思い出の作品達 第百五十二回 「ドラゴンクエスト2 〜悪霊の神々〜」 TAKE2

ドラゴンクエストII

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おすすめ平均 star
star最古のネットワークRPG
star亡霊を求め今だにさまよう
star復活の呪文

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 TAKE1の時も書いたが、俺が始めて触れたDQはコレだったりする。
 時に幼稚園の頃、丁度DQ3が発売されるちょっと前ぐらいだったか。シナリオもシステムも関係無い、とにかく触っている事が楽しかった様に記憶している。いやまぁ、平仮名ぐらいは読めたから話の筋は判ってたけどさ。
 因みに初めて触れたRPGであり、初めて挫折したRPGである。そりゃまぁ、満足に平仮名をちゃんと読む能力があっても書き留める能力に些か難が合った訳で……まともに復活の呪文をメモ出来た方が少なかったなぁ。だから、ある意味『おきのどくですが(ry』よりも『ふっかつのじゅもんが ちがいます』の方が、俺にとってはトラウマだったりする。苦労して解読して入力した復活の呪文が間違っていた時の絶望感、そして『め』と『ぬ』/『は』と『ほ』の様に書き取り間違いをしていそうな箇所を修正して、何とかパスワードを通過させようと無駄な努力を振るった時の焦燥感……あ〜、トラウマだな。ありゃ。
 
 さて、本作は今や国民的RPGの双璧が片翼である『ドラゴンクエスト』シリーズの第二作目であり、本シリーズへの人気を爆発させた決定打となった作品である。本作の完成度がもう少し低ければ、その後のDQシリーズの隆盛が無かっただろうし、所謂RPG黄金期と呼ばれる時代も随分と色あせたものになったかもしれない。それほどに大きな影響を与えた作品だと言えるだろう。
 前作に比べ、容量が倍増したROMを用いた事によって様々な部分が強化・改善された本作。
 
  ・フィールドマップの広さが数倍に、これにより移動手段として徒歩に加えて「旅の扉」「船」が加えられる。
   ・また、広さ自体を用いた謎解き/難易度調整と見られる仕掛けも幾つか設置されることになる。
    (具体例としてはテパの村ザハンの村、或いは海底神殿など、ある程度ヒントがあるものから殆どノーヒントまで。
     これは海上や入り組んだ地形を隈なく探索する事によって戦闘を重ねさせる事を想定した調整……らしい。)
   ・或いは山場となる場所へ向かう前に壁となるダンジョンを設置する傾向は本作の「ロンダルキアの洞窟」が端緒である。
    ・余談であり有名な話だが、調整不足が故に高難易度ダンジョンとなっている。結局は右手の法則とその応用で解けるんだが。
  ・プレイヤー操作キャラクターが単独から最大三人に増加、それに伴い戦闘システムが交代制からターン制へ移行する。
   ・これにより、すばやさのパラメータの重要度が増大したり、状況に応じた高度な戦術的判断が要求される戦闘が構築出来る様になった。
   ・また、PTメンバーの増加に対応して一度の戦闘における敵個体数の増加並びに行動の複雑化等の戦闘難易度の強化も図られている
   ・他にもPTメンバーは個々に先鋭化させた特徴付けが為されており、前作の様に一人万能型は存在しない。器用貧乏は居るけれども。
  ・楽曲の大幅増加、前作の『序曲』『城』『街』『フィールド』『洞窟』『竜王戦』『フィナーレ』の7曲に対して倍増の14曲となっている。
   ・特に最も長い時間を過ごすだろうフィールド曲に一人〜二人旅時用と三人が揃っている時用の二曲を準備するなど、力を入れている。
   ・また、前回は洞窟に潜るだけだったダンジョンに『塔』という『人工物へ登る』要素を加え、専用曲が準備されている。
  ・アイテム管理が一括化され、武器・防具・道具全種類を一人最大8個まで持ち運べるようになった。
   ・用途に応じて複数の武器防具を持ち運ぶことが可能になった、尤も一部を除けばメリットは無いが。
   ・武器・防具もアイテムとして扱えることにより、一部において『戦闘時、道具として使用可能な武具』が登場することになる。
    (いかずちのつえ、ちからのたて等、既存の魔法の効果をペナルティ無しに発揮する仕様。)
   ・一元化されていた鍵は分化され、開けられる扉の種類に応じて『銀』『金』『牢屋』の三種類に分けられている。
    (また、それぞれに応じた扉を各地に配置することによってシナリオ進行のフラグとなっている。)
  ・コマンドが整理され、扉はアイテム使用(鍵を使う)に/取るは調べるに/階段は自動処理に統合された。
   (扉コマンドが復活するのは4、ただし便利ボタンが登場する5以降で再び廃止されている。)
 
 えっと、容量が倍になったといっても128k byteな訳で、下手をすればこのブログの一記事の容量にすら下回る訳だが……よくもまぁ、ここまで改善・強化・追加要素を詰め込めたものだろう。こういった時代を生き抜いてきたからこそ、『要らない要素を切り捨てる妙』が今尚DQには息衝いているのかも知れない。当時は文字用フォントデータすら削ってたという話しだしな。
 
 ただ、削ったといえども前作の倍の容量を活かしたシナリオフラグの多さとアイテムの豊富さ、パーティメンバーの増加による管理すべき数値の増加は避けえぬ事態であり、パスワードである『復活の呪文』も最大で52文字と倍以上に膨れ上がっている。(これでも『必要最低限のフラグ管理』『レベルとそれに伴う各種ステータス値を獲得経験値での一括管理化』といった具合に、かなりのデータ節約が図られている。詳しくは【復活の呪文に関する雑学】を参照されたし。)
 尤も、たかだか52文字であり、思い入れのある復活の呪文などならば、誰でも一つは記憶しているのではないだろうか? 少なくとも現在二十代中盤以降の人間ならば『ゆうて いみや おうきむ こうほ りいゆ うじとり やまあ きらぺ ぺぺぺぺ ぺぺぺ ぺぺぺ ぺぺぺぺ ぺぺぺ ぺぺぺ ぺぺぺぺ ぺぺ』ぐらい記憶しているだろうし。
 
 とまぁ、極限まで様々な試みを詰め込んだ作品であり、前作にて徐々に人気を高めていた本シリーズへの期待に応え、人気と知名度を爆発させた起爆剤としては十分なのだが、前述の通り『調整不足』に泣かされていた事が後年の製作者インタビューなどから伺える。例えば上記の「ロンダルキアの洞窟」における難易度であり、はたまた『はかぶさの剣』であったり、或いはエンディング時のハマリであったりと随所に後年からすれば『らしくない』甘さが見て取れたりもする。
 
 然れども、本作が『ドラゴンクエスト』シリーズを国民的RPGの地位へと上り詰めさせる端緒であり、日本中のゲーマーをRPGというジャンルに熱狂させる数年を生み出した流行の加速装置だった事に異論を挟む事は難しいだろう。まだまだ発展途上だったゲーム業界において、一際輝きを放ち業界の地位と知名度の上昇に貢献した一作……世界的英雄たる髭の配管工やソ連の陰謀が生み出した七種類のブロックが鎮座する様なそういった位置に、本作は座している、と俺は思っている。