だったと言える。
  • 九鬼耀鋼
    • 今回は脇に回っているが、それでも主役の片方を食いかねない脇役である。主人公達の危機を相方と共に救い、最終決戦にはきっちり間に合い、決着前後〜結末部分においては師弟イベントを始めとして最も存在感を発揮する。前回は戦闘面での活躍が目立った分、今回は師匠として如月双七の精神的支柱となる立ち回りが多い。また、本作のラストシーンにおける感動をかっさらう何だかんだで本作の主役な人。
  • アルフレッド・アロースミス
    • 九鬼共々、中盤の危機において最高のタイミングで横槍登場するが、本章ではその後クライマックスまで出番を待つ事になる。尤も、出番においては弟からの厚い信頼に応える活躍で、双子なコンビネーションを発揮するお約束をきっちり果たし、多少形に疑問の余地はあるものの本編との整合性も然程破綻する事無く幸せになっただろう本作における主役その2。
  • ルダ・グレフィンド
    • どうでもいいが、微妙に本編と不整合を生み出しかねない存在だったりする。アルフレッドが死ぬルートの後はゴルトロックに残ってないと駄目な筈の人もとい無機物なのだが、まぁ本作ヒロインだから仕方が無い。
  • 一乃谷愁厳/一乃谷刀子
    • 前々回、はしゃぎすぎた分、本章では要所要所で活躍するに留まっている。尤も兄妹での共同戦線であったり、絶体絶命の事態における台詞回しであったりと、魅せるべき場面においてはきっちり仕事を果たしているといった印象か。
  • トーニャ・アントーノヴナ・ニキーチナ
    • 本作のボケ要素・毒舌その他コメディ部分並びに「あやかしびと」陣におけるヒロイン要素の大半を担う胸以外は完璧超人に活躍してまわる事になる。というのも、本編ですずであったりさくら・美羽、ついでにウラジミールが担っていた部分について、下手にネタ振り・ボケ・ツッコミ・毒舌とスタンスを変えて立ち回っても然程違和感が発生しないが故に、全部詰め込まれた感が有る様な無い様な。
  • 飯塚薫
    • えっと、若干エロ担当になってないだろうか。一応後半部に本来の活躍を魅せる部分はあるのだが。
  • 光念一兵衛/光念輝義
    • 下手に確執がない分、本編とは一風変わった一面を見せる事になる。『馴染みの店』での説法イベントや決戦前における出陣シーンにおける一幕など、中々渋い描写が光る……ある意味、元隊長よりも扱いがいい様な……
  • ベイル・ハウター
    • 本章ではリックシナリオ後半部よりの参戦、本編よりもよりやかましく叫びまわってくれる。相変わらずの良くも悪くもいい加減な態度ながら、締めるべきところでは締めてくるから困る。因みに、輝義とは相性が悪いらしい。
  • ヴァレリア・フォレスター/渡良瀬雪
    • 何気に双七シナリオ/リックシナリオの両面においてかなり重要な立ち回りを演じる。尤も、本編同様に雪が微妙なのは俺の気のせい?
  • アッシュ・ガープリング
    • ある意味光念兄弟と同類である事が今回発覚する事になり、その縁で後半やエンディングでは彼らと行動を共にする事となる。正直、その組み合わせは思いつかなかったなぁ。
  • エルネスタ・ディートリッヒ
    • 脇役陣営では本作を通してかなり出番に恵まれている人、尤も前回は九鬼の引き立て役であり、今回にしたところで重要人物ながらも本編で見られた能動性に欠ける印象が強い。その辺りの描写は意外っちゃ意外かも。
  • ガラ・ラ・レッドウッド/プーキー・フーキー
    • 良い意味で脇役。場面場面で必要な活躍を魅せ印象に残る立ち回りを見せるガラに、格好悪良い普通のおっさんなプーキー。良いコンビであろう。
  • コゼット・レングランス
    • 本編で積極的には活躍できなかった分、本作においては非日常たる本章でもかなりの出番や魅せ場に恵まれる事に。満遍無く登場し、過不足無く活躍の場を与えられる事になる。
  • 鴉天狗/ギュスターヴ
    • あっさりやられる。本編での凶悪な活躍が欠片も見当たらないのは偽者だからとは言えども酷い扱いであろう。
  • 雲外鏡 睡/鏡
    • えっと、妹ばかりをピックアップせずに姉の方もどうにかする展開を用意しなかったのは手落ちとしか思えないわけだがなぁ。いやまぁ、見た目一緒なんだけどさ。
  • マグダラ
    • あっさり死んだと思わせておいて、何だかんだで生き残らせたのは、まだ何らかのメディア展開が広がる予定だからだろうか。スピンオフで小説版のその後辺りとかやってくれるなら、俺はフルプライスでも一向に構わんぜ。
  • レギオン
    • どちらの選択肢を選んでもあっさり真っ二つになる結末なのは、塔の最上階で神なんぞを名乗るからに違いない。ばらばらになった。